60歳からの視覚能力

文字を読んで眼が疲れない、記憶力、平衡感覚の維持のために

視野と輪郭の認識

2006-05-28 22:54:11 | 眼と脳の働き

 図A,Cは池田光男「何のために眼はあるか」からのもの。
 Aは色弱かどうかの検眼に使われる図のモノクロ版といったところです。
 これはなんと書いてあるかを判断するのですが、難しく考えなければ日本人なら「ト」と読めるはずです。
 ところがこれをコンピューターを使ってエッジ検出、つまり輪郭の検出をするとB図のようになります。
 人間の目ではややあいまいなものの、簡単にできたのでコンピューターでやればもっとハッキリ輪郭が検出できそうに思うのですが、実際はかなりぼやけた結果しかえられません。

 C図はA図を左側にある小さな四角形の大きさに視野を限定して、見た場合の視線の動きをトレースしたものだそうです。
 視野を限定されてみた人はA図に何が書かれているかまるで見当がつかなかったといいます。
 ところが視線の動きは「ト」を示していて、これを記憶をたどって紙に書かせると「ト」と書いていたことがはじめて分かるというそうです。
 これは視野が狭いと全体の像がつかめない、ということを示す実験だったのですが、眼の動きは全体がつかめていないのにもかかわらず、大きな間違いにつながっていません。
 
 B図で見るようにエッジはコンピューターで検出してもあいまいなのですから、狭い視野に限定されながら視線を動かしていれば、逸脱してわけの分からない動きとなっても不思議はないはずです。
 ところがC図で見るように、視線はときに逸脱することがあってもおおむね正しい場所に戻ってきています。
 意識的には狭い範囲に閉じ込められて全体像が分からないのに、無意識的には全体像を浮き彫りにするような動きを眼がしているのです。
 無意識に眼を動かしていっても、後で振りかえってみると適切な動きであったということです。
 
 だからといって、視野が狭くても無意識の動きをすれば結果的に正しい結論に達しうるとは必ずしもいえません。。
 視野が広ければ全体像は瞬間的につかめるのですから、C図のように何度も何度も同じ場所を徘徊をする必要はないはずです。
 ときに逸脱しながら何度も同じところをゆきつもどりつしながらトレースしているので、
偶々この回には外れっぱなしはなかっただけかもしれません。


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