能率技師のメモ帳

マネジメント理論を世のため人のために役立てるために・・・
中小企業診断士・特定社会保険労務士のソーシャル備忘録

ビジネスマンの基礎知識としてのMBA入門2 早稲田大学ビジネススクールの新刊の売込みコピーが面白い!

2018年12月15日 | 本と雑誌
最近、MBAと称するビジネススクールの学生募集が難しくなっているということを聞きました。
アメリカと異なり、ただ単にMBAホルダーになったからと言って、特段の人事処遇をするような企業が少ないということもあると思います。
単なる「お勉強」と言う経営者までいます。

ただ、ビジネスの世界では、知っていれば苦労しない事柄が多々あり、そういった意味ではビジネスの世界でも学び続けることは、とても大切だと思います。

ビジネスマンの基礎知識としてのMBA入門2 リーダーが知っておきたい企業革新の理論
早稲田大学ビジネススクール4教授著  日経BP社刊  1600円+税


たくさんの著書を出されているワセダMBAの浅田茂教授、入山章栄教授、内田和成教授、根来龍之教授の執筆された一冊。
特に目新しい理論の解説はないので、ちょっとがっかり。
あえて言えば、浅田教授が担当されたSession7の「フレームワークをひっくり返す」の切り口は面白いと思いました。
 
同書は、最新理論と基本原則の2つのパートから構成されています。

Session1 イノベーション 「知の探索への4つの視点」 入山章栄教授
Session2 エコシステム 「競争」から「協力」へ 浅田茂教授
Session3 プラットフォーム デジタルエコノミーの基本戦略 根来龍之教授
Session4 ダイバーシティ 「何のためにやっているのか」のメカニズムを理解する 入山章栄教授
Session5 ブランド Whyから始める 内田和成教授


Session6 コーポレートガバナンス 良い経営と企業理念 浅田茂教授
Session7 ストラテジー フレームワークをひっくり返す 浅田茂教授
Session8 マーケティング 生存領域を見つけて全体を最適化 内田和成教授
Session9 リーダーシップ パラダイムの橋渡しをする 内田和成教授

それにしても、同書のコピーは、ぶっ飛んでいます(笑)。
おそらく日経BP社の社員が、「これでもか!」と付けたものだと思います。
逆マーケティング機能が働いていると思います(笑)。

「最強の経営塾の講義録」

「世界最先端の経営学」

「時代を超える原則」

「ビジネスマンの基礎知識として・・・」

「リーダーが知っておきたい企業革新の理論」

そこまで言っちゃいますか・・・。
ストラテジーやマーケティングなどの専門家の書く本のストラテジーやマーケティング。
宣伝文が、逆機能していて、面白い一冊でした。

ビジネス書図鑑 最新&定番ビジネス書35冊をイラストと手書き文で読み解くオモシロ本 お買い得の一冊

2018年12月14日 | 本と雑誌
ビジネス書って、こう読むんだを教えてくれる一冊です。
変型本で、絵本のように読めます。
執筆の荒木さんは、グロービスMBAの教授。
本当に、マンガがうまいです。


ビジネス書図鑑
グロービス著 荒木博行執筆 ディスカヴアー21刊 1900円+税

同書は、最新&定番ビジネス書35冊をイラストと手書き文で読み解いていきます。
定番ビジネス本に限らず、あの難解な「サピエンス全史」「ティール組織」「銃・病原菌・鉄」などの重たい本もわずか3つのキーワード、4ページの中にまとめあげています。
お見事!

