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気まぐれ読書・映画・音楽の記録。本文に関係のないコメントについてはご遠慮させていただきます。

有川浩「ストーリー・セラー」

2011-05-24 | 小説

このままずっと小説を書き続けるか、あるいは……。小説家と、彼女を支える夫を突然襲った、あまりにも過酷な運命。極限の選択を求められた彼女は、今まで最高の読者でいてくれた夫のために、物語を紡ぎ続けた――。「Story Seller」に発表された一編に、単行本のために書き下ろされた新たな一篇を加えて贈る完全版

 

sideAは、作家の妻の死、sideBは、作家の妻を支える夫の死をあつかう作品。

Bのほうは、かなり有川さんのリアルな生活感がにじみでています。物語にするため夫からアイディアが出てくるところも、前にテレビインタビューで話していた有川さんといい関係をたもっている夫との雰囲気がそのまんま文章に表れている無理のない作品になっていると思う。けれど、どちらの作品も、死を結末にしているところが、嘘くさい作品です。そうです、あきらかにフィクション。お話なんだな。ちょっとだけ、死が簡単にあっさりと描かれるところだけ、腑に落ちませんが。

とんとんとテンポ良く進んでいく、小説は、頭をほぐしてくれます。すぐ読めてしまうし。

私も、この夫と同じ、読む側の人間。お話の中に、活字の中に心をおくことが心地よいです。

~どれだけ怒り狂っても理不尽なことは言い出さない。そして同時に彼女は常に捨て身だった。その様子は端から見ていると殴り合って分かり合う昔の少年漫画のようだった。

~最初から何も持っていないと言い放つ彼女にとって勝てる喧嘩とは自分に理がある喧嘩すべてだ。もっともそれは、もともと失うものが何もなかったと最初から開き直っている彼女ならではの勝ち方かもしれないが

sideAの彼女は、極端だが、自分に当てはまるところもなきにしもあらずで、ちょっとあいたたた~と読みながら、希少な女子かもしれないけど、いるぞ。ただ、家族の問題はきつかったな、もっともっと優しく。どこかであきらめず、話し合って和解してほしいと思った。父に対する疎遠な関係は、一方通行であってお互い傷つけあい。言葉のやり取りさえ悲しすぎると思う。家族の問題…。これは、たぶん、子どもを育てた人間でないと、扱いが難しいのかなとさえ思います。有川さんの描けない物語は、その辺なんだろうな。

~結びの言葉に「さよなら」とかけなかった彼女が愛おしくて。君はずるい、自分だけ言いたいことを全部遺して、僕は改まったことは何も言えなかった。きっと言わなくてもつたわっていたけど、もっと口に出しておけばよかったこと。もう伝えられなくなるなんて考えたくもなくて胸に押し込めていた言葉たち。どうして何度も伝えておかなかった。僕は何て弱かったのか。改まって伝えたら、伝えられなくなる日が来ることに向き合わなくてはならないから、それが怖くて目をそらした。君はちゃんとその日を準備していたのに。君は最後までなんて男らしかったんだろう。そんなきみがすきだ。

そうそう、有川さんの泣きの殺し文句、これこれ、健在です。

~僕は君を甘やかすのが好きなの。君を甘やかすのが俺の人生の目標と言っても過言じゃないね。どうだ、嬉しいか

う~ん。そうはいっても、ここまでは有川さんの夫は言わないだろうなあと想像しつつ。言ってたらすごい!

~人間が無条件に優しくなれるのは、相手がホントにこれから死ぬってことが目の前にぶら下がってからなの。人間は生きてたら絶対些細なことで喧嘩すんの。些細なことで喧嘩するうちは、死がまだ現実じゃないってことだよ

そう、だから、無理して怒らなかった彼女に、いきなり

~態度変えんなよ!俺を腫れ物にすんなよ!頼むからわがまま言えよ!」って怒った彼と彼女のやり取りがまたたまらなく良いです。

 

さて、つぶやきメールって言うのは、いい感じですね。現代風。意味ないけど。こちらとありたにいる人間。今見た、感じたこと。ブログじゃなく。ひとこと。

こういう何気ない言葉。よく分からないけどツイッターがはやっているのは、こんな感覚なのかなあ~と思いました。



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