「現代マーケティングの父」であるコトラー博士の著書ということで購入した一冊。
コトラー博士が提唱したソーシャルマーケティングの米国版事例集です。
日本からは、スバル(富士重工業)のケースが紹介されています。
GOOD WORKS!
フィリップ・コトラー、デビッド・ヘッセキエル、ナンシー・リー著
ハーバード社会起業家大会スタディプログラム研究会訳
東洋経済新報社 2200円+税
それにしても、よくもまあ、これだけのケースを集めたものだと感心した次第。
スターバックス社、ターゲット社、ジョンソンアンドジョンソン社、メイシーズ、ピアソン社、トムス社、クラフトフーズ社、サブウェイ社、リーバイス社、コカコーラ社、マイクロソフト社を始めとする50社以上の事例が紹介されています。
重要キーワードの一つが「コーズ」。
これは、「社会的な貢献を目的とする企業の主義主張」のこと。
コーズリレイテッド・マーケティング、コーズプロモーションといった展開パターンがあります。
これらの取り組みは、次のような効果があると指摘します。
1. 売上、市場シェアの増加
2. ブランド地位の強化
3. 企業のイメージや影響力の向上
4. 従業員にとっての魅力や意欲の向上
5. 営業コストの削減
6. 投資家や財務分析アナリストに対するアピール力の向上
企業として、顧客や市場との関係性を強化しようとすれば、今やなくてはならない方法論といえます。
ポジショニング学派、競争戦略を唱えたポーター博士でさえ、「シェアード・バリュー」というコンセプトを提唱。
善いことと利益獲得は、同じベクトルを向いていると主張します。
目次
第1部 イントロダクション
第2部 マーケット主導の取り組み 売上の拡大と顧客の関与
第3部 企業主導の取り組み 企業の価値と目的を表現し発展させる
第4部 攻めと守り
第5部 非営利団体と公的セクターへ
同書で、最も役立つと思われるのが、第15章。
「社会的取り組みに企業から資金援助や支援を獲得するためのマーケティングアプローチ:10の提案」が解説された章です。
NPOやNGO、学校や病院などの非営利組織に所属する方に、ぜひ読んでいただきたいと思います。
社会課題のリストアップ、関連しそうな企業のリストアップ、直接アプローチ、企画提案書の作成、管理業務の申し出など、具体的な各論までの提案が綴ってあります。
ただ、第14章にある「完全な善い行いは存在しない:皮肉と批判を乗り越える」。
社会への貢献活動に対して、時として妨害、雑音が入ります。
売名行為、売り込み、偽善である、企業利益が減る・・・といったものです。
これに対しては、次のような解決策を提示しています。
1. コミュニケーションの専門家からのアドバイスを活用
2. 賢明であれ、恐れるな
3. ふさわしいトーン(語調)を用いる
4. デューデリジェンス(適正評価)が鍵
5. 批判に対処
ソーシャルマーケティングという言葉がありますが、そもそも「ソーシャル」と「マーケティング」は反対の概念なのではないか?ということを感じることがあります。
ただ、これからのマーケティングはソーシャルと切り離しては語れないという事実。
今から、しばらくの間、企業組織、ソーシャル、そしてマーケティングのベストマッチングの探索が続くものと思います。
ソーシャルマーケティング先進国のアメリカの最新事情をウォッチしていきたいと思います。