ビジネス本は、こうやってポイントをまとめて、実務、実践に活かしていくんだということを教えてくれます。
自分の解釈とは随分違うところもあり、人は、スタンス、立場等によって、読み解き方が違うんだなあということを教えてくれます。

目次
Chapter1 個人の生き方を考える
Chapter2 人間の本質を理解する
Chapter3 企業・組織の本質を考察する
Chapter4 世の中の変化を予測する

Chapter1では、リンダ・グラットンのライフシフト、金井神戸大教授のキャリア本、ティール組織、U理論、夜と霧などの名著を解説。

Chapter2では、サピエンス全史(上・下)、銃・病原菌・鉄(上・下)から古典「空気の研究」まで。

そして、Chapter3では、クリステンセン教授のイノベーションのジレンマ、ジョブ理論から伊丹敬之教授、アンドリュー・グローブさんの名著、ジェニーンの「プロフェッショナルマネジャー」まで解説されています。

オモシロ本で、カウチポテトでゆっくりと楽しめるお買い得の一冊です。

長くて長くて途中で挫折した(笑)重量本「銃・病原菌・鉄(上・下)」は、次の三行に集約されています。
ポイント1 銃・病原菌・鉄は本質的な要因ではない
ポイント2 文明は東西には伝わりやすいが南北には伝わりにくい
ポイント3 競争があることは文明進化の一つの条件
なるほど、大著「銃・病原菌・鉄(上・下)」の幹は、これだったんですね。


ちなみにライフシフトは、次の3つのポイントで整理されていました。
1.これからは100歳まで健康に生きる
2.100歳時代に必要な無形資産とは何か?
3.100歳から今の自分を見つめる視点を持つ

同書の主張は、ビジネス本を読み流すのではなく、ポイントを自分なりにまとめ、実践・実戦に活かすこと。
小職の場合は、エンターテイメントでビジネス書を読んでいますが・・・。
著者の漫画化、イラスト化は、たいへん参考になりました。

ビジネス本のポワイトスペースに、コンテンツのマンガを落書きのように書いてみたいと思います。
悪ガキだった学生時代に戻った感じで・・・笑。

残念な商品の法則 物はいいのになぜ売れない 「空気コピー」氾濫は大学業界にも 日経ビジネスの鋭い指摘

2018年12月12日 | 本と雑誌
日経ビジネス誌2018.12.3号の特集は、「残念な商品の法則 物はいいのになぜ売れない」。
楽しく読みました。


モノが売れない時代のマーケティング・・・本当に難しい。
マーケターやコピーライターがアタマをひねればひねるほどクチビル寂しい状況になっていきます。
同誌が名付けた「空気コピー」。
あってもなくてもいいコピーです。
むしろ、「余計なことを言うから」、ますます売れなくなります。

「和製〇〇」は大成しない・・・そのとおりです。
「日本のベニス」こと富山県内川 観光客数26.6%ダウン
「日本のマチュピチュ」こと兵庫県の竹田城跡 観光客数31.0%ダウン
「日本のグランドキャニオン」こと青森県深浦町 観光客数9.5%ダウン

同誌ではその理由として三つあげています。
1.オリジナリティがない 二番煎じ宣言
2.本家と比べられる がっくりリスク
3.実は「日本版」以外に特徴がない

そういえば、日本の政府も「日本版CCRC」とか「日本版IR」、「日本版DMO」とか、やたら「日本版」を使っていますが、ほとんど訴求力がありません(笑)。

さらに、同誌は続けます。

「こだわりの」は危険 商品を沈めるキャッチコピー

そういえば、「こだわりの~」も空気コピーです。
和食店の事例で説明されていました。

心づくしの野菜のおひたし
の魚のお造り
・本日の厳選素材の握り
・こだわり抜いた特選和牛のステーキ 極上のソースを添えて
伝統の技で仕上げた炊き込みご飯
丹精込めて育てられた果物
真心を込めておもてなし致します 店主

日頃、何の疑問もなく流れているどこにでもあるような文章・・・。
よく考えれば、「心づくし」「旬」「厳選」「伝統の技」「丹精」「真心」・・・商売するんなら当たり前ですよね。
ホント、笑ちゃいました。

当たり前のこと、言わなくていいこと、触れなくていいことを、とつとつと並べること。
コピーの世界では、「絵解き」「字解き」はタブーとされていますが、この空気コピーもその一種です。


