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【絵本から専門書まで】 塾講師が、生徒やご父母におすすめする書籍のご紹介です。

『冑佛(かぶとぼとけ)伝説』 河村隆夫

2007年05月07日 | ノンフィクション


冑佛伝説.jpg



長い休みが終わりました。(当塾は関係ありませんが…(笑)。) お休みモードから勉強モードへ切り替えるにはピッタリの一冊かも。


端午の節句に飾る“兜(かぶと)”、もちろんそれは昔の武士が合戦に際して、攻撃などから身を守るために付けていたわけですね。彼らは戦場で命をかけて戦いますが、どれほど屈強な武将であったとしても、そこは戦場、敵が倒れ仲間が死ぬのを目の当たりにすれば、自分の存命を神仏に願うのは自然でしょう。


マラソン選手だってパンツにお守りを縫い付けたり、受験にだってお守りを持っていく日本人のこと、その昔、戦国武将らも、自分の兜に本当に小さな仏像(2・3センチ) をお守りとして付けていることがあったそうです。


それを冑佛(かぶとぼとけ)というのだそうですが、それにまつわる大変興味深い一冊で、静岡にある旧家の河村家(筆者のご自宅が市の指定文化財)に伝わる冑佛をめぐるドラマが描かれています。


“冑佛” というものをご存知の方は少ないでしょう。というのは本書の著者である河村氏は、代々自分の家に伝わるその冑佛について調べようと、多くの専門家に当たりますが、その多くが “聞いたことがない” と答えたそうですから。


河村氏は、祖母から聞かされていた、家に伝わるご先祖様の冑佛の話を、以前から面白半分に来客にしていたようですが、ある人から、“似たようなものが小田原城にも展示されている” と聞き、ひょっとしたら、手許にあるこのポケットサイズの小さな仏像は、河村家だけの記念品ではなく、歴史を彩るひとつの証しになるかもしれないと気付き、調査に乗り出します。


ところが、いざはじめたものの、それは困難を極めます。甲冑などの専門家ですら見たこともないし、聞いたこともないと拒絶されてしまい、素人である筆者では、権威ある専門家の見解を引っくり返すすべはありません。専門家に嘲笑されて落胆、田舎の一凡夫が抱いた歴史ロマンに過ぎないのか、冑佛を世に出すなど、身分不相応な大それた夢だったのかと…。



180px-Samurai.jpg

 

『冑佛があるなら記録があるはずです』。つまり、小田原城や他に似たものがあっただけではダメで、公式文書にその記載がなければ、素人の論文など扱えないと突き返されてしまいます。


それでも諦めず、わずかな協力者と運を頼りに、今にも切れそうな細い糸をたぐるように地方の博物館やら教育委員会やら専門家のもとをまわります。もちろん空振りも多かったでしょうが、その中で、確かに戦国武将たちの間で、そんな習慣があったことが分かってきます。


いくつか似たような小さい仏像が残っており、全国バラバラに散らばってはいても、冑佛はまぎれもなく歴史の中にしっかりと存在していたということが分かってきたわけです。


そして、ついに、筆者が入院中に病室で調べていた古文書の中に、その記述を見つけます。公式文書に出会ったわけで、数百年に渡って闇に放っておかれた冑佛が、伝説通りに存在していたことが証明され、河村氏が紆余曲折を経て、とうとう冑佛を歴史の表舞台に登場させることに成功します。


冑佛の話題が、テレビで取り上げられると、今度は逆に、全国から冑佛を持っているという人などの問い合わせの電話や手紙が殺到します。やがて、NHKの大河ドラマ 『利家とまつ』の1シーンにも映し出されるという顛末を描いた一冊なのです。


冑佛という神秘の世界の扉が、数百年後の現代、ついに開かれるまでの数奇な道筋、筆者の、雑念と戦いながら冑佛の歴史の穴だけでなく、自分の人生に対する空虚感を埋めるかのような心理描写。


先が見えない悪戦苦闘の中で、まるで、御先祖様や冑佛が導いてくれたかのような、不思議な出来事や幸運などが重なりあい、最後に多くの名だたる武将が登場してくるさまは圧巻です。


河村氏はかつて小説家を志された時期もあったというだけあって、博識で表現も豊富なので、私は引き込まれました。その上、塾で教えていらっしゃる!つまり私と同業でもあるんですね。心でエールを送りながら読みましたよ(笑)。

古文書などが出てきますので、そこに書かれていることは易しくはないのですが、歴史に興味のある人にはおもしろく読めると思います。ぜひどうぞ。


胄佛伝説

静岡新聞社

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8 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
端午の節句 (Dan)
2007-05-07 21:08:08
昨日、日能研のセンター模試を息子が受けたんですけど、あまりの点数のひどさにまたまた貧血を起こしそうになりました。国語の記述、全滅です。
「あなた、本当に日本人ですか?」ついつい聞いてしまいました。
VIVAさん、記述対策、どうすればよいのでしょう?
社会の問題で、{次のア~オのうち、その日が「国民の祝日」であるものを選び、記号で答えなさい。
ア 節分 イ 桃の節句 ウ 端午の節句 エ 七夕 オ 七五三}というのがあって、「なによぉ、これ、こんな簡単な問題。」って思ったら、うちの息子、間違っていました・・・(親は涙)。 
端午の節句がこどもの日って、知らなかったんです。ひょえ~!
ちなみに息子の選んだ答え、エの七夕。
へ~、いつから7月7日がお休みになったのかしらね!
Unknown (milesta)
2007-05-07 22:51:03
わぁ、これは面白そうです。
小さい仏像というのが何とも興味を引きますし(欲しい!)、

