数年前(去年かな?)からNHK BS1で、不定期の10分程度の番組「沁みる夜汽車」が放送されている。
鉄道にまつわる、いろいろな人たちの思い出やちょっとしたエピソードを紹介する番組である。
これを目当てにテレビつけてるわけではないし、繰り返し再放送されると煩わしくて切ったりしていたが、いくつかのエピソードはタイトル通り心に沁みるもので、おもわず引き込まれてずっと見てしまうこともある。
とくに昨日のエピソードは、ちょっと沁み方がつよくて、おもわず涙しそうになったわ。。
佐賀県に住む齋藤泰臣さんは4年前、長崎本線に乗り込んだ。その列車内で隣の中年夫婦が言い争う声を聞く。2人の会話から、夫の父親に死が迫り、病院に駆けつけるところだとわかった。妻は、間に合わないことを心配して、夫に電話するよう必死に頼む。しかし、夫は周りの乗客の迷惑になることを気にかけて拒んでいる。偶然、乗り合わせただけの10人ほどの乗客たちの間に緊張が広がった。その時、1人の乗客が立ち上がった…。
(NHKの番組紹介より)
たぶん繰り返し再放送されるから、見てらっしゃらない方もそのうち見かけるかもしれませんね。
ほぼ1年前、正確には12月12日(木曜日)、ちょっとした旅行に出ていた。
宿は名古屋近郊一宮駅の近くにとった。単にホテルチェーンのリストで目的地に近いところを探したらここになったので、この街そのものに用事はなかった(お住まいの方しつれいいたします)。
特に予備知識もなかったのだが、行ってみると大都市近郊の歴史のある街で、ここから都心に通勤する人も結構いそうな感じがする。
ひとりで飲み屋に入るとかできない(あまり飲めない)ので、駅のデパートにあるとんかつやさんでゆっくり食事した。僕の他には若いサラリーマン(だったか就活の学生かな)がいるだけだった。若者たちは色々な会社の社風とか、そんな話をしていた。
食事を終えるとまだ8時ぐらい。
駅ビルの商店街はにぎやかだが、本屋やチェーンのファストフードなど、僕がふだん利用している地元の駅前と何ら変わりがない。
名古屋駅まで電車で30分ぐらいなので、ちょっとだけ行ってみることにした。
といっても、目的は電車の写真を撮ること。
夜の街にくりだすわけではない。
12月前半の木曜日、ターミナル駅は通勤客で賑わっている。
ふだん見慣れている、東京都心の風景と同じだ。
この日は、最終出社日の1週間前だった。
月初の様々な手続きを引き継ぎ終わり、ひと段落着いたころ。
いちおう仕事はもう、引き継いだ子に任せるようにしていた。
前の週には来日した本社CEOにランチをごちそうになり、忘年会にも出た。
あとは基本片づけたり、時間潰すだけだ。
だが因果なもので、頭の中の仕事メモリーは正常に動作していた。昨日まではこうなっていたのだから、今日はこの位になっているはず、という見通しが頭に浮かんで離れない。
自分の推測が正しいかどうか、確かめたくなる。
ホテルの部屋に入り、一息つきながら心が苦しくなった。
家路を急ぐ通勤客と一緒になっていると、どこかほっとするものを感じた。
帰りは快速電車(だったかな)に乗る。写真を撮ってから車内に入ると、通勤客で混みあっていた。
もう9時半かそこらだったと思う。
僕のすぐ脇で、たぶん僕と同世代くらいの女性と、少し若い女性二人が話をしている。どうやら忘年会の帰りらしい。二人ともほんのり顔が赤い。
ふだん職場ではあまり話ができなかったとかで、色々話せて良かった、などと若いほうの女性が言う。年配のほうの女性は子供が既に巣立ったような様子だった。数年前から猫を飼い始めて、可愛くて仕方ないらしい。
朝、枕元にきて舐めておこしてくれる、のだと。そのくせ、こちらが呼びかけると答えてくれないのよ、などと話していた。
どちらか片方の人が先に降りた。もう一方の人は、僕と同じ駅で降り、駅の階段に消えて行った。