さらに、日経ビジネス誌は、大学業界について空気コピーが溢れていることを指摘します。

日本の大学は「未来」を「拓く」のが好き

●主な大学のキャッチコピーやスローガン
「世界へ、そして、未来へ」
「つなげよう世界へ」
「自分、世界、そして未来へ拓く」
「自分を超える、未来をつくる」
「ここに集い、世界へ旅立つ」
「世界をつなぎ、未来へ」

これらのキャッチコピーやスローガンは、何も伝えていません。
新設校や今後学生を増やす必要がある大学が同じことをしても埋没してしまいます。
ランク下位の大学の半分以上が空気コピーを使っていると指摘します。

「未来」「夢」「豊かな●●」「世界」「伝統」「磨く」「輝く」・・・

学長の挨拶や建学精神などにも頻出しています。

そう言えば、ここ近年、グローバルやキャリアといった横文字学部、何でも「国際」といった学部が増えているようにも思います。
す。

そんな中、マグロや「早慶近」などのコピーで志願者数トップに立った近畿大学のマーケティングというのはお見事としか言いようがありません。

「空気コピー」が氾濫する世の中、モノを売るためにはエッジの効いた鋭い切り口のホンネトークが一番効くように思います。

眠られぬ夜のために 五木寛之さんの箴言集 1968-2018五百余の言葉 五木ファン必読の一冊です

2018年12月09日 | 本と雑誌
中学生時代からの五木ファン。
「蒼ざめた馬を見よ」「青年は荒野を目指す」「青春の門」・・・。
若き日、五木寛之さんの著作は、すべて読みました。

神田神保町の書店であったサイン会にも行き、サインをいただいた日のことを覚えています。

新潮新書から、五木さんの過去の著作から500あまりのフレーズを抜き出した箴言集が出されました。
編集者のコダワリが見え隠れするのですが、「眠られぬ~」はカール・ヒルティ、箴言集はラ・ロシュフーコーから引っ張って来たんでしょうかねえ。


眠られぬ夜のために 1968-2018五百余の言葉
五木寛之著 新潮新書 740円+税

抄録が40。
「人生の明暗」「矛盾と不合理」「人間と悪」「努力と才能」などのタイトルが付けられ、それぞれ五木作品からの引用された文章が載っています。

抄録16「運命と条理」から(同書82ページから引用)
 
「世界というものは、ものすごくはっきりしている。人間は死ぬ。生まれたその瞬間から1日1日と死に向かっていく。そこには、偶然も、必然もない。一つの流れがあるだけだ。」(重箱の隅)

「人生にはレディメイドの希望はない。」(他力)

「人生の椅子取りゲームでは、椅子に座れない人の方が多いのです。」(愛について)

自分自身、文章を書くのが好きなのですが、五木さんの文体からすごい影響を受けていると思います。
また、職業選択にしてもコピーライターをしていた五木さんの影響を受けて、広告代理店に入社してテレビの仕事をしたりします。
五木さんの代表的なコピーは、日本石油の「日石灯油でポッカポカ、日石灯油、だもんね。」
五木寛之さんや野坂昭如さんは、若き日、海のものとも山のものとも分からない広告の世界でゴハンを食べていました。

敗戦により裸一貫で半島から命からがら引き揚げてきた五木さん、売血しながら大学に通った五木さん、生き馬の目を抜く広告業界でサバイバルした五木さん、そして、文壇の中で確固たる地位を築いた五木さん・・・。
その五木さんが、著書「人生の目的」の中で、「人生の目的など、ない。」と喝破され、何となく納得したことを覚えています。

