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犬の漢字の意味

2008-08-09 22:29:54 | 言葉と文字

 図は犬に関係する漢字を集めたものです。
 狆とか狗、狛は犬の種類ですが、他の字は犬からヒントを得た意味を持つ漢字です。
 たとえば臭は自の下に犬と書いた字で、自は鼻の象形文字だそうで、犬が鼻で臭いをかぐ様子から作られた字だという事です。
 吠は口に犬で「ほえる」ということですが、哭は口が二つに犬で、「大声で泣く」という意味ですから犬はやかましく「ナク」と考えられていたのでしょう。
 ここまではよいのですが、然、献、厭という字になると「然」は燃やすという意味で「犬の脂肪を燃やす」、「献」は「犬の肉を食器に盛ってさし上げる」、「厭」は「犬のしつこい肉が口の中に一杯であきる」というように、犬は食用としてとらえられています。

 食用であれば、犬は人間にとってマイナスイメージではないと普通なら思いますが、他の字を見るとそうではありません。
 漢和辞典でけもの偏の部分が犬を表わしているものを拾い出してみると、古代の中国人は犬に対してよいイメージを持っていなかったようです。
 たとえば「狂」という字は「大げさにむやみに走り回る犬」という意味で作られた字だそうです。
 「狡」は「ずるい犬」で「猾」は「すばしこくて捕まえにくい犬」で「狡猾」という熟語は犬のイメージから作られています。
 「獪」も「ずるい」で「狡猾」というといかにも「わるがしこい」というイメージです。
 「犯」は「枠を超えて飛び出す犬」で従順でないイメージで、「猜疑心」の「猜」は「青黒い犬でなつかない、疑い深い犬」だそうです。
 「獰猛」の「獰」は「意地の悪い犬」「猛」は「抑えが利かずいきり立っている犬」ということで、犬は扱いにくく厄介な動物で手なづけると「なれなれしく」(狎、狃)なってしまうと考えられていたようです。

 このような文字のあり方は、ペットとして犬を飼っている現代の日本人からすれば馴染みにくいのではないでしょうか。
 嫌われ軽蔑された上に食べられてしまうのですから、犬にとって古代中国は受難の地であったわけです。
 漢字を覚えるときその字の成り立ちから覚えるべきだといわれても、こうした例を見ればわざわざ覚える価値があるかどうか疑わしくなります。
 日本人が古代の中国人のものの見方に合わせる必要はないだけでなく、こどもが「犬とはこういうものだ」と文字の知識から思い込んでしまったりすれば有害でもあります。
 
 そのほか「突」という字は「穴から犬が急に飛び出してくる様子」というような説明がありますが、なぜ犬が穴から飛び出すのかさっぱり分りません。
 「穴から急に飛び出す」のがネズミやウサギなら分りますが、犬が穴から飛び出すのは変です。
 「黙」も黒いい犬で、犬が吠えずに黙るという意味だといわれても、なぜ急に犬を持ち出すのか理にかなっていないので分りません。
 こうしたわけの分らぬ字源解釈はことば遊びとして面白がるなら良いのですが、まじめな顔をして子供に教えたりするのは感心しません。


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