リベットという神経科学者の実験で、人が手を動かそうと意識する前に、脳が活動し始めることがわかっています。
行動を起こそうと意識するより約0.5秒前に準備電位と呼ばれる脳の神経活動が始まり、実際の動きはそのあと少し遅れて起こるというのです。
人間が意識して何かをしようとしたとき、すでに体は動き出しているということですから、体の動きは意識的な意志に従っているのではないということになります。
といってもこれは人間に自由意志がないということではありません。
人間の意志が意識されるのは意思が実行された後になっているということです。
「悲しいから涙が出るのではなく、涙が出るから悲しいのだ」という言い方がありますが、これは単にひねくれた言い回しではなく、悲しいという意識する前に涙が出ているということです。
野球などで、絶好球が来たと意識したとき打ち損じているのは、意識したときには体が動いてしまっていて、適切な対応ができないからでしょう。
どんなスポーツも意識をして動いていたのではうまくいかないので、自動的に適切な動きができるように反復練習を沢山しているのです。
そうすると「運動選手は脳が優れている」という説は怪しいもので、「脳が優れている運動選手がいる」ということに過ぎないのです。
運動能力が優れた脳の証明なら、ニホンザルなどは人間よりよほど脳が優れていることになります。
人間はいつも意識して行動するわけではないということは、光に対する反応時間を見るとわかります。
右の図のように、光を見てボタンを押すまでの時間は約0.2秒ですから、意識してボタンを押しているのではないことがわかります。
意識してボタンを押しているのなら、0.5秒前に体が反応しているということですから、少なくとも光を見て0.5秒後にしかボタンを押す意識は発生しないからです。
光を見てから単にボタンを押すとか、声を出すとかいう作業は、意識しなくても行動できるので、0.5秒以内で反応できるのです。
ところが文字の音読ということになると意識しなければならないので、かな一文字の場合でも発声まで0.5秒ほどかかるのです。
漢字であれば0.6秒となりますが、これは漢字にもよりけりですが、いずれにせよ意識的な作業になると反応は遅れるのです。
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