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『砂漠の戦争 - イラクを駆け抜けた友、奥克彦へ』 岡本行夫

2006年12月03日 | 外国関連



砂漠の戦争 岡本行夫.jpg


テレビ・新聞などでおなじみ、元外務省北米課長、岡本行夫氏の著作です。小泉内閣では、評論家ではなく、実際に首相補佐官として政権の政策決定に重要な役割を担っていました。

首相補佐官当時、主にイラク問題を担当し、首相に、世界の国々の情勢分析を伝え、政策の選択肢を増やすことが任務だったそうです。“砂漠の戦争” とはもちろんイラク戦争のことです。

この戦争で、確かに自衛隊は無事に帰国したのですが、日本人が亡くなったことも事実です。人質、カメラマン、そして外務省の方が尊い命を落としました。本書は副題に “イラクを駆け抜けた友、奥克彦へ” とあります。


何者かに銃撃され殺されてしまった奥大使は、岡本氏の外務省での後輩で、イラク問題では欠かせないパートナーでした。そもそもイギリス大使館にいたのですが、そこからイラクに出向していた奥氏の活動も細かく紹介されています。

イラクに岡本氏が飛び、奥氏と二人で、ベッドも置けないような部屋で、情勢分析などをしながら夜を明かした場面など非常に印象的です。


岡本氏が奥氏の死に際して、テレビでコメントを求められ “日本の宝を失った” と発言しました。死を悼む気持ちは理解できますが、その時はやや大げさかなと思っておりましたが、本書を読んでみると、岡本氏の指摘の通りだと感じます。


祖国日本のため、そしてイラク人のために危険を顧みず、本当に “超人” のごとく働いて独自のネットワークと信頼関係を築いていました。ロシア外交における佐藤優氏と同じく、余人をもって代えがたい貴重な人物になっていたようです。

機転をきかせた各国政府や日本外務省とのやりとりなど、その献身的な活動を知れば、亡くなってしまったことは “宝を失った” という衝撃があります。


岡本氏も奥氏の活動を紹介せずにはいられなかったのでしょう。本書では、奥氏だけではなく、岡本氏の行動や外務省、小泉首相、福田官房長官など政府の動きや、様々な決定のプロセスの一部にも触れられています。


こういう場合、日本政府がどのように動くのかを知ることができ、興味深く読みました。

国内の自衛隊派遣反対派に対処するだけでなく、民間企業や技術者に対する援助協力要請、現地イラク人に対する説明、隣国への根回しや、同盟国英米への配慮、ドイツ、フランスなど開戦反対を主張した国々への関係修復、実に多岐に渡る問題が当事者たちを悩ませるということが実感できます。


また、そうした非常に大きな問題が、一人一人の政治家や外務省役人の行動力や交渉力にかかっているのです。国家を背負って仕事をしている人がこんなにいるんだという新鮮な驚き、逆に、国益を考えない連中が外務省を仕切ると日本は大変なことになってしまうということも容易に想像がつきました。


志なかばで倒れた友のためにも、さらに前進しようとする、岡本氏の決意を感じます。政治や外交に興味のある方にはお薦めの一冊です。


砂漠の戦争―イラクを駆け抜けた友、奥克彦へ

文藝春秋

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『砂漠の戦争』 岡本行夫
文藝春秋:326P:1600円(文庫も出ています)



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