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60歳からの視覚能力

文字を読んで眼が疲れない、記憶力、平衡感覚の維持のために

クレーターの錯視

2006-02-06 22:14:07 | 眼と脳の働き
 左の二つの円を見ると凹んでいるように見えますが、しばらくみていると膨らんでいるように見えます。
 さらも、見ているとまた凹んで見えたり、ふくらんで見えたりします。
 普通はこれは凹んで見えるものとされ、光が上から来るのが普通なので凹んで見えるという風に説明されています。
 ところが現代の日常生活では下のほうから照明が当てられる場合も多く経験するので、必ず凹んで見えるというものではありません。
 最初に見たとき凹んで見えてもしばらく見ているうちにふくらんで見え、互いに見え方は交代するのです。
 
 真ん中の二つは平面的に見えるので交代はありませんが、右側の二つはどうでしょうか。
 この場合上の円がふくらんで見え、下の円は凹んで見えます。
 上の円は光が上から当たった感じなのでふくらんで見えるのですが、この場合はしばらく見ていても、見え方の交代は起きません。
 下の円は左の二つの円と同じなので、これだけを集中して見ていれば見え方の交代が起きるのですが、上の円が目に入ると見え方の交代はおきにくく、凹んだ状態に見えたままです。
 つまりフレームによって見え方が違ってくるのです。

 心理学では、いくつかの上が明るい円と、下側が明るい円を同時に見せ上が明るい円がふくらんで見え、下が明るい円が凹んで見えるのを、クレーターの錯視と呼んでいます。
 光が上から来るという経験からそのように見えるというふうに説明されていますが、はじめに見たようにかならずしもそうとはいえません。
 二種類の円を同時に見るというフレームをいつの間にか作って、そのフレームの中での見え方を一般的な見え方であるように説明しているわけです。
 例が挙げられたときはその例が一般性を持っているかどうか検討する必要があるのです。

フレームの外から見る

2006-02-05 22:47:10 | 眼と脳の働き
 山口真美「視覚世界のの謎に迫る」によると、生後四ヶ月の乳児の場合は図の①と②の二つの図は区別できたが、一ヶ月の乳児は①の二つは区別ができないそうです。
 一ヶ月の乳児は①の枠をはずした場合は中の小さな図形の違いが分かるので、枠があると、それに注意を奪われて違いが分からなくなると思われるとのことです。
 乳児の場合は視覚能力が未発達なので簡単な違いが分からないということなのですが、①と②は違い方というのはどちらも一通りです。
 ①は中の図形が異なり、②は外の図形が異なっています。
 成人でも②の二つの図形が異なることはすぐに分かっても、中の図形は同じだということに気がつかない場合があります。
 人間の注意は外側のフレームのほうに向かいやすく、中側への注意が少なくなりやすいのです。
 
 ①や②の場合は図形が単純なので、成人の場合は簡単に見分けがつきますが、③や④のように複雑になるとフレームの影響を排除することは難しくなります。
ちょっと見ると③と④は①や②とは違う問題のように見えますが、フレームに注意が奪われて、中が正しく見えにくいという点では同じです。
 ③は同心円と正方形が描かれているのですが、正方形がゆがんで見えます。
 同心円と正方形を平等に見るか、正方形にもっぱら注意を向けてみればよいのですが、つい同心円のほうに注意が奪われるので、正方形がゆがんで見えてしまうのです。
 そこで同心円の外側を見るようにすると、同心円も正方形も少しぼんやり見えますが、正方形のゆがみはなくなります。
 また、正方形の辺をジッと注視し続けるといつの間にかゆがみは消えます。

 ④は放射線と大小二つの円が描かれているのですが、小円はゆがんで見えます。
 この場合も大きな円の外側を見ていると小円のゆがみは消えますし、小円をジッと注視し続ければやはりゆがみは消えます。
 全体を広く見るか、部分に集中するかどちらかにすれば正しい見え方をつかむことができます。
 問題を考えるとき、広く外側から考えるか、内側から考えるなら徹底的に論理をつめるかすれば正解しやすいのと似た関係です。

