金魚cafe

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荒神

2016-05-19 23:30:50 | 読んだ本
宮部みゆき著 朝日新聞出版

宮部センセーの時代もの。

今回はお江戸ではなく、東北の隣り合った小藩2つの物語。

主筋である永津野藩よりも薬草、香木の栽培で豊かになった家来筋の香山藩、山神様がいるという大平山を境に互いにけん制し合い互いに藩を乗っ取ろうとしています。

5代将軍綱吉が生類憐みの令を発令する前、もう戦もできず藩同士で争えばおとりつぶしになるかもしれずで見えないところで謀略を仕掛けています。

それでつらいめにあうのは両藩の村人たち、いつの世も上の人の考えることなんてなんだかなあです。

両藩が山神様とあがめる大平山で異変が起こります。

最初に気づいたのは山を渡り歩く狩人の源じい。

山と共に暮らしているから風の気配でだだならぬものを感じ孫の蓑吉に逃げろと教えます。

そこに現れたのがこの世のものではない怪物、村に侵入してきて村人を食べてしまいます。

進撃の〇○ではありませんが、ちょっとそういう雰囲気ありました。^^

怪物には矢も鉄砲も火も通用しません。

ここまで読んでいたら人間が勝手に山を切り開いて畑を作ったりするので神様がお怒りになったのかと思ってしまいますがそうではないようで、話は藩同士の、いや互いの藩の中での権力争いにそれが利用されることになったりで怪物より人間のほうがたちが悪いのではと。


藩のためにと思ってしたことが悪いことと知りつつもやらなければこちらがやられてしまうからと皆悪人ではないのです。


権力争いの恨み、それも怪物が現れた原因の一つではないかと思うですが、読んでいくと怪物が現れる運命だったのかなあと。

ここに出てくる人たちは皆決められた定めがあってそれは避けて通れず受け入れなければないのだと。

善だけでも悪だけでもだめでそれが上手く調和が取れて平和なのだと。

狩人の源じいや孫の蓑吉が大活躍で真っ当に生きる人を応援する宮部センセーらしさが出ているなあと思いました。

これを読んでぜひ映画にしてほしいなあと思ったのですが、怪物をCGで作ったりするのは難しそうです。