ようやく15日発売のCDが18日到着いたしました。
3日遅れ・・・
CHRISTMAS LIST
会員ページでPVが先行公開されて以来、何度となく繰り返し聴いていますが、やっぱりたいへんな名曲だと思います。曲の良さ、歌声の良さはもちろんですが、この歌にこめられた「
願い」の持つ意味は非常に大きいです。
この曲は「
クリスマスソング」であることは確かですが、「
反戦ソング」と単純に括ってしまうのは、少し違うような気がします。もちろん「戦争が起きないように」という明確なメッセージが前面に出てはいますが、そういう政治的、思想的スタンスから歌われているというよりも、もっと
普遍的な願いといいますか・・・
世界で6000万人といわれる犠牲者を出した第二次世界大戦の後、日本が巻き込まれる形での戦争は起きることなく今に至りますが、世界ではあの大戦への反省も空しく、相変わらず毎年のようにどこかで戦闘が繰り広げられ、一般市民、特に子どもが大勢犠牲になり続けています。日本は、戦争そのものに巻き込まれてこそいないものの、自衛隊は何度か海外に派兵されていますし、自ら敵国の兵士や市民を殺傷することはないにしても、そういう任務を帯びた外国の兵隊を補助する役割を担っています。これは明らかに戦争に荷担していることに他なりません。
しかし、それを声高に批判することは簡単なのですが、日本がアメリカとの安保条約という傘の下で、アメリカに守られて平和を謳歌していることも事実ですし、そうである以上「
助けられはするが、助けはしない」なんて
身勝手な理屈が通用するはずがないこともまた事実なのです。
子どもの頃、スイスが「
永世中立国」だと知ったときは、単純に「なんて良い国なんだろう」と思ったものです。しかし実際には永世中立である以上、どこの国の戦争にも荷担しない代わりに、他国から攻められたときも自衛しかないわけで、当然ながら強力な軍隊を「
自衛のため」に持たなければなりません。そのスイスの永世中立の原則すら、国連加盟により既に崩れてしまっています。
日本が、たとえばアメリカの傘の下にいる状況をやめたとすると、アメリカの「
睨み」がなくなった日本を狙おうとする国は、北朝鮮を例に出すまでもなく、たくさん出てくるでしょう。たとえ現在は友好国であっても、そういう状況になれば
羊を狙う狼に豹変する国もあるかもしれません。非暴力・非協力・不服従を決め込んだガンジー的な国家だからといって、どこも攻めてこないとは必ずしも言い切れないのです(むしろ逆に攻められる危険の方が高いでしょう)。そうなると、日本が安保をやめ、永世中立を宣言し、平和を保つためには、今度は今の自衛隊とは比べものにならない
強力な軍隊が不可欠という、
アンチノミー(二律背反)な状況が出現してしまうのです。もちろん
徴兵制だって当たり前になってしまうでしょうし、そんな国が果たして本当に「平和」と言えるのか、やはり疑問です。
結局一番良い方法は「
戦争が起きないこと」、この一点に尽きるのです。しかしそれは哀しくも無邪気な「
幻想」であり「
夢想」に過ぎないのが現実です。戦争がなくなること、愛する者同士が引き裂かれないこと、それを叶えるためには、一人一人が、平和への
一途な思いを持ち続けることしかないのです。そのような、ある意味では悲愴さすら併せ持つような願いが、この曲にはこめられている気がします。David Foster の願い、Natalie Cole の願い、あーやの願い・・・そしてそれが全ての人の普遍的な願いにならなければ、世界は何も変わらないのです。
歌詞の中の「この幻想を無邪気だと~」というくだりは、
John Lennon の名曲「
Imagine」のフレーズ「You may say I'm a dreamer」(人は僕を夢想家だと言うかもしれない)を思い起こします。ちなみに「Imagine」は、あーやのお姉さん・
aikaさんがカバーしていて、アルバム「
