週末に書斎の書棚を整理していると、VEの本がたくさん出てきました。
懐かしい~!
みなさんは、VEという言葉をご存じでしょうか?
ものつくりニッポンの推進力となった管理技術の一つです。
IE(インダストリアルエンジニアリング)、QC(品質管理)、VE(価値工学)を管理技術と言います。
個別の企業やメーカーが有する独自技術を固有技術と言います。
IE、QC、VEは、企業の持つ固有技術をブラッシュアップするためのエンジニアリングと言えます。
失われた30年・・・ニッポンの国際競争力は大きく低下、中国にはGDPで抜かれ、労働者の平均賃金も韓国に抜き去られました。
何もしなかったわけではないと思います・・・日本人の持つ勤勉性で、それなりの努力やガンバリが製造現場や職場であったことは事実だと思います。
何でこうなったのでしょうか?
米国を中心に世界的に、デジタルシフトやIT化の時代に入ったにも関わらず、その波、流れに完全に乗り遅れたためだと思います。
半世紀前、日本はIE、QC、VEといった米国発の最先端技術をどん欲に吸収、ついにはJapan as No.1と米国の製造業を追い抜きました。
キャッチアップしての安心感、油断が、今の日本にしてしまいました。
VE(Value Engineering)が生まれたのは、1950年代の米国。
当時米国最大手のGE社のD.マイルズ氏(購買マネジャー)がValue Analysis(価値分析)という手法を開発しました。
VE誕生のきっかけとなったアスベスト事件が有名です。
ちょっと難しいですが、VEの定義です。
VEとは、最低のライフサイクル・コストで必要な機能を確実に達成するために、製品やサービスの機能的研究に注ぐ組織的努力である。
キーワードは、「コスト(cost)」「機能(function)」そして、「価値(value)」。
マクドナルドでも、お得な「バリューセット」がありますよね。
これを計算式にすると、
V=F/C となります。
機能を上げる、コストを下げることにより、V(価値)を上げることを目指します。
このVEのテクニック、思想により、ニッポンの白物家電や自動車で世界を席巻したのです。
「価値」には、希少価値、交換価値、コスト価値、使用価値、貴重価値(特性や魅力)の5つがあります。
価値を高めていくためには、どうするか?
VEには、5つの基本原則があります。
1 使用者優先の原則・・・理想的な顧客の立場にたって考える
2 機能本位の原則・・・機能本位の考え方に徹する
3 創造による変更の原則・・・創造へのたゆまぬ努力
4 チームデザインの原則・・・第一級の技術を結集する
5 価値向上の原則・・・常に問題を機能とコストの両面から追求する
今で言う、CS(顧客満足)、デザイン思考などの源流だったんですね。
機能(Function)の定義(名詞+動詞)、VEジョブプランの策定、2ndルックVEや1stルックVEなど便利なツールが多々あるのがVEという管理技術の特徴です。
VE派は、「原因-結果にこだわるQCは犯人さがし、VEは恋人さがし」なんていう言い方をします。
個人的には、VEもQCもまだまだ使えるテクニックだと思います。
小職の師匠は、米国VE協会(SAVE)が認定するCVS資格を有した専門家。
若き日、いっしょに仕事をさせていただき、また、夜の街へ繰り出して飲み明かしたものです(笑)。
師匠は、ママと若い女性2人が働く近場の小さなスナックをVEアプローチで機能定義していました。
機能系統図の1段目には、スナックの機能として「一夜の幸せを売る」が入り、これを機能展開すると「精神面/客の健康を維持する」「ストレスを解消する」「夜を楽しませる」「セクシーさを与える」が入ります(笑)。
これをベースにアイデア発想機能として「良い雰囲気を味合わせる」。
アイデアとしては、「店のインテリアを変える」「店の女性を変える」「女性の洋服のセンスを高める」「トイレに清潔感のある装飾をほどこす」「客の誕生日にプレゼントする」「聞き上手になる」・・・と機能展開していきます。
「ママのクビをすげ変える」という案もありました(笑)。
今では、VEも衰退・・・QCやIEも同じ運命です。
日本を代表するトヨタが開発した、ジャストインタイム(JIT)やニンベンのついた自働化、可動率、5回のナゼ、かんばん方式、アンドン、ポカヨケといった言葉も聞かなくなりました。
世界で一番勉強しないと言われる日本の労働者。
欧米では社会に出た後も含め2割くらいのビジネスパースンが大学院や大学に入り直し、ダブルマスターやPh.Dの学位を取得しています。
わが国は、わずか2%・・・欧米の10分の1以下です。
先進国から脱落しつつあるこの国の復興のためにも、地道な底上げ、創造性の発揮、デジタル・IT活用は必須です。
あの輝かしい日々は、もう来ないかもしれませんが、ニッポンの底力、プレゼンスはまだまだ捨てたものではありません。
陽はまた昇る!
がんばろう!ニッポン