あとがきの「口笛を吹きつつ夜を」・・・とても五木さんらしいフレーズで好きですが・・・の文章が同書の帯にも出ています。
なかなか素敵な文章です。

もし時代に夜明けと夜更けがあるとしたら、いま私たちが直面しているのは、まぎれもなく深く長い夜の始まりだろう。
ミネルヴァの梟が飛ぼうが飛ぶまいが、たそがれはたそがれ、夜は夜だ。
21世紀とは深く長い夜の時代なのだと私は思う。
私たちはそんな時代を生きていくのだ。泣きごとを言ったり、わめいたり、突っ張ったりしない。
夜を生き抜いて、その果てまでを見るまで生き続けたいと思う。・・・

女性誌VERYのバッグインタイプ 考えたものです 出版不況はマーケターのアイデアを引っ張り出します

2018年11月19日 | 本と雑誌
知人の女性が言っていました。
「最近、小さなバッグが流行っているよ。女性もあまりモノを持ち歩かないようになったし・・・」
スマホとお財布と化粧品・・・最低限のものしか持ち歩かず、出来るだけ身軽になるのが今風とか・・・。
なるほど・・・。
そういえば、ミニマリストというトレンドもあるし。

そんな中、本屋さんで見つけたのが、小さなVERY
バッグインVERYと言うそうです。
従来のサイズのVERYもあるのですが、同じ内容、同じ価格(730円)で出版されています。


VERYは、30歳代の女性がメインターゲット・・・働く女性に向けた月刊誌です。
小さなVERYならバッグに入りそうだし(ちょっと重そうですが)、資源ごみの日も出しやすい、電車の中でも読めそうです。

この業界は、出版不況と言われています。
本誌より豪華付録がメインになったり、バッグINタイプの雑誌を出したり・・・
アイデア勝負の時代に入ったようです。
頑張ってほしい、出版業界です。

朝10分で差がつく ちょこっと簿記 簿記3級挫折ウン十年の福音の書になるでしょうか?(笑)

2018年11月16日 | 本と雑誌
大学時代から今まで、何度もトライして、結局最後まで読み通せなかった本があります。
 
その名は、簿記3級の本・・・笑。

特に仕訳のところに入ると、退屈で退屈で、何度も挫折した暗い過去があります。

友人の税理士からは、「考えながらやっちゃダメ。手を動かしながら、身体で覚えろよ」とか「野球のキャッチボールと同じ。右手で貸方に投げ入れ、借方から投げられたボールを左手で受け取るイメージで勉強したら」といった貴重な助言をもらったりしましたが、それでも駄目でした(笑)。

文豪ゲーテが簿記が美しいと言ったとか、大航海時代にヴェネツィアで発明されたとかといった簿記を巡るエピソードから、モチベーションをあげようと努力したのですが、これまた失敗でした。

そもそも、子どもの頃から、ドリルやトレーニングが大嫌い。
コツコツ繰り返して何かを習得すること自体がアウトだったので、致し方ないとあきらめています。

あまりに悔しいので、「簿記(仕訳)が出来なくったって、BSやPL、CFSが読めるし、経営分析までマスターしているから、まっ、いいか」と慰めています(笑)。

今では、弥生会計でパソコンが勝手に仕分をしてくれる便利な世の中になっています。
伝票もなくなり、勘定科目、仕訳といった面倒な作業も、ほぼなくなっています。

これからAIが進化していくと、請求書や領収書などをスキャンしただけで、決算までやってくれると思います。
前置きが長くなりました・・・。

でも、なんかくやしい。
そんな時、アマゾンで6週連続1位をとった簿記3級の入門書があると知りました。


朝10分で差がつく ちょこっと簿記
ふくしままさゆき著  誠文堂新光社刊  1100円+税
同書のサブコピーが、「たっぷりドリルで合格力がグングン身につく」「日商簿記3級の全体像と主要論点が3時間でわかる」。

うん、これなら行けそうです。

目次
第1章 簿記入門の入門
第2章 簿記を始めよう
第3章 決算は簿記の総仕上げ

たった200ページの同書・・・最後まで読み通せたら、また、ご報告させていただきます(笑)。

伸びる会社の経理が大切にしたい50の習慣 営業が騒がしい会社は経理が?経理が騒がしい会社は営業が?

