山口真美「視覚世界の謎に迫る」によると乳児は左上の図Zの中に完全な円と四角形を認識できるといいます。
この中に円も四角形も完全な形では示されていないけれども、輪郭を補って見ているというのです。
乳児はしゃべることができないのにどうしてそういえるのかというと、まずZを乳児に学習させた後、完全な円と欠けた円を見せると完全な円のほうを選択するので、Zの中に完全な円を見ているというわけです。
同じように完全な四角形と欠けた四角形を見せると、完全な四角形を選ぶので、Zの中に完全な四角形を見ているというのです。
少し考えれば、Zを学習しなくても、円と欠けた円を見せれば円を選びそうな気がするので、なんだか結論が先にあったような実験法のように感じられます。
普通に考えればZを見せた後、完全な円と並べて選ばせる欠けた円は、E図のような円でなく、D図のような円でもよいはずです。
わざと選びにくいE図の円を選択肢にしたのでは、結果を見るまでもないのです。
つぎにA図を見た場合大人であれば円の一部分が四角形に遮蔽されて見えないと感じますが、生後9ヶ月までの乳児は、遮蔽された円を見ることができず、Eのように見てしまうそうです。
ハトもAのような図を見ると円の隠れた部分を見ることができないで、Eのように欠けた円しか認識できないそうですから、ハトの認識能力は9ヶ月の乳児以下ということになります。
ただし、A図で四角形が円を遮蔽しているというのは、画像の見方の問題で実際に遮蔽しているわけではないので、ハトや乳児はありのままに見ているだけで、四角能力が劣っているということではありません。
乳児の場合はA図を見てZと同じと見ることができれば、Zを見て完全な円を認識できるというのですから、A図からでも円を認識できてもよさそうなものです。
円を認識できないということは、A図では四角形のほうが目立っているの
で四角形のほうに注意を奪われてしまうということでしょう。
部分に注意を奪われ、全体的な見方ができないのです。
C図はA図の四角形を半透明にしたもので、遮蔽された円が透けて見えるという形です。
こうすると6ヶ月ぐらいの乳児でも円を認識できるそうで、乳児の認識能力は①線を補って見る②半透明なものの後ろに形を見る③隠された形を補って見るという順に隠されたものを見る能力が完成されるといいます。
半透明なものの後ろに形を見るというのが発達段階というのは、あまりに文明的で、自然の中には半透明のものの後ろに形を見るチャンスはめったにないので納得できません。
C図は透明の四角形といってもこれは、画像上の表現で、実際は濃度の違う三つの図形が隣接しているだけです。」
ここで円が認識できるのは輪郭が見えるからで、四角形が半透明に感じられるからではありません。
四角形と円が重なっている部分がたとえば黄色になっていても、輪郭が見えるので円は認識できます。
ここで円が認識できるというのは、二つの図形にまたがって一つの輪郭を見ることができているということです。
したがって形の認識は①形の特徴でとらえる②輪郭線でとらえる③見えない部分を補うという順で発達すると考えられます。
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