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気まぐれ読書・映画・音楽の記録。本文に関係のないコメントについてはご遠慮させていただきます。

重松清「ブランケット・キャッツ」

2008-10-18 | 小説

馴染んだ毛布とともにレンタルされる猫たち。「いま」を生きる人の孤独と猫のしなやかさ。7つの心温まる物語。asahi.com連載の単行本化。

 

「花粉症のブランケット・キャット」~子どものできない夫婦と三毛猫「アン」

2人暮らしで喧嘩をすると、間に立って取りなしてくれる人も、味方についてくれる人も、「お前の方が悪いんだよ」と言ってくれる人も、愚痴をこぼす相手すらいない。

「2人」は、あっけなく「1人」と「1人」にわかれてしまう。「ひとりぼっち」と「ひとりぼっち」は

「自由を認め合える良きパートナー」として、つながっている。でも、それと「夫婦」は、どこかが違うような気がするんだけどな…。

お試しのレンタル猫「アン」によって、思いどおりにならないことがあると知るふたり。

ふたりで協力して何かのためにするって事をしるふたり。

 

「助手席に座るブランケット・キャット」~癌告知を受けた、50代離婚歴3回の独身女性。会社のお金を横領。ベンツで「クロ」と当てもなくドライブ。「ふしあわせ」が見せてくれたのは、過去、少女の自分、そして、海に向かうクロ。溺れそうになったけど、仰向けに広がる青空。もう一度、ドライブするために…。

 

「尻尾のないブランケット・キャット」~マンクス・ノアの箱舟に最後に乗った猫

いじめの主犯格の少年と少年を溺愛する短気な父

「いろんなこと、なんでも、まだ間に合うんじゃないかな。尻尾がちぎれちゃっても、箱舟に乗っちゃえば勝ちだもんな」

笑い返したつもり、瞼がまた、じわじわと熱くなる。

 

「身代わりのブランケット・キャット」~一人暮らしの祖母がいよいよ施設に。大好きな母親なのに、子ども達は誰も一緒に住もうとはしない。そんな事情を冷ややかにみる孫の30才私。家族って?疑問を感じ、優しい彼との結婚を躊躇する。

亡くなったアメリカンショート・ロンロンの身代わり猫を「優しいね」と可愛がる祖母。

「喧嘩しようよ。どっちが正しくて、どっちが間違っているじゃなくて、たくさん、喧嘩しようよ、これから」思い切って告げる私。

喧嘩をするなら、迷ったり悩んだり落ち込んだりする相手の方がいいに決まってる。

そして、喧嘩の後に仲直りするなら、優しい人に、かぎる。そう気がついたのは、おばあちゃんの優しい言葉。

 

「嫌われ者のブランケット・キャット」~マンションの頑固大家さんと月に1度レンタルする雑種猫の関係。そこには、深く悲しい家族の事情が…。

フリーターと派遣社員カップルと捨てネコチャーミーとザツの優しい関係。

 

「旅に出たブランケット・キャット」~海をみて、先祖の血が騒ぎ、思わず旅に出た唯一ネコが主人公の物語。家出兄妹との交流。

ひとりきりと、ひとりぼっちは、似ているようで違う。誰かと一緒にいたいのに一人になってしまうのが、ひとりぼっち。誰もが、一人きりの人生を歩んでいく。だが、それは、ひとりぼっちの人生であってはいけない。

人間のために一肌脱ぎ、そして、また、ふらりと野良猫になったブラウンクラシック・タビー中年ネコ

 

「我が家の夢のブランケット・キャット」~リストラされた父親が家族にささやかな夢として猫を借りてきたロシアン・ブルーのニャース。

売りに出す家での思い出作りに対して、妻と娘は冷ややか。屈託ない息子の喜ぶ顔。

ブランケットを突然奪われたニャース

「猫は大切なものを失ったら、困ることしかできないけど、人間は違うの。大切なものがなくなっても、それを思い出にして、また新しい大切なものを見つけることができるし、勝手に見つけちゃうものなのよ」

ニャースの混乱から、やっと家族が一つに

 

それぞれの家族とレンタル猫の優しい物語です。

 




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