2018年10月13日 | 本と雑誌
今まで、まったく行ったことがないのが、経理の仕事。
学生の頃から、まったく興味なし・・・。
地味で、真面目で、1日デスクワーク・・・。
しかも、細かく、愛想がなく、コミュ力がないやり取りをする人たち・・・失礼!

でも、そんな中、財務会計やファイナンスなどの勉強をしていると、いやでも経理のワークフローに触れないといけません。
京セラの稲森さんのアメーバ経営や信越化学工業の金児昭さんの本を読んだり、何となく経理にも興味が持てるようになりました。


伸びる会社の経理が大切にしたい50の習慣
前田康二郎著  日経ビジネス人文庫  800円+税

同書は、フリーランスの経理マンとして活躍されている前田さん。
経理で働くという事の意義を一冊の本にまとめました。

目次
Ⅰ 「経理は事務職」は遠い過去
Ⅱ 日常の行動習慣が「デキる」をつくる
Ⅲ 「デキる経理」の資質とモラル
Ⅳ 「デキる経理」のコミュニケーション力
Ⅴ 組織の規模・環境に応じた経理社員の仕事上のポイント
Ⅵ 経理部門内での立場・役割と仕事の基本
Ⅶ 経理以外の部署に何を中心に「経理」を伝えるか
Ⅷ 「デキる経理」心得帳

学びになったのは、Ⅴ章の「組織の規模・環境に応じた経理社員の仕事上のポイント」とⅥ章の「経理部門内での立場・役割と仕事の基本」。
実務の中から会得されたノウハウが詰っています。

組織の特性で、経理の在り方も違ってくる・・・なるほど、そのとおりです。

・大企業・・・組織全体における役割を常に意識する 想像力を養う

・中小企業・・・資金繰り、滞留債権などで経営者とのコミュニケーションを大事にする 全体業務を広く浅く覚えてから深堀りする 文書作成力を育てる

・ベンチャー企業・・・社内ルールの策定と定着に時間をかける

・老舗企業・・・既存のやり方が、今、必要かの検討に時間をかける ポイントは「言う事をきかない」をどうするか


・上場企業・・・インサイダー、キックバックなどのモラル啓発を重視する

・非上場企業・・・締め日、月次決算などスケジュール管理を重視する

・上場準備企業・・・上場の意義の啓蒙と部内の士気・体調管理に気をつける

また、各章の終わりには、「コラム 経理部長のつぶやき」がついており、楽しく読むことが出来ます。

「営業が騒がしい会社は経理が静か、経理が騒がしい会社は営業が静か・・・」
何となく分かるような気がします。
その理由は・・・同書をお読みください。

若き経理担当者必読の一冊です。

九鬼周造をウヰスキーを舐めながら親しむ秋の夜 「いきの構造」から「時間論」へ 本当に粋な哲学者!

2018年10月06日 | 本と雑誌
日経新聞で音楽家の坂本龍一さんが、九鬼周造の「時間論」を読んでいるということを知って、書斎の奥から岩波文庫を引っ張り出してきました。
十年以上前に買って「積ん読」になっていた難解な哲学書です。

九鬼周造・・・大学時代、哲学の先生から勧められて読んだのが「いきの構造」。
キルケゴール、ハイデカーなどの実存主義を中心とした西洋哲学の流れを学びながら、
その深さとコンセプトに共感しつつあった若き日、哲学の教授は、ウィトゲンシュタインの「論理哲学論」と九鬼周造の「いきの構造」を薦めてくれました。