枠組み効果の錯視

2006-02-04 22:30:18 | 眼と脳の働き
 A図は枠組み効果による錯視といわれるものです。
 左側の図では外側の長方形の枠による影響で中の図形は正方形に見えるのに、右側の図ではひし形に見えるというものです。
 中の四辺形は左右とも同じ正方形なのですが、外側にある長方形の向きが違うので、その影響を受けて見え方が違ってくるのです。
 中の四辺形だけに注意を集中して見れば同じ図形に見えるのですが、外側の図形のほうに注意を向けてしまうと違う形に見えてしまうのです。

 この場合も長方形の外の部分に視線を移して(二つの正方形の中間あたり)見ると、二つの正方形は同じ形に見えます。
 長方形と中の正方形をひとつのまとまりとして見るというのが普通の見方ですが、二つの正方形の中間あたりに視線を当てた場合は、枠の長方形よりも中の正方形のほうに注意が向くからです。

 つぎにB図を見ると、A図の場合と比べれば、中の正方形は特に注意しなくても、二つともひし形に見えると思います。
 この場合は中の正方形は黒く塗りつぶしてあるので、自然に中の正方形のほうに注意が向かうため、両方とも同じ形に見えるからです。
 二つの黒い正方形のほうにまず注意が向くので、二つの正方形の配列のほうが沸くとなる長方形の配列より優先して見えるのです。
 光学的にはA図の場合もB図の場合も、中の正方形は同じ形なのですが、注意の向け方あるいは向かい方によって見え方が違うのです。

配列のゆがみ

2006-02-03 22:55:14 | 眼と脳の働き
 重力レンズの錯視やジョバネリの錯視は、整列している図形が近接する図形の影響で配列がゆがんで見えるというものです。
 では、なぜ影響を受けるのかということは説明されていません。
 近接する図形がどんなときに影響を受けるのかということも、事例が示されるだけで説明がありません。
 近接する図形がごく小さなものであれば影響を受けないだろうということは予測できるので、ある程度の大きさが必要だということは直感的にわかります。
 図形の形は丸でも三角でも四角でも影響があるということが分かっているので、後は大きさや形がそろっているかどうかです。
 
 図は大きさや形を不ぞろいにさせてみたものです。
 前回のように形や大きさがそろっている場合と比べれば黒点(黒丸)や縦線がせいれつしているのが分かりやすいでしょう。
 一番上の例では黒点が横一線に並んでいるのは、黒点に注目すればそれほど注意を集中しなくても見て取れます。
 この場合は近接する図形が大きさや形が不ぞろいなのに、黒点(黒丸)は同じ形、大きさなので小さくても注意を引くためです。
 
 次の縦線の場合も水平に等間隔でならんでいることが分かるのにそれほど強い集中力が必要ではありません。
 縦線にのみ注意を集中するのでなく、真ん中の空白部分にしせんをむけ、周辺視野で見ればさらにハッキリと縦線が水平に等間隔で整列していることが分かります。
 近接している図形が不ぞろいであるため、整列している縦線が対照的に見て取りやすくなっているといえます。
 
 下の図形の場合も、数は少ないのですが、隣接する図形が不ぞろいのため、小さな黒点が整列していることが分かりやすくなっています。
 埋め込み図形のようなもので、周りの図形が不ぞろいのため、さほど集中力がなくても整列していることがわかるのです。
 隣接する図形が同じ大きさや形であれば、そちらのほうが大きいので、注意をひきつけてしまい配列がゆがんで見えてしまうのです。

ジョバネリの錯視

2006-02-02 21:45:01 | 眼と脳の働き
 図はジョバネリの錯視と呼ばれ、枠組み効果がはたらく錯視とされています。
 上の図では黒い円は一直線に並んでいるのですが、それを囲んでいる三角形がランダムに並んでいるため、ジグザグ状に見えます。
 下の図でも縦線は水平に並んでいるのですが、囲んでいる四角形がランダムニ並んでいるためジグザグ上に見えます。
 近くにある関係枠への依存によって、直線的に並んでいるものが崩れて見えるのだという風に心理学では説明されています。

 この現象は枠組みによるとされているのですが、重力レンズの錯視と本質は同じです。
 重力レンズの錯視の場合は小さな図形が大きな図形に外側から近接していたのですが、この場合は内側から近接しているのです。
 この場合も小さな図形に注意を集中して見ていると、水平に直線的にならんでいると見えるようになります。
 横に並んでいる7つを同時に見ることができればよいのですが、できない場合は三つずつとか四つづつを集中して見れば水平線上にあることが分かります。

