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右脳と輪郭

2006-05-29 23:05:10 | 眼と脳の働き

 A図はひとつの方向から見たものを描いていますが、立体感があり、ものの位置の前後関係はハッキリ見て取れます。
 ほかの方向から見た状態などが示されていなくても、野菜の形の立体的な構造(トマトの球状など)を直感的に理解できます。
 経験や知識によって遠近の見え方とか、ものの形についての知識があるので、何がどのように配置されているかが瞬間的に分かるのです。
 
 B図は静物画Aの輪郭線をコンピューターで抽出したものです。
 輪郭の出し方は、明暗のコントラストの強いところを線で表すという方法で、機械的な操作で得られるものです。
 明暗の諧調を無視して、明暗の差の激しい部分だけを拾っているのです。
 輪郭線だけになると立体感が失われ、前後関係も失われて平面的な画像になります。
 三次元的にものを見るときは、明暗のコントラストの強い部分によって、輪郭をとらえ、明暗の諧調によって立体感や遠近感を感じてみているということが分かります。

 三次元のものを紙の上に書こうとする場合は、輪郭を描かなければならないのですが、B図を見れば分かるように、輪郭線の感覚は、全体の感覚とはかなり違ったものです。
 訓練をしないとなかなか模写がうまくいかないのは、正しい輪郭線を描くことができないからです。
 見た感じのとおりに輪郭を描こうとすると、実際の輪郭と違ってしまうのです。
 右脳で絵を描こうというのが流行っていますが、これは輪郭線を描くとき自然に身についている方法でなく、一定の方法で機械的に輪郭線をとらえようとするものです。
 たとえばものではなく背景に注意を向けてみるとか、模写であれば原画をさかさまにして、さかさまの絵を描くといった方法です。
 要するに、経験とか知識といったものからの干渉を排除して、光学的に見えたままに輪郭をとらえようというのです。
 
 経験や知識といった左脳の領分での解釈を退け、網膜に映った像から脳を機械的に働かせて輪郭線を表現しようというのです。
 後から左脳が加わって意味づけをするからよいのですが、右脳だけでは、何が書かれているか、どんな配置で置かれているかなどのことが分からないのですから、右脳だけで描いたらあまり説得力のある画はえられないでしょう。
 
 画の遠近法は近代の発明なので、人が成長するば、自然に身につくというものでなく、教育によってえらるもので、そういう意味では左脳の産物です。
 結局、左脳、右脳どちらかに偏するというのではなく、バランスが取れているのが重要であるという常識的な線にもどってくるようです。
 


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