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重松清「きみ去りしのち」

2011-06-19 | 小説
息子は1歳の誕生日をむかえたばかりで眠るように死んだ。圧倒的な彼岸の風景と土地に残る死の記憶がもたらした奇跡の再生の物語。
どれだけ歩きつづければ、別れを受け容れられるのだろう。幼い息子を喪った父、“その日”を前にした母に寄り添う少女。―生と死がこだまする、ふたりの巡礼の旅。再生への祈りをこめて描かれた傑作長編小説
家族の死を受け入れるという重苦しいテーマ。死は、生あるものに必ず訪れるもの。けれど、受け入れるには、随分、唐突にやってくる突然死。あるいは、癌。、そして、交通事故。全編を通して、様々な死を受け入れることができない家族が描かれる。
主人公は、一方的に別れを告げられ離婚した妻が連れ去った我が娘と再婚し新たな命を授かったが突然死で失った命と向き合うために、旅にでる。
死の対極の生を力強く、逞しく生き抜いている16歳の少女。明日香。
まわりの大人達は、失った家族に悼んで、いつまでも今を生き抜くことができない人間達ばかりだ。
様々な大人と係わり、当の本人は、高校を休学中。
自立した明日香の生き方は大人と対照的に描かれる。
いつまでも大人になれなかった。どこかに本当の自分の生き方があると信じて、何度も結婚をくり返す母をもった明日香の父親であるセキネさんは、どこまでもはっきりしない男性だ。
けれど、明日香にとっては唯一の父親でもある。
10年以上会ったこともなかった。セキネさんと巡礼の旅をする。ときにいらいらを感じながら。でも、この人は、悪い人ではないんだな。
一度もお父さんと呼ばない明日香だが。
その言葉を、口にしたら、一人で生きていく!と心に強く思っている明日香は崩れていくんだと思う。本当の父親にだけは、見せなかった涙。
強がりな明日香。が痛々しい。
母親を立派に見送り。
今度は、一人旅にでる明日香。
主人公はセキネだが。
私は、明日香の生き方。生の素晴らしさが好きだ。
このねちっこい大人。男の語りは、重松さんの感覚だなあと思う。
ちょっと私は苦手なタイプだ。
元妻美恵子とのホスピスでの最後のシーンが印象的
~話したいことはたくさんあったが、言葉は要らない。見つめ合うこともやめた。
同じものを見よう。黙って、二人で、同じ遠くを見つめていよう。
~水平線に目を凝らす。美恵子の手を握る手に、少し力を込める。
ありがとう、と言った。
頭で考えた言葉ではなく、潮騒に誘われるように、ふっとその言葉が出た。
ありがとう。
もう一度言って、美恵子の膝の上に頭をそっと寄せた。遠い昔、私はこうやって、美恵子のおなかにいる明日香の鼓動を聴いたのだ。
ありがとう
美恵子の声が、かすかに揺れながら、重なる。私の頭を美恵子の指が滑っていく。
顔尾を斜めに傾けているせいで、空と海の境目が一瞬わからなくなった。
空の青なのか、生みの青なのか、水兵さんに鮮やかな青い色の影が浮かんだ。~
これ、映画のシーンに使えそうですが。こういう。いかにも!っぽいところ。どつぼにはまります。単純だなあ。と我ながら思う。


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