今回は少し長めですが、ご容赦ください
百田尚樹さんの「カエルの楽園」を読みました
2016年2月の作品です
最近ですね
百田尚樹さんと言えば
戦争やボクシングや多重人格など
テーマがはっきりしている作品が多い中で
これはタイトルが「カエル」
ほのぼのとした作品なのかなと思い、読んでみたら
さすが、百田尚樹さん
全然そうじゃなかったです
主人公はアマガエルのソクラテスです
アマガエルは、身体が小さいため
他の動物だけでなく、大型のカエル(ウシガエルなど)にも
食べられてしまうんですね
ソクラテスは
自分達の住んでいる沼が
常に外敵の襲来に晒されていながら
周りのカエルたちがしょうがないとあきらめていることが不満で
新たなる楽園を探して仲間と旅に出ます
旅の途中、カラスやイワナやモズの襲来に
大半の仲間を失いながら
ようやく、ツチガエルが住む高台にたどり着きます
ツチガエルが住むナパージュといわれるこの地は
なぜか外敵が攻めてきません
すぐそばに、ツチガエルの天敵ウシガエルが住んでいるのにです
不思議に思ったソクラテスは
その理由を聞いて回ってみました
ツチガエルたちは
自分たちが住んでいる地が平和なのは
「三戒」と呼ばれる戒めがあるからだと信じています
「カエルを信じろ」「カエルと争うな」「争うための力を持つな」
つまり、三戒さえ唱えていれば
あとは何もしなくていい
三戒を守ることこそがすべてだと言うのです
そして、ツチガエルたちは「謝りソング」と呼ばれる唄を常に歌い
ひ弱な自分たちが、
過去どんなに残虐なことをしていたかを唱えることで
自分たちを常に反省しています
そして、外敵が攻めて来てどんな生命の危機に晒されても
「話し合いで解決できる」と信じこんでいます
ところが実はウシガエルが攻めてこないのは
スチームボードと言う名の巨大なワシが
ツチガエルを守っていたからなんです
ツチガエルと巨大ワシは、
以前戦い合ったこともありましたが
戦いが終わったあとは友好関係になり
巨大ワシがツチガエルに三戒を教え込ませ
以降は、巨大ワシの好意でツチガエルを守っています
ところが、ある日
それまですぐそばの沼に住んでいながら
決してツチガエルの地に攻めてこなかった外敵ウシガエルが、
突如ツチガエルの住むナパージュに顔を出すようになりました
最初は、一匹だけでしたが
そのうち顔を出す数が増えてきます
身の危険を感じながらも
「ウシガエルは攻めに来たんじゃない
たまたま顔を出しただけで すぐに帰るに決まってる」
と信じきっています
しかし、ウシガエルは一向に帰る気配がありません
さすがに
「このまま居座ったらどうするんだ」
と一部から声が上がりますが
「な~に、帰るまでじっと待てばいいんだ
仮に、帰らなかったらその土地はウシガエルにあげればいいんだ」
と、ウシガエルに「出ていってくれ」と言いません
中には身の危険を感じるカエルもいますが
「ワレワレが食べられるわけがない
ツチガエルは悪いカエルではないし、
ワレワレには、三戒があるから
それだけで平和は担保されるのだ」
との声を信じきっています
しかし、少しずつツチガエルが食べられ始めます
「食べられたのは偶然だ
たまたま数匹のツチガエルがそうしただけで
すべてのツチガエルを悪いと見るのは
かえって相手を刺激してしまうだけだ
ここでワレワレが反撃すれば
相手からもっと攻められるぞ」
と相変わらずです
とはいえ、一部のツチガエルたちは
巨大ワシのスチームボートに守ってくれと依頼します
スチームボードは
「守るのはいいが、君たちも一緒に戦ってくれるか?」
と問いかけますが
ツチガエルたちは、
「一緒に戦うことは三戒に反するから
スチームボード(ワシ)だけで戦ってくれ」と答えます
ツチガエルを守るためなのにです
あきれた巨大ワシのスチームボードは
ナパージュを去ってしまいます
そうなると、ウシガエルは怖いもの無しで
ツチガエルの住む地にどんどん入り込んで
ツチガエルをどんどん食べ始めて
最終的には、ナパージュはウシガエルに支配され
ほとんどのツチガエルは食べられてしまいました
どこかの国の置かれている状況と全く同じですね
さすが百田さん、痛烈だわ