ぽつん

ぽつんとして　遠くを眺めるカラス
空が青くて風が冷たい今日の日に
じっと空を眺め　何を思うか

朝の月

夜の中に帰りそこなった朝の月
まだ空の高いところで　太陽に顔を染めて
そそくさと帰る　時折雲に隠れながら

入り組む

目に見えないものこそ大切で
この線を電気が通るなんて信じられず
入り組んだ配線と　遠くの発電所から遠くの場所まで

金柑

懐かしい色に誘われて　金柑
たわわに実り　青い香り
かじれば甘く懐かしく　中は時々すっぱくて

ガラス

水の上の冷たいガラス
うすくうすく　触れば割れてしまいそうな
冷え込む朝の小さな楽しみ

夕焼けアンテナ

夕焼けを受信するアンテナ
テレビには暮れていく空が映し出される
赤く赤く染まって　ゆっくりと沈む今日の陽がそこに

こんなところにも

こんなところにもぴったりと張り付いて
木の葉の形をした羽は　ここでは役に立たず
夜の明かりに誘われて　またここで夜を待つようで

撮影：
三重県紀北町
蛾：
アカエグリバ

雪

季節が巡り　空には雪
冷たい風に乗って　この街へも
ぱらぱらと降る雪は　積もることもなくそっと消えて

晴れ間のない

最近見上げる空には雲ばかり
晴れ間のない空からは　雨がしたたり
しめった風のにおい　遠く吹き抜けて

ひっそりと

ひっそりと夜の中にぼんやりと
雨したたる道の声と　通りすぎていく車
音もなく　ただそこにたたずんで