ai wo ~愛を~」に収録されています。aikaさんについては、またいずれ改めて書きます。
mama (Orchestra version)
C/W曲の「mama」は、あーやの1stアルバム「
ODYSSEY」に収録された同名曲を、
オーケストラバージョンとして新たにアレンジされ、セルフカバーされた作品です。
実を言うと私は「mama」という曲の素晴らしさに、恥ずかしながら最初なかなか気がついていませんでした。
ムーディな雰囲気のメロディも、あーやの美しい歌声も、決して嫌いではなかったのですが、他の曲と比べて、もう一つピンと来てなかった気がします。デビュー間もない頃のあーや自身が作詞していますが、歌詞表現として、たとえば
カタカナの多用(「キレイな花」「大きなヒマワリ」「シアワセ色のオレンジ」)など、「4つのL」に収録された、あーや作詞曲の
洗練さと比較して、少し違うような印象を受けてしまっていました。
ところが、あーやの曲全体を
ヘビーローテーションしていたあるとき、この曲のもの哀しさや切なさ、そして歌詞表現の深さに改めて
ハッと気がつき、突然のように
マイベストの上位に躍り出てきたのです(^^); その途端に「CHRISTMAS LIST」の C/W曲に決まったことを知り、個人的にはたいへん嬉しかったです。
「mama」は、死んでしまった「お母さん」の心情から歌われた曲です。漫画「
ふたつのスピカ」のファンとしては、どうしても若くして死んでしまった
アスミのお母さんの気持ちと重ねてしまいます。そういうテーマすら全く感じ取っていなかった、以前の自分の不明を恥じるばかりであります(^^);
デビューから3年近くたった今のあーやの歌声で、今回セルフリメイクされたわけですが、その「深さ」がより際だっていました。曲調として、元の曲のムーディさより、
優しさや
温かさの方が前面に出たようなアレンジです。荘厳なオーケストラのメロディとともに、「mama」の愛情が降り注ぐような歌声に、聴いていて思わず目頭が熱くなります。聴き比べてみましたが、3年経った今回の方が、より「
若いお母さん」のように感じます。(だからこそ「アスミのお母さん」というイメージが出てきたんだと思います)・・・お母さんも何も、あーや自身は、まだ非常に若いわけですが(^^);
ただ、あーやの歌声については、デビュー1~2年の頃の歌声をCDで聴くと、実際の年齢より
遙かに大人っぽい感じを受けるのですが、ここ1年ほどの歌声は「
若返った」ように感じることがあります。もちろん
良い意味で、です。このあたりは、また時間があれば、ゆっくり分析してみたいと思います。
「mama」の作曲を担当したのは
坂本昌之さんです。「
Jupiter」の編曲を担当した方でもあります。「Jupiter」を歌うシーンがテレビなどで放送されると、クレジットは「作詞: 吉元由美/作曲: ホルスト」とされることが多く、それは決して間違ってはいないのですが、ホルストの名曲を、あーやの「Jupiter」として蘇らせたのは他ならぬ坂本さんなので、彼の名前も出して欲しいなと思っていました。
初期のあーやの曲は、坂本さんと
小林信吾さんがプロデュースしていて、お二人で作曲や編曲などを中心的に手がけておられたのですが、アルバム「From To」以降はお二人とも参加しなくなってしまいました。このあたりの事情は、当時まだファンではなかった私には全くわかりませんが、坂本さんが手がけた「
mama」「
願い」、そしてあーやが作曲した多くの曲のアレンジ、小林さんが手がけた「
歌う風」「
君といる時間の中で」など、素晴らしい曲も多いので、いずれお二人にはまたあーやと一緒に曲を作って欲しいなと思っています。今回はあーやの新作CDで久しぶりに坂本さんのお名前を見ることが出来て、なんだか嬉しかったです。
| 平原綾香
CHRISTMAS LIST
ドリーミュージック
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