うさぎくん

小鳥の話、読書、カメラ、音楽、まち歩きなどが中心のブログです。

夕凪の街 桜の国

2018年08月18日 | 本と雑誌

こうの史代 双葉社 2004年(電子書籍で購入)

こうのさんの漫画は「この世界の片隅に」で初めて触れて、紹介いただいて読み始めた「ぴっぴら帳」もとても面白かったのですが(先日家族に読ませたら声をたてて笑っていたので、プレゼントしました)、「夕凪の街-」はその存在を知りながらも手を出しかねていました。「この世界に-」も、読み進むうちに涙腺崩壊してしまい、読了するのが大変だったので。。

こうのさんの作品は刃物に例えるなら薄いカミソリで、小さくて人を威圧するようなものではないけど、ものすごく切れ味が良くて、下手をすれば致命傷を負わせることもできそうな感じです。。この例えは陳腐かもしれないけれど、とにかく受け止めていくのが容易ではないです。

これを例えば井伏鱒二「黒い雨」と比べてみると、姪の矢須子さんも皆実に近い運命をたどっていますが、この作品では語り手の重松の、姪や家族、職場や近所の人たちを想う気持ちが作品全体を包んでいて、読者には刃が直接切り込んでこない。否、「夕凪の街-」も直接読者に切り込んではいないですね。やはりこの方なりの作風が、緻密でシャープということなのでしょう。

個人的なことでいうと七波たちの住んでいた中野のまちや転居先などは、すこしずつかすってはいるのですが馴染み深い所です。

東子と、そのお母さんが通っていたという学校も、あああそこね、という感じ(電車から見えることぐらいしか知りませんが)。

1987年春(桜の国Ⅰ)のことはわかりませんが、2004年(桜の国Ⅱ)のころは、もしかしたら七波たちと電車で乗り合わせていたかもしれない。

あの年の秋には広島にも行ったな。

子供のころいた街が小さく見えて、そういえば桜が大きくなったせいもあるのか、と気づくあたりの描写もいいですね。。

そういえば、旧宅を建てなおした家にはもう新しい住人の方がおられるようです。去年家を壊してからかなり長いこと空き地で、なんだか成仏できない?感じでしたが、まあこれで・。

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする