文章を読むとき、文字の視覚イメージを思い浮かべたほうが、理解が深まりまた文章が速く読めるという説があります。
右脳を使うほうがよいというようなことらしいのですが、実際にそうなのでしょうか。
漢字を覚えるときも、たとえば猫という字を覚えるとき、図のように絵と一緒に覚えれば覚えやすいし、文字を見たときイメージが結びつくので、文の理解が深まるというような主張があります。
しかし、記憶されたイメージというものがはっきりしたものだと都合の悪い部分もあります。
たとえば図のようなイメージ猫という言葉を覚えてしまうと、猫にはいろんな猫がいるので、黒猫とか化け猫とかいったこのイメージに似つかわしくない単語が出てくると、猫のイメージを消して別のイメージに置き換えなくてはなりません。
猫という文字を見るごとに決まった猫のイメージが頭に浮かんでいては、わずらわしくて混乱してしまうのではないでしょうか。
個人差はあると思いますが、文字を見ていちいちその単語が示す視覚イメージを思い浮かべていては、頭が混乱して文章をスムーズに読み進むことは出来ません。
文章を読んでいく過程で、ある種のイメージがわくということはあるでしょうが、単語ごとに視覚イメージが想起されては大変です。
もし単語ごとに視覚イメージが想起されるということであれば、絵本などは混乱して読めなくなってしまうでしょう。
画家が描いた視覚イメージと読み手の思い浮かべるイメージが違っていれば、イメージ同士がぶつかってしまいます。
絵本にあわせようとすれば、自分が持っているイメージを押さえ込みながら読まなければならず、自分のイメージを主張するなら見えている絵本の絵を消さなければならなくなってしまいます。
また視覚イメージを呼び出すというのは、映像を見るのと違って時間もかかるし、呼び出されたイメージはボンヤリとしています。
ためしに1から10までの数字を視覚的イメージとして思い浮かべてみてください。
書かれた数字を見るのはほんの一瞬で出来ますが、頭の中に数字をイメージとして思い浮かべるにはずっと時間がかかるでしょうし、思い浮かべた数字はボンヤリとした形ではないでしょうか。
図の下の方の文字は色がついていますが、文字の色は見た瞬間に分かりますが、文字の色を答えるように言われたときウッカリ文字を読んでしまいます。
「あお」という文字を見たとき、頭の中に青いイメージが浮かぶから「あお」といってしまうのだという意見もあるかもしれませんが、そのとき文字が青く見えるわけではないでしょう。
文字の色は黒だと認識しているのに、つい文字を読んでしまったということなのです。
つぎの「青」という文字の色は赤いのに、うっかり青と読んだりするのも、この文字が青く見えるということではありませんし、頭の中が青くなっているわけでもないでしょう。
まして、つぎの「あほ」をウッカリ読んだとき、頭の中に「あほ」のイメージが浮かんだから読んだなどということはないはずです。
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