My Library

気まぐれ読書・映画・音楽の記録。本文に関係のないコメントについてはご遠慮させていただきます。

森博嗣「トーマの心臓」

2010-02-19 | 小説
萩尾望都の名作コミックを森博嗣が小説化!

『トーマの心臓』の美しさの本質を再現したかった(森 博嗣)
読み終わるのが惜しくなるような、澄んだ美しい物語でした(萩尾望都)
 
ユーリに手紙を残して死んだトーマという美しい下級生。ユーリを慕っていたという彼は、なぜ死を選んだのか。良家の子息が通う、この学校の校長のもとに預けられたオスカーは、同室のユーリにずいぶんと助けられて学生生活を送ってきた。最近不安定なユーリの心に、トーマの死がまた暗い影を落とすのではないか。そんな憂慮をするオスカーの前に現われた転校生エーリク。驚くことに彼はトーマそっくりだったのだ―。愛と孤独、生と死に苦悩する若者の内面を森博嗣的世界観で描いた傑作。描き下ろしイラスト収録
 
 
森さんの文書って、無駄がなくて洗練していて。小説なのに「詩」を読んでいる感覚。流れるように美しい文体と、会話。にぐいぐい引き込まれる。
漫画では表現し得ない、活字の世界。は読者の想像力を膨らませ。主人公の息づかいや、その場の空気さえも、感じてしまう。
なんて素敵なんだろうと思う。私は、どちらかというと、文系の作家より、理系の作家の方が読みやすいなと感じることがある。
ねちねちしていないし、さらっと表現した方が、イマジネーションが働く。
 
トーマの死から始まる物語。ユーリ・オスカー・エーリクの3人それぞれの愛と孤独、生と死に苦悩する若者の内面は、いま、読んでも。自分に振り返って、全ての人物の思考が私の中に混在するのを感じたりします。
この本は、たぶん、今後、読み返すことになるかもしれない。
村上春樹さんの「ノルウェーの森」がそうであるように、人の死から始まる。物語は、残された人がどう生きていくのか、、悲しみは時間が解決することは、一生ないと。気づいた今。やっぱり手にとって読みたくなるのは、そういう本質をとらえた小説なのではないかと思う。
 
エピローグ・ぼくは ほぼ半年のあいだずっと考え続けていた ぼくの生と死と それから一人の友人について
 
1章・それぞれの思いは 無念の奥に秘められる まだ 透きとおった 少年の日に あこがれは ~やさしく 恋は ためらいがちに おずおずと 訪れを つげる
 
2章・~まっぴらだ 死の負債をせおって 生きていくなんて~ だからぼくは 君の影を 抹殺しなければ ならないのだ ぼくがこのまま 生きながらえる ためには どうしても
 
3章・ぼくらは 似たように 走り笑い 似たような服を着た 顕微鏡の下の 同じ 単細胞生物みたい  長い廊下 階段 窓 窓 窓 教室~ まるでひとつぶの しずくの中の 世界
 
4章・彼を 生かすためなら ぼくは ぼくのからだが 打ちくだかれるのなんか なんとも 思わない …そうして ぼくはずっと 生きている 彼の目の上に
 
5章・でも彼は 知っていた ぼくが 背を向けても 打ち消しても やはりそれが なければ 人は生きて いけないと ぼくもそれを 求めている
 
6章・いつも いつも 生徒たちの 背にぼくは 虹色に淡い 天使の羽を 見ていた 天国の 狭き門より くぐりいる ことのできる 翼を ぼくだけが 持たなかった
 
エピローグ・こればぼくの愛 これがぼくの心臓の音 きみにはわかっているはず
 
各章冒頭は萩尾望都「トーマ心臓」より


最新の画像もっと見る

コメントを投稿