ウィトゲンシュタインはすぐに投げ出しましたが、九鬼周造の「いきの構造」には、はまりました。

本当に、粋な、意気な一冊。

江戸の遊郭で生まれたとされる「いき」を哲学的に論考していく、とても哲学書とは思えない本でした。

「媚態」「意気地」「諦め」から構成される「いき」

「意気地」とは、やせがまんと心の張り。

「媚態」とは、男女間の可能的関係、湯上り姿、抜き衣紋、つぶし島田、縦縞模様。

「諦め」とは、はかなさ。

図が出てくる哲学書は、はじめて見ました。

さらに、驚いたのが、九鬼周造の生涯・・・。
こちらも、粋で、意気な一生。
米国全権大使などを務めた男爵・九鬼隆一の四男として東京芝に生まれ、東京帝大大学院で哲学を専攻。
ドイツ、フランスに留学。帰国後は、西田幾多郎などのいた京都帝大で教鞭をとります。

略歴だけを見ると、スーパーエリートですが、欧州留学時代はカフェや飲み屋で女遊び、帰国後は、妻と離れて京都に単身赴任、離婚後は京都の芸者と結婚、祇園から大学に通勤していたとの噂もあります。

九鬼周造の母親も京都の芸者・波津。
父隆一の付き人だった岡倉天心とともに米国に渡ったものの妊娠のため、天心と帰国。
この帰りの船の中で、波津と天心は関係を深めていきます。
結局、この恋は、離婚というかたちで終結。
岡倉天心は手塩にかけた東京美術学校(東京芸大)を追われます。

明治、大正、昭和の男たちは、九鬼や白洲次郎のようなダンディーでグローバルなサムライがいたんですね。

時間論・・・今読んでも、やっぱり難解です(笑)。


時間論
九鬼周造著  小浜善信編  岩波文庫刊  1020円+税

時間論は、「時間の観念と東洋における時間の反復」「日本芸術における無限の表現」「ベルクソンとハイデッカーの時間の問題」「文学の形而上学」から構成されています。

原文はフランス語。
400ページを超える大作ですが、その半分は小浜善信の解説。とても丁寧に分かりやすく書かれています。

九鬼が提唱した「偶然性の問題」の切り口から入っていくと、何となく理解が進みます。
九鬼周造をウヰスキーを舐めながら親しむ秋の夜。
お薦めの一冊です。

なぜ倒産 23社の破綻に学ぶ失敗の法則 帝国データバンクと東京商工リサーチ協力の泥沼再現ドラマ本です

2018年09月24日 | 本と雑誌
会社は、つぶれるように出来ています。
毎月1日、マイナスから始まります。
家賃や人件費、法定福利費、税金などの固定費、原材料費や水光熱費などの変動費・・・。
1日ごとに売上が上がっていき、やっとのことで損益分岐点を超え、粗利益が上がってくる・・・。

ただ、今のご時世、そんなに簡単にはいきません。
さらに、突然訪れる「想定外」が、会社の不安定さを加速させます。
会社は、つぶれるように出来ているのです。

本当に、経営のかじ取りは大変です。


なぜ倒産 23社の破綻に学ぶ失敗の法則 
帝国データバンクと東京商工リサーチ協力
日経トップリーダー編  日経BP社  1600円+税

この本、売れているそうです。
経営者の悩みは、深いです。
同書は、倒産した23社の企業・・・基本、実名で、倒産に至る道筋が語られています。
実際の倒産現場は、怒号が飛び交い、修羅場になっているのでしょうが、
同書では事実に基づき、淡々と語られていきます。
なかなかリアル・・・。

目次
第1章 急成長には落とし穴がある
第2章 ビジネスモデルが陳腐化したときの分かれ道
第3章 リスク管理の甘さはいつでも命取りになる

同書では、破綻の定石として、11の切り口を提示。
こうすれば、倒産しますという一種の失敗カタログです。

破綻の定石1 脚光を浴びるも、内実が伴わない
破綻の定石2 幸運なヒットが、災いを呼ぶ
破綻の定石3 攻めの投資でつまづく
破綻の定石4 世代交代できず、老舗が力尽きる
破綻の定石5 起死回生を狙った一手が、あだに。

