何もしなくても朝はやってくるようで。外はいつのまにかゆっくりと白み始めている。窓をあけて外をながめる。夜と朝の狭間で、だれも知らない街が動き始める。
新聞配達のパタパタとした単車の音も、郵便受けに投げ込まれた新聞の音も、まるで何か新しいような。いつも当たり前に過ぎていた朝を、今日になって初めて知った。そんな気がする。
澄み沈んだ空気の中で、マッチを一本。くわえたタバコが赤く染まる。
思い切り吸いこんではきだした煙は、息の白さと一緒にまだ暗い夜の中にとけていく。
この時間をだれが知るだろう。空の星がゆっくりと消えていく。夜のトバリは、白々と明けていく。立ち止まり、見上げた夕の空のように。見るたび色を変える空。
白いタバコの先が赤く光り、少しだけ目に焼き付いて、明るい空にシミをつくる。窓から顔を出せば、出遅れた月がまだ空の上に取り残されてはかなく光る。
だれも知らない月の光は、街を照らすどころか街の明かりを吸いこんでしまうようで。溶けて消えてしまう星々は、ゆっくりと朝を迎える準備を始める。東の空の夜を引きさき、大きな太陽を迎えるために姿を隠し、じっと東を見つめる。雲のない空が、いつの間にか空へと変わる。
冷たく澄んだ空気の中で、外にはもう朝が顔をのぞかせた。
そしていつもの今日が始まる。
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だれも知らない月の光は、街を照らすどころか街の明かりを吸いこんでしまうようで。溶けて消えてしまう星々は、ゆっくりと朝を迎える準備を始める。東の空の夜を引きさき、大きな太陽を迎えるために姿を隠し、じっと東を見つめる。雲のない空が、いつの間にか空へと変わる。
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