国会では、労働者派遣事業法の改正法案で与野党が論戦を交わしています。
非正規労働者を巡る法整備はとても重要な問題です。
日本の労働法は、大正時代に施行した工場法がベース。
ベルトコンベアが動き始めて労働開始、ベルトコンベアが止まり労働終了・・・そんな労働時間管理が土台となっているのです。
それが、戦後、労基法となり、ホワイトカラーが過半数を占める日本の労働事情とは、かなりのミスマッチを起こしています。
突然、残業代の請求訴訟が起こったり、解雇を巡るトラブルが起こったり・・・。
労基法の第32条の労働時間の条項を見ると、思わず笑ってしまいます。
工場法ベースの労働時間を修正し、ホワイトカラーに合わせるために32条の2、32条の3・・・32条の10・・・延々と続きます。
広告代理店のデザイナーやクリエイター、一日外勤・直行直帰の営業担当者、SEやプログラマーなどの専門職、24時間働く為替ディーラー・・・彼彼女を現在の労働法の枠組みの中でとらえるのは、もうほとんどムリな世界に突入しているのではないでしょうか?
しかも、日本では、裁判所も労働委員会(地労委、中労委)も、労働者側のスタンスに立つことが多く、訴訟、労働審判などになると労働者側が主張を認められることが多いと言えます。
もちろん、労働についての社会的弱者は存在するわけで、そこはちゃんと対応しなければならないのですが・・・。
今回の一冊は、経営者側のスタンスに立つ弁護士さんの一冊。
労働者の権利の方が強い今、多額の残業代を請求され倒産、労働争議が起こり夜逃げ・・・そんなリアルな事件、ケース入りで解説されています。
「社長は労働法をこう使え!」
向井蘭著 ダイヤモンド社 1600円+税
サブタイトルは、「プロ弁護士が教えるモンスター社員・ぶら下がり社員へのリアルな対応事例」。
最近では、働かないオジサン問題も再燃していますが、
ぶら下がり、フリーライダー問題もいまから高齢化を向える会社組織にとっては、重要な課題だと思います。
著者の向井さんは、経営者側弁護士。
日本の弁護士は、約3万人。
そのうち経営者側に立って弁護している人は、なんと、100名だそうです。
会社法務や不動産法務などに比べれば事件に関わる金額のケタが2つくらいは違う労働事件。
弁護士報酬も少なくなるこの労働分野を専門とする弁護士が少ないのも分かる気がします。
また、人が関わるだけに、切った、張ったという凄まじい場面にも遭遇しなければならない経営側労働弁護士。
ただ、これから増える人の問題。
何とか労働法を扱う弁護士さんが増えないものかと思います。
目次
第1章 社長のための労働法入門
第2章 社長なら知っておきたい労働法の新常識
第3章 もめる会社は決まっている
第4章 もめる社員も決まっている
第5章 トラブルが起きたらどうするか
第6章 そもそもトラブルをどう防ぐか
第7章 ぶら下がり社員、モンスター社員を解雇する方法
同書の中では、リアルな事例がたくさん出てきて驚かされます。
・仮処分を繰り返して生活しているモンスター社員がいる
・正社員を解雇すると2000万円かかる
・成果をあげても、勤怠不良は許されない
・人事異動は使用者の最大の武器 ・・・
会社の経営をされている社長さん、総務部長には、ぜひとも一読いただきたい一冊です。