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単語の漢字化と意味の広がり

2008-08-05 22:14:06 | 言葉と文字

 漢字は一つ一つに意味があるので、漢字を使って作られた熟語は新しい単語でも意味が分かるといいます。
 したがって外来語などは、単にカタカナを使って発音を写しただけでは意味が分からないけれども、漢字で翻訳し単語に置き換えれば意味が分かりやすいといいます。
 たとえば「アイデンティティー」という言葉を「自己同一性」と置き換えれば、初めてこの単語を見ても意味が分かるし、「シミュレーション」は「模擬体験」という置き換えから意味が分かるという具合です。
 もちろんこれらの置き換えというのは、漢字を使っての翻訳作業なので、意味が分からなくては翻訳の甲斐がないのですが、翻訳というのは冗長になりがちなのを、漢字を使えば簡潔にできて、単語の形に仕上げることが出来るというのがミソです。

 外来語に対応する単語があればかんたんですが、ない場合は説明的な翻訳をしなければならないので、日本語で翻訳しようとすると長くなってしまいます。
 たとえばairplaneは漢字ならば飛行機ですが、日本語で訳そうとすれば「空を飛ぶ乗り物」とかいうふうに長くなってしまって、単語の形にすることが困難です。
 外国語を単語の形で翻訳するには漢字が便利なのです。

 ところで、漢字は一つ一つが意味を持っていて、新しく作られた単語でも字面から意味が判断できるということは、意味にふくらみが少ないということです。
 たとえばアイデンティティーという言葉は「自己同一性」というような意味もありますが、「身元」とか「個性」あるいは「独自性」といった意味もあります。
 アイデンティティカードといえば身分証明書のことですが、アイデンティティを「自己同一性」と思っていると混乱してしまいます。
 英語ではアイデンティティーは広く、高い頻度で使われる言葉なので、狭い意味に限定されず、ふくらみを持っているのです。
 漢字での「自己同一性」という単語はムリに作った単語ですから、意味にふくらみがなく、アイデンティティーの意味のふくらみにはついていけないのです。

 「シミュレーション」という言葉でも「模擬体験」という言葉に翻訳してしまうと、もとの「真似をする」という意味よりも限定された意味になっています。
 動物の擬態のこともシミュレーションといいますが、模擬体験と置き換えたのでは何のことか分りません。
 シミュレーターは模擬実験装置という意味もありますが、もとは「真似をする人」という意味です。
 「コンピューター」のように意味が限定されているようなものでも、(電子)計算機と置きかえてしまうと、コンピューターゲームは訳しにくく「コンピューターグラフィクス」も「計算機描画」とするわけにはいきません。
 コンピューターが発達して変化してきたために、漢字での翻訳が実態と離れてきてしまったためです。

 「ベンチレーター」のようなものも元は「空気を入れ替えるもの」といった意味ですが「送風機」と訳してしまうと「換気用の窓」とか「人工呼吸装置」というような派生的な意味をカバーできません。
 このように外来語でも限定された意味でなく、元の外来語のように多義的に使われるようになれば、ムリに漢字にしないでカタカナ語のままにしておいたほうが都合の善いものもあるのです。
 字面を見て意味が分かるから都合がよいというのは、その単語があまり使われない場合のことで、頻繁に広く使われるようになれば字面は意識されなくなるので漢字化にこだわる必要はないのです。


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