破綻の定石6 負の遺産が、挽回の足かせに。
破綻の定石7 危機対応が後手にまわる
破綻の定石8 売れてもキャッシュが残らない
破綻の定石9 1社依存の恐ろしさ
破綻の定石10 現場を統率しきれない
破綻の定石11 ある日突然、謎の紳士が・・・

そういえば、日経プレミアム文庫の「あの会社はこうして潰れた」もロングセラーになっています。
こちらも、帝国データバンク情報部の藤森徹さんが書かれている名著です。
巻末にあるチェックリストからは、多くの学びをいただくことが出来ます。


マギル大学のヘンリー・ミンツバーグ博士が言われています。
「経営は、サイエンスであり、アートであり、クラフトである。」と・・・
そういった意味で、倒産のケーススタディは、サイエンスの範疇にあるように思います。

失敗は、同書にあるように、ある程度類型化でき、シミュレーションのパターンとしてとらえることが出来ます。
特に、人・物・金・情報という経営資源に大きな制約がある中小企業は、兆候や事象に敏感にならなければなりません。

休みの日の昼下がり・・・ちょっと暗くなっちゃいましたが、経営の失敗事例をたくさん学ぶことが出来ました。


同書の各賞の最後に、倒産した社長のメッセージが載っています。
これもなかなかリアルで、教訓になるので、ちょっとご紹介。

「事業縮小を嫌がる社員たちを説得できなかった・・・」

「もっと早く本業を磨けばよかった・・・」

自分自身の性格や考え方、癖やステレオタイプに引っ張られないよう気を付けなければなれません。

原民喜 死と愛と孤独の肖像 梯久美子さんの岩波新書新刊 広島が生んだ命の叫びをクールにつぶやく詩人

2018年09月12日 | 本と雑誌
原民喜という広島市出身がいたことは知っていました。
が、彼の詩や文学に触れたことはありませんでした。
ひっとしたら、小学校や中学校で習ったことはあったかもしれませんが・・・。


原民喜 死と愛と孤独の肖像
梯久美子著  岩波新書  860円+税

広島の書店でベストセラーに入っています。

原民喜(1905~1951)は、広島市の裕福な商家に生まれ、慶応大学文学部英文学科を卒業、ほとんど仕事をすることはなく、小説家、作家、詩人を目指します。

しかしながら、生まれながらのお坊ちゃま・・・。
身の回りのことも出来ない、コミュ力もない本当に不器用な青年だったようです。

彼が変わったのが、見合い結婚した広島出身の貞恵という女性。
民喜とは正反対のポジティブで明るい性格・・・。
内助の功・・・売れない民喜を盛り上げていきます。

その妻と暮らした10年間が、民喜が最も幸せだった時期。
病で妻を亡くし、生きる希望のなくなった民喜は広島に帰省・・・。

1945年8月6日・・・広島市の中心部で被ばく。
人類初の原子爆弾さく裂・・・偶然にも民喜は無傷で生き残ります。

我ハ奇跡的ニ無傷ナリシモ、コハ今後生キノビテ
コノ有様ヲツタエヨト天ノ命ナランカ
サハレ、仕事は多カルベシ

民喜は、被爆体験に基づいた「夏の花」「原爆小景」を創作していきます。



梯久美子さんは、晩年の民喜を調べるため、丁寧な取材を展開していきます。

民喜を師と仰いだ遠藤周作、二回り年下の裕子という女性・・・。
このあたりは、中原中也や萩原朔太郎の人生ともオーバーラップしてきます。

梯久美子さん・・・カケハシさんと読みます。
梯さんは、「散るぞ悲しき 硫黄島総指揮官・栗林中道」で作家デビューされた方。
民喜への愛を感じさせる一冊になっています。
岩波文庫の「原民喜全詩集」の帯にも、「原爆文学の旗手は、こんなにやさしい詩人でした。」というコピーを書かれています。

ぐっと来たのが、「机」という4行詩。


何もしない
日は過ぎていく
あの山は
いつも遠いい

とても良い詩です。