 つぎに真ん中の空白部分つまり背景となっている地の部分に視線を向けてしばらく見ていると、周辺視野にある小さな黒い円は水平に一直線上にあるように見えてきます。
 同じように下の縦線も水平線上に並んでいるのが見てとれます。
 つまり大きく全体的に黒い円がひとまとまりに見れば水平に見え、縦線もひとまとまりのものと見れば水平に見えます。
 つまり、小さい図形と大きい図形をペアとしてみる見方を捨て、切り離して見ることができれば錯視しなくなるのですから、重力レンズの錯視の場合とまったく同じ原理なのだということが分かります。
 重力レンズの錯視とは見かけが違っても構造は同じなのです。

重力レンズの錯視

2006-02-01 23:27:01 | 眼と脳の働き
 図は重力レンズの錯視と名づけられています。
 アインシュタインの相対性理論の中に出てくる「重力レンズ効果」に似ているということでつけられた名前だということです。
 何のことか分かりませんが、4つの黒い小さな丸は長方形をかたちづくっているのに、大きな円がくっついているためにゆがんで見えます。
 左の図ではは黒い円が近接していますが、右のように白い円でも同じような効果が得られます。
 
 大きな円のほうに小さな円が引き寄せられて見えるために、ゆがんで見えるのだろうと思うのが普通かもしれません。
 しかしこれは、小さな円と近接する大きな円を、ひとつのまとまりとしてみてしまうことから起きる錯視です。
 小さな円だけに注意を向けて見ていると、長方形に見えてきます。
 大きな円との関係を無視することができるほど小さな円に注意を集中できればゆがんでは見えなくなるのです。

 つぎに、小さな円や大きな円ではなくそれを曲線で囲んだ図形全体に注意を向けて見ます。
 いわば背景となる白地の部分を見ると小さな円をひとつのまとまり、大きな円を別のまとまりとして見るわけです。
 そうすると小さな円と大きな円をワンセットにして見ないので、小さな円の配置が正確に見えるようになります。
 
 つまり、細かい部分に注意を集中して見ても、全体的に大きく見ても錯視が消え、中間の見方をすると錯視が生じてくるということになります。

 

ストループテストの方法

2006-01-30 21:42:10 | 眼と脳の働き
 カラーストループ効果というのは、色の情報を答えるときに文字の情報が干渉するためにおきます。
 文字の意味に邪魔されないで色の情報をスムースに答えることを要求されるのですが、うまくできるということは、集中力があるとか、抑制がきくとか、適応力があるとかいった能力があると推測されがちです。
 どのような能力がテストされるのか、きちんと実証されているわけではないのですが、いつの間にか能力テストのような扱われるようになっているのが不思議です。
 
 このテストで、つい文字を読んでしまったり、読みそうになってつかえたりするのは、テストの仕方にも原因があります。
 人間は言葉が使えるので、答えを言葉で要求するのですが、文字が示されていると、つい読んでしまうのです。
 たとえば、図のように赤い色と、赤という字を①、青い色と青という字を②、黄色い色と黄という字を③、緑の色と緑という字を④と決めておいて、答えを数字でしめしてもらうようにします。
 最初の例では文字の背景の色の番号を答えてもらうのですが、実際やってみてどうでしょうか。
 声で色を答えるより間違えにくいのではないでしょうか。
 この場合は、色を見て対応する番号を答えるので、文字を見て「あお」という風に声を出してしまわずにすむので間違えにくいのです。
 
 背景色でなく文字が色で示されている場合でも、番号で答えるというのであれば間違えにくくなります(一番下の例)。
 結局文字の色を答えるように言われても、文字に注目した場合つい文字を読んでしまうというのは、それだけ文字を読むことが自動化されているということで、学習訓練の結果です。
 文字を読む習慣のない人とか、読めない人(幼児や外国人)ならそうした事が起きにくいのですから、単純に能力の問題にできないことはハッキリわかると思います。

ストループテスト

2006-01-29 22:17:27 | 眼と脳の働き
 ストループ効果が発生するのは、文字を見たとき意味がわかるからですが、見た瞬間に自動的に分かる必要があります。
 はじめの例は色を表す漢字を音読みにして、カタカナで表示しています。
 この場合はたいていの人は文字の色をスムーズに間違えないで言うことができるのではないでしょうか。
 青い色で「セキ」と書いてあれば、文字の色は「あお」と言うはずです。
 ところが青い色で「赤」と書いてあると、文字の色はと問われて、うっかり「あか」と答えてしまうのです。
 「セキ」→「赤」→「あか」は自動的ではないので、文字の色を「あお」と指示通りに答えられます。

