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遠近法と錯視

2008-06-01 21:38:00 | 眼と脳の働き

 A図の二本の横線は同じ長さなのですが、上の線のほうが下の線よりやや長く見えます。
 これはちょうど下の写真で、二本の白線が同じ長さなのに、上の白線のほうが長く見えるのと同じ原理だと考えられます。
 写真では遠くまで続く道が写っていて、道幅が遠方にあるほど狭くなって見えますが、道幅が実際に狭くなっているのだとは思いません。
 実際に遠方の道幅が狭いのではなく、遠方のものは小さく見えるということを経験で知っているからです。

 この写真のように遠近感をあたえる平面図の中で、同じ大きさの図形が二つあったとき、遠方に配置されているほうが近くにあるものよりも大きく見えます。
 どうして同じ大きさに描かれているものが、違った大きさに見えるのかという疑問がでてきますが、理由はハッキリ説明されてはいません。
 この場合、目の網膜には同じ大きさに写っているという前提で説明する方法と、網膜に違う大きさで写っているという前提で説明する方法があります。
 従来の説では網膜には同じ大きさで映っているのに、遠近法の知識があるために、図上で遠方に配置されているもののほうが大きいと感じてしまうとしています。
 つまり目には同じ大きさに映っているのに、脳が一方が大きいと判断するというわけで、錯覚であるということです。
 この説の難点は子供や高齢者のほうが錯視量が大きいので、遠近法の知識と錯視が結びつきにくいと思われる点です。

 もうひとつの、網膜に映っている大きさ自体が違うという考え方は一見するとおかしいように感じます。
 二つの図形は同時に見えるので同じ大きさならば当然同じ大きさに見えるはずだと考えるのが普通です。
 ところが実際は同じ図形の上でも、視線が動いており図形のどこを見るかで目の焦点距離が変るということが分っています。
 図の上で遠くにあると感じるところを見るときは、近くにあると感じるところを見るときより焦点距離が長くなっています。
 そのため遠くにあると感じて見る部分は、近くにあると感じて見る部分より目に映る像が大きくなるのです。
 つまり奥行き感を感じれば、焦点距離が変化するので奥にあると感じている部分は大きく見えるということになります。

 奥行き感を感じれば、奥にあると感じられる部分が大きく見えるとすれば、図がいわゆる遠近法に従っていなくても、同じ現象が起きる場合があるということになります。
 B図はA図とは違って、斜めの平行線が二本ありますが、平行線では収束点がないので、いわゆる遠近法に従った図ではありません。
 ところが斜めの線が奥行き感を感じさせるため、上のほうが下の部分より奥にあるような感じがします。
 そのため同じ長さの水平線は、奥にあると感じられる上の線のほうが長く見えます。
 そればかりか、二本の斜めの線は平行なのに上のほうが広がって見えて、平行には見えません。
 平行に見える線を描こうとするならば、平行に描くのではなく上のほうをやや狭めて描かなければならないのです。
 


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