加藤聖文 講談社(学術文庫版2019 今回はkindleにて購入。オリジナルは2006年刊行)
日露戦争後、ロシアが建設した東清鉄道の支線を譲り受け、日本の大陸進出の足掛かりとして特異な役割を担った南満洲鉄道の歴史を辿った本。
白状すると、読み進めるまでは本書を鉄道史あるいは経営史的なものかと思っていました。たとえば「近鉄全史」とかだったら、橿原線か奈良線あたりから始まって周辺の鉄道を吸収して東を目指し・・などと、ちょっとした戦国武将的な話になっていきますが、とうぜん満鉄はスケールも複雑さもまったく違います。
満鉄は「陽に鉄道会社の仮面を装い、陰に百般の施設を実行する」、実質的な国家機関としての役割を担っていた。その源流としてはイギリス東インド会社があったとされている。・・などと書いているが、正直なところこの辺は僕の歴史知識に限界があり、なぜこのような形態をとることになったのか、よくわからないところがある。。
国策に翻弄された株式会社というと、いきさつとかは抜きにすると日本郵便とか、東京電力とかでしょうか。少し前に話題になった東芝とかもそうですが、国が関与すると民間企業もなかなか難しくなってきます(その反対がGAFAとかになるのかな。。)。
小さい会社だってやってくのは大変だけど、満鉄も意見をまとめて方向性を定め、利益を上げていくのは容易なことではなかったらしい。
戦時中には関東軍にも睨まれ、そのうえソ連参戦後は関東軍は満鉄社員を含む在満邦人の保護を放棄するようなこともあったようです。が、鉄道関係者は輸送に不可欠ということで現地に留用され、軍人と異なりシベリア抑留にも遭わずに平和裏に引き揚げとなった(一部例外あり)とのこと。
もう少し周辺の近代史を読み返して(新たに勉強して)から改めて読み返したほうがよさそうだ。。という訳で、いくつか追加でまた本を買ってしまった。。だいたい、昭和に入って満州国が建国されたあたりのことはうっすらと・・いや、知ったかぶりはできないっすね。。
とにかく、明治以後の日本って、西欧諸国と国交を持つことで、泥縄式に周辺諸国との関係性を再定義しているうちに、どんどん抜き差しならない状態に陥ってしまった感が強いです。それを無定見で場当たり的と、言うのは簡単ですが、その前に事実をしらないと話になりませんね。。