 3行目は色の名前を漢字で書いていますが、書体が普通の活字体ではないので、多少読みにくくなっています。
 この場合、背景の色を「あか、き、あお、あか、みどり、あお」と大体スムーズに言うことができるのではないでしょうか。
 背景の色の刺激が十分なことと、文字の書体が読みにくい書体であることで、文字の意味のほうに引き寄せられないですんでいます。

 一番下の行は普通のストループテストと同じで、文字が漢字で、文字の色が文字の意味と異なっています。
 ただ、書体が普通の活字体でなく読みにくい書体になっています。
 明朝体とかゴシック体のように見慣れた書体でないので、瞬間的に読めず、ブレーキが利くのでゴシック体など見慣れた字体のようについうっかり口に乗せなくてすみます。

 日本人の場合は英米人とは違って、表記法がひらがな、カタカナ、ローマ字、漢字と4種類あるだけでなく、漢字にはオンと訓の2種類があるので、文字表記の方法は多彩です。
 ストループ効果が顕著に現れるのは、文字表記の形態がなじみがあって意味が自動的に分かり、自動的に声になる場合なのだということなのです。
 最近、ストループ効果を使ったテストのようなものを使って、何か脳のテストをしたり、脳の訓練をするような例があります。
 基準がはっきりしないので、脳のどんな機能をテストするのかあいまいなのですが、漠然と速くできるのがよいと思って一所懸命やっている人々がいるようです。
 このテストの成績が悪ければ前頭葉が機能不全だなどと脅されれば、不安になって練習したりするようになるのかもしれません。

ストループ効果

2006-01-28 22:37:17 | 眼と脳の働き
 心理学でカラー・ストループ効果というのがあります。
 図の一番上の行の四角い部分の色を左から順に読み上げてください。
 「赤、みどり、あお、あか、みどり、き」とスムーズに読み上げられたはずです。
 ところが、二行目の文字の部分の色を読み上げようとすると、つっかえたり、間違えたり、あるいは読み上げ速度がゆっくりになったりします。
 これは文字の色を読み上げようとしているのに、つい文字を読んでしまおうとするからです。
 文字と文字の色が違っていると、お互いに干渉しあうため色だけ示された場合に比べ、スムーズに読み上げられないというものです。

 松沢哲郎「進化の隣人ヒトとチンパンジー」によれば、チンパンジーにもストループ効果はあるそうです。
 チンパンジーは声が出せないので、色を漢字と図形の二通りで覚えさせておき、黄色で書いた赤という漢字の色を図形で答えさせるというやり方です。
 そうすると黒で赤と書いた漢字の色を答えるより、あるいは赤い札の色を答えるより時間がかかるのだそうです。
 答えが遅れるのは文字の意味を知っているからで、意味の情報と色の情報が拮抗するからだとしています。
 漢字を知らない幼児や、外国人であればスムーズに答えられるのに、日本人の大人がつかえたりするのは漢字の意味がわかるからだとしています。

 文字の色を言うように指定されているにもかかわらず、つい文字を文字の意味のほうを言おうとしてしまうのは、文字を見ると自動的に読んでしまおうとするからです。
 高齢者になるほどつかえたり、文字を読んでしまったりするのは、長い間文字を見れば読むという習慣が身にしみこんでいるためです。
 街で看板を見ると高齢者ほど文字への注目率が高いというのも、文字を読むことに過剰適応しているためです。
 文字を読むのでなく、文字の色を答えよとされても切り替えがうまくいかないのは、単に老化によって柔軟性が失われたというだけではないのです。

 2行目の例では文字の線が細いので色に刺激が少ないので、文字の色に注意をひきつける力が少ないのですが、3行目のように文字の背景の色を答える課題にすれば、色の面積が大きくなるのでスムーズに答えやすくなります。
 ストループ効果は文字の提示の仕方や、テストを受ける人の経験などによっても違うので、つかえたりすることがあるからといって脳の働きが悪いと単純に極めつけるのは間違いです。