>先が見えない悪戦苦闘の中で、まるで、御先祖様や兜佛が導いてくれたかのような、不思議な出来事や幸運などが重なりあい、最後に多くの名だたる武将が登場してくるさまは圧巻です。

というところ、ワクワクしますね~。
Danさん (VIVA)
2007-05-08 00:26:38
Danさん、お会いしたことはありませんが、Danさんの叫ぶ声が聞こえてきそうです(笑)。

記述問題は二つのタイプに分かれます。本文から抜き出して、多少手を加えれば良いものと、まるで作文のように自分の意見を述べるタイプです。

前者であれば、誰か専門の講師がちゃんと付いて練習させればすぐにでも得点力はUPしますが、後者であれば時間がかかります。

まずは、慎重に分析してみて下さい。志望校が決まっていれば、過去問にどちらのタイプが出題されているか。失礼ながら、お子さんの弱点は、常識がないことだと考えられるのか、表現力なのか、あるいは単なる練習不足なのか。

その分析を間違うと対策も間違えます。そこのところが“ポイント” なので、そこだけは冷静に判断してくださいね。

何かあればいつでもどうぞ。
milestaさん (VIVA)
2007-05-08 00:29:47
いや、不思議な読書体験をした気分ですよ。本当に。私なんぞは、畏れ多くて冑佛を欲しいとまでは思いませんでしたが(笑)、ぜひ見たい!

残念なのは本書に一枚も画像が無いことなんです。
VIVAさん、有難うございます (Dan)
2007-05-08 06:59:59
アドバイス、ありがとうございます。
親としては、ど~も冷静に判断できないんですけど、語彙力不足もいなめませんし、要約、縮約の力もついていません。
要約はキーワードを使ってまとめるだけなので簡単そうに思えるのですが、どうもそのキーワードを選択する段階で、とんちんかんな語句を選んでいたり、全く的外れな要約(これ、作者の言いたいことじゃないよっ!)をしたり。
数々の伝説が・・・。
当然、自分の意見をまとめて書くなんてことは、最初から放棄というか、そんな問題を見ただけで、フリーズしています。
志望校は自分の意見を書くような問題は今の所ないようです。
ただ、記述問題は多いです・・・(涙)
常識もないようです。だって七五三が国民の祝日だって・・・。(涙、涙)
よくよく考えると、語彙のなさ、常識のなさ、
練習不足、どれも当てはまります。
これって、今から頑張っていっても、入試に間に合うのでしょうか。
間に合わせなければ、合格が遠のいてしまいますよね。(涙、涙、涙)
Danさん (VIVA)
2007-05-08 11:53:28
そうそう間に合わせるのですが、↑に書いたとおりまずはどういう常態かを正しく判断しなければなりません。また、すぐにできること、すぐに得点に結びつくところと、時間のかかりそうなところは分けて考えましょう。

できれば直接、見たいんですが…、塾の先生に的を絞って質問して下さい。単に

“記述はどうやったらできるようになりますか” ではなく、

“○○中学ではこんな記述が出題されていますが、うちの子どもの模試結果では△△でした。一学期のうちにできる対策は何がありますか”

のように。

繰り返しますが、入試では満点を取る必要はないのです。というより満点を狙ってはいけません。ですからできないところをある程度、捨てるという選択だってあり得ます。ただし、今の時期に捨てるという判断は早過ぎます。信頼できる専門家、つまり塾の先生に相談してみてください。

先祖探し (ysbee)
2007-05-08 19:17:58
いつものことながら、いったいVIVAさんはどうやってこういう本を探してくるのだろう。(疑問その1)
いったいいつ読むのだろう。(疑問その2)
いったいつ寝るのだろう。(その3。大きなお世話じゃ)
このクエスチョンマークが頭の回りを衛星のごとく回っております。

ちょうど行きつけのさらし割烹の店で、名人の板さんが
「今日は、どこどこの海岸だけでしか取れない云々が珍しく入りましてね……」
みたいな、味わう方としては安心しておまかせの本の割烹です。
(例えが悪い?)

実は、私の母方のご先祖さんに最近興味を持ちまして、
ひょっとすると隠れキリシタンだったんじゃ?
という謎を解きたいのですが、いかんせん故国を遠く離れてで
ネットの情報だけが頼りです。
一応5代前までは遡れたのですが、文書はそこまで。

アメリカには ancestry.comというサイトがあって
600万人以上が登録メンバーで大概の家系はたどれるようです。
日本にも似たようなサイトがありますか?
あったらもっと遡った家系まで探ってみたいと思います。
(関係ない話ですみません!)
ysbeeさん (VIVA)
2007-05-09 01:00:26
へい、っらっしゃい!って(笑)

一日に一冊UPしておりますから、私が、大変な読書家に見えるとは思いますが、普通の本好きです。速読術というのをマスターしているなんてとても申せません。

以前何度か書きましたが、当教室はずっと前から、HPがあって、メルマガも5年以上続けています。ほとんど読者は増えておりませんが(笑)。

HPには、読書の掲示板というのが昔ありまして、そこで紹介した本を、もう一度手を加えて、ここで紹介しているということです。

ですから記事と同時進行で読んでいるわけではなくて、ストックが切れた時点で大幅なペースダウンになると思います。

今は、一日平均1~1.5時間くらい寝る前に本を読めるかどうかというところです。もちろん英語などの参考書は自分の仕事ですから、そこでも読んでおります。