久遠の絃

-くおんのいと-
since 2003/9/1
キレイな写真なんていらない。もっと本当の姿が見たい

ついった

いろいろ

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ぐるぐる

2007年04月30日 23時12分27秒 | 久遠
ぐるぐるとまわる あの夏の香り
いつの間にか近づいてくる夏に なんだか焦り出すように
始まらず終わらず ただ季節は移り変わって
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あの夕日が忘れられない

2007年04月29日 23時32分50秒 | 久遠
 目の前に大きく大きく飛び込んでくる。受け止める事すら出来ない夕焼けは、ぼくらを通り抜けて後ろの街を照らす。
 海の向こうへ沈んでいく今日の太陽は、空を朱く、海を紅く染める。振り返る君の横顔が赤かったのもこの夕焼けのせいかもしれない。
 にっこりとほほえむ君を夕の光がやさしく包む。きらきらと光る海の色をうつしたように、君の顔が輝いて見える。
 早いまま動き続ける僕の心臓は、まだゆるむことなくいつまでも早いままで。
 言葉がいらないほどに周りの音が小さく聞こえる。夕の色に染まっていくぼくたち。まちはゆっくりと夜へと変わっていく。ぼくらだけを夕日が包み、街には明かりが灯り始める。波の音だけが聞こえて、ぼくたちは微笑んだまま。

 君がそっと手を伸ばすので、僕はやさしく君の手を取った。
 薬指に指輪をはめるまねをして、僕はもう一度キスをした。
 いつの間にか染まった空が夜へと帰ろうとしている。
 ただ目の前にいる君と、赤く染まった夕焼けが忘れられない。


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静かな

2007年04月29日 23時15分56秒 | 久遠
静かな海の上に落ちていった空の色
見るたびに色を変えるも ただ風は静かに流れて
溶け出した夕の色 降り積もる子供たちの声とともに
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空は知る

2007年04月28日 21時56分05秒 | 久遠
空は知る どこまでもつながるこの線の先を
空走る 通り過ぎたくもがどこへ行ったのか
僕は知る 変わり始めた季節と冷え始めた夜の色を
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さるとたけのこ

2007年04月27日 22時27分34秒 | 久遠
食べるのに夢中で ぼくが近づいてもまだ逃げない
ただ食べながら時々こちらを振り向く
ぽかぽかとした日差しの中で ゆったりと流れる時間のように
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そらのすきま

2007年04月26日 22時17分38秒 | 久遠
空にぽっかりと空いた穴
心なし赤く 高く高く黒い空の上に
見上げたままに 心奪われるほど
しっとりと つややかに街を見下ろし
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電線

2007年04月25日 22時20分57秒 | 久遠
つながる電線 つながれた電柱
どこまでもどこまでも 遠くいろんな街へ
見上げる景色を彩るように どこまでも日本の景色のように
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大きくなって

2007年04月24日 22時21分23秒 | 久遠
いつの間にか大きくなって色付く時を待ち
華やぐ季節に慌ただしさのある季節
もうそろそろ空を泳ぐ魚に 迫る日々におびえ

参照:
2007年03月16日
2007年02月25日
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春過ぎる

2007年04月23日 23時44分04秒 | 久遠
春が過ぎていく中で 新しく咲く桜
花を重ねて大きくふくらみ
止まらない風と 吹き抜けていく季節の中で
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風の扉を開く

2007年04月22日 23時39分43秒 | ことばのうみ
 手を広げて風の扉を開く。カーテンをゆらし海と夏の風が通り抜けてくる。
 青い空の下で海の音がわれて響き、さわやかな潮の香りがする。海の見えるこの場所は、いまはもうだれも住んでない。私は時々風を通しにここに来る。
 この家はもともとわたしの祖父が住んでいたが、五年ほど前に亡くなった。それ以来だれも住んではいないので、いまはわたしが管理している。古い木造の家はしっとりと冷たい空気に包まれていた。あまりにも楽しくて思い出すのがつらくなるほどにこの家には思い出がある。
 天井からつり下がった電気の傘。そこから伸びたひもには海岸で拾った白くて綺麗な貝が結ばれている。ここは何も変わっていない。
 海からの風を通し、窓を開けたまま私は外に出る。いつの間にか夏へと変わろうとする日差しは、半袖の肌を赤く染めようと光を増す。大きな麦わら帽子を手に私は浜へと降りていく。家から小さな堤防を一つだけ、そこは小さな浜になっている。昔は小さくも漁師たちでにぎわっていたのだが、いつからか来る人はめっきりと減ってしまった。もしかしたら明確な理由があったのかもしれないけれど、わたしにはあまり関係なくいつものように祖父に会いにここに遊びに来ていた。
 小さな舟を海に浮かべる。言うなればボートだろう。二本のオールが海を押し込み舟はゆっくりと沖へと向かう。波を切る、底から伝わる音、オールを乗せたU字の金属の音が波の音に消える。いつのまにか石を洗う波の音も聞こえなくなり、わたしはこぐのをやめた。舟の上にオールを戻し、ただ波の上にその身を預ける。舟を揺らす穏やかな波。照りつける太陽は大きな麦わら帽子が防いでくれた。波の音を枕にして風の子守歌と波のゆりかごの中で眠る。波が穏やかに舟を回して海流が私を導いてくれる。
 夕方になると祖父が釣ってくる魚が楽しみだった。この舟で沖へ出てその日食べる分だけを釣ってくる。あまってしまえば塩漬けや干物に加工した。わたしも時々魚釣りへと連れて行ってもらった。波の上は心地よくて、わたしはいつも途中で眠ってしまっていた。帰る頃には今日の魚と祖父の優しい顔があった。
 舟が砂利をかむ音で目を覚ます。私は大きく伸びをして麦わら帽子をかぶり直す。舟の位置が悪いので、一度そっと浜を離れいつもの場所に舟をつける。船底を砂利浜の石がごりごりとけずる。力一杯引っ張って私は浜に舟を引き上げた。
 足についた砂を払い膝まであげていたジーンズを戻してサンダルをはき直す。うろうろとその辺を散歩して私はまた祖父の家に戻る。庭で回る小さな風車は祖父がつくってくれたもの。いまでも色あせることなく同じ場所で回り続けている。
 だれの靴もない玄関を上がり、だれも住んでいない部屋に入る。暖かな風が通るものの、やっぱり何か足りないような気がする。いつもこの場所でほほえんでいた祖父。いつもその祖父を困らしていた私。あのころと変わらない部屋の中。わたしの背はずいぶん伸びて、なんだかここでわたしだけが大きくなってしまったような、そんな気がする。でもここではまだわたしは子供のままで祖父に遊んでもらっているのかもしれない。
 なつかしい香りのするカーテンを閉じ、閉めた窓からの景色がゆっくりと色を変えようとしている。
 夕焼け色に染まりだした空の下で、振り返り、小さく手を振って
”まだ来るからね”
 いつものようにその言葉を残してまた歩き始めた。風は優しく空を包み込んで




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