ぼんくら放浪記

Blogを綴ることによって、自分のぼんくらさを自己点検しています。

お腹召しませ

2008-11-07 04:10:00 | 読書
このBlogを綴り始めた頃、今日と同じタイトルで浅田次郎の本を紹介しています。しかし当時この本は単行本であり価格も高かったので、『五郎治殿御始末』という文庫本を読んだのでした。

この本は『五郎治殿御始末』の続編なんですね。ここにきてこの『お腹召しませ』が文庫本で発行されたので、早速読んでみました。

解説含めて約300ページの中に6篇の短編が収められています。

この『お腹召しませ』という本のタイトルと同じ題名のお話が最初から登場します。

高津又兵衛という45歳になるさる藩の五十石取りの江戸詰めの武士が、入り婿の不始末から、嫁や娘から「お腹召しませ」と迫られる話です。

       

後、『大手三之御門与力様失踪事件之顛末』『安芸守様御難事』『女敵討』『江戸残念考』『御鷹狩』と続きます。

ここでは『女敵討』を紹介しておきましょう。「おんなかたきうち」ではありません。「めがたき」と読むようで・・・女の敵を討つ。

このストーリーに入る前に浅田次郎独特の前置きがあるのですが、気付いたことに現在の名前に無くなりつつある字があるそうで、それが『貞』という字、まぁ私たちの時代には王貞治や沢村貞子という先輩ががいるのですが、そういえば確かに若い人に『貞』という名の付く人は居なくなった感があります。
『貞』の字義は白川静博士の『字通』によれば、「鼎」の上に「卜」を置いた字だそうで、「とう、うらなう、ただす」「ただしい、さだまる、よい」総じて「神意にかなうほどの真実」という意味だそうです。

ストーリーはもちろん『貞』に関する展開です。『貞』に纏わる話といっても主人公奥州財部藩士・吉岡貞次郎の名前に『貞』が付いているからではありません。

桜田門外の変の後、江戸藩邸の警護に借り出されて2年半、何も起こらぬ情勢に何をするでもなく、早く帰藩が叶わないものかと考えているうちに、藩元から幼馴染の御目付役・稲川左近が江戸に上がってくる。

貞次郎は何か粗相でもあったかと自問するが思い当たる節もない。これは吉報、国元へ帰れるのではないかと思ってもみたが、左近の対応はそうでもなさそうであった。

とどのつまりが、藩元の妻が不貞を働いているというのである。
左近は「不義密通が公になれば自分が縄をかけねばならないが、そうなっては吉岡家は取り潰し、その前に貞次郎に妻を成敗し、女敵を討ち果たせ」と進言しに来たのだった。

しかし、貞次郎の方も江戸でおすみという妾に小さな店を持たせ、男子を一人もうけていた。それが貞次郎の妻が不貞を働いた原因ではないかという負い目になっていたのだが、お家大事とおすみに国元へ帰ることを告げる。

おすみの方も、私は子を産めない女房の代わりに腹を貸しただけなのではない、子供は自分が育ててみせると意地を見せる。

貞次郎と左近は策を練りながら国元へ急ぎ、貞次郎は早朝二人のいる自邸へ戻るのだが、さて妻を成敗し、女敵を討ち取れたのか・・・この後までは語れません。

ただ最後に浅田次郎氏独特の人情というか、巧みな配慮が楽しみですよ。

この『お腹召しませ』は単行本から文庫本化が早かったですね。
私が待ち続けている宮部みゆきの『ぼんくら』の続編、『日暮らし』はなかなか文庫本にはなりません。

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