本書は“超人気カリスマ大学講師”と呼ばれている、泉忠司先生の著作です。何と言っても、歌って覚えるというのが、目新しい作戦で、CDに文法上の構文が歌として11曲も入っており、かなり売れています。ただ、残念ながら、私にはとても生徒には薦められないものでした。
まず、CDですが、プロの歌手と泉先生ご本人が熱唱しておられるのですが、ネイティブではないので発音が悪く、カラオケを聴かされている気分です。ジェイポップだと割り切ればまぁ楽しめますが、さすがに英語の教材として薦めるのは難しいと私は考えます。センター試験でリスニングが課せられている時代ですから…。
本の方ですが、英語が苦手な生徒を対象としているためか、英文法は簡単だということを強調するためか、基本のところや、考え方自体は記述もわかりやすく良いのですが、やや高度なものに対して解説が少なすぎます。これを『史上最強の一冊』と呼ぶのはかなり苦しい。
明らかに誤記だと思われるものもいくつかあります。例えば、P134の大きな図のまとめ、せっかく良いまとめ方なのに、『副詞相当語句』のはずが、『名詞相当語句』になっていて、偏差値30台の生徒ではまったくわからない恐れもあります。また、P180の“仮定法のif節にwillが入る場合”というところでCDの一節を抜き出し“If you would give me another chance, ~”とあり、“この文のようにwillが入ることがあります。”となっていますが、この文にはwillが入っておらず、willとwouldの違いを説明するところですから、きっと生徒は混乱します。またif節のwillを用いた文を仮定法と言ってしまうのも、私とは見解がまったく異なります。
仮定法に関して、さらにp176に“If you insisit that saying goodbye is for the best, I'll sail this ship alone."のCDに入っている文を出し、これを動詞が“現在形”であることから、【仮定法現在】と解説していますが、これでは中学で習う副詞節で現在形を用いる形がすべて、仮定法現在となり、【時、条件を表す副詞節だから現在形を使う】という文法事項とどこが違うのか、これも理解不能になってしまうと思います。仮定法現在とは、『現在形ではなく“原形”』を使わなければならない形の英語のことをいうのが一般的でしょう。
他にも多くの疑問をはさみたくなる記述が散見されます。いわゆる「くじらの公式」について “ただ、はっきり言ってこの構文は大学入試以外で見たことがありません。” とありますが、もしこれが本当なら、失礼ながらかなり英語に触れる量が少ない方だと感じます。
(ちなみに今年の京大入試にもくじらの公式と仮定法現在を含んだ以下の和訳問題が出されました)
『If rational examination revealed that we had been unfairly treated by the community, philosophers recommended that we be no more bothered by the judgement than we would be if we had been approached by a confused person bent on proving that two and two amounted to five.』
(recommended that we be の be が仮定法現在)
生徒の負担を軽くしたい、効率を上げてやりたいという意図で、なかなか良い記述もたくさんあるだけに、残念な一冊になってしまっています。同じ文法説明なら、ドラゴンイングリッシュの竹岡広信先生の著作の方に軍配を上げざるを得ないと感じます。
http://tokkun.net/jump.htm
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もう一点はIrishさんがご指摘のように、国全体の英語教育の方向性を考えたり、一人一人が自分にとって英語の有用性を再考してもらうのが今の時代に必要だと感じております。これからもお付き合い下さい。
要するに、数学の公式とは違って、文法は常に後追いですから、例外とか考えの違いがあってもOKなんですね。
例えば5文型というのは、便利だからあるんですけど私は自分の生徒には6文型として、分けて教えています。外国の専門家には17文型とか25文型とかいう人もあるそうです。
ですから、先生方それぞれの考え方がある程度違っていても、仕方ないのですが、大学受験をめざす生徒たちが一番理解しやすい方法はこれだ!と言って、みんな本を書いたり、授業をしたりするわけです。
塾のテキストではうまくいかないので、今井宏の英文法入門、ドラゴンイングリッシュ、英文法完全制覇どれをがいいんだか‥僕は簡単な長文を読んでやるやり方を教えられたので英文法はアナがあいてます。
何かいい参考書ありますか?
音読がいいと思って英文法完全制覇にしようと思ったのですが、ブログ見てたらあまりよくない気がしてきて…先生には今井宏の英文法入門を勧めれました…
ドラゴンイングリッシュは今からでみにななるのか…頭がパンクです↓↓↓ こんな投稿してもいいんでしょう? 駄目でしたすいません。
http://blog.goo.ne.jp/tokkun-book/e/dbcd49d7cf9a3d407f98698ddda25484
で書きましたが、良い参考書はいくらでもありますが、それが万人に良いという参考書はありません。使い方次第なんですね。本当は具体的にアドバイスしたいのですが、それには浪人一年生さんの学力や、志望校の出題傾向を知らないとできないのです。
本書は残念ながら、どなたにも薦められません。単純な間違えが多すぎますから。
はっきりしているのは、今、自分の学力と過去問で文法というのがどれほど大事か、今から本当に新しい本で学びなおす必要があるのか、冷静に分析しなければなりません。
極端なことを言えば、この時期なら文法を捨てることだって考えなければなりません。とにかくここからは常に『時間との戦い』です。
文法を今から学びなおして、果たして何点得点が増えるか、過去問とにらめっこしながらよく計算してみてください。ひょっとしたら、口語表現やイディオムの丸暗記の方が得点力は上がるかもしれませんから。
文法を完璧にやるには時間が足りませんし、入試では満点を取る必要はまったくありません。自分があとどこで得点できるか、慎重に判断しましょう。
質問はいつでもOKですよ。
とにかく、何の本を使うかということは、正確な現状分析がないとダメなんです。
こんなブログをみつけたので、お知らせします↓
〔受験勉強法ブログ〕
確かこんな名前だったと思います。何かの参考になれば幸いです。あともしこのブログを見る機会あれば、見た感想が聞きたいです。プロのひとはこういうのどう思うのか知りたいだけで、けしてブログの宣伝ではありません。
ところで、ご紹介のブログ、検索したのですが、いくつも出てきましたので、どれか分かりませんでした。
ブログのURLを教えて下さい。こちらにコピー&ペーストしてもらえれば、リンクになります。
これでいけるとおもいます。
参考書のことなのですが、今井宏の英文法入門を買いました。塾の先生(英語のせんせいではないですが)の推薦参考書で出版出版社が他社(代々木)だから、生徒に勧めるのは、やめてたらしいのですが卒塾した人に
「先生それはおかしいですよ」といわたらしく、今年は薦めてました。絶版なのか探すのには、苦労しました(笑)結果はどうなるかはわかりませんがいい報告ができるようにガンバってみます。 こんなコメントをここに書き込んでよかったでしょうか? 紹介されている本の内容に関係ないこと書き込む場所があれば、そちらの方にかくようにしますが。
ところで、ご紹介していただいたサイト、おもしろいですよ。ただ、あくまで参考にとどめるべきでしょうね。勉強の仕方は人それぞれですし、残り期間を考えると、できることは限られます。基本的に私は、生徒を知らずに参考書を薦めるのは、かなり慎重です。どんなすばらしい名著と呼ばれるものでも、その生徒の学力と志望校、さらに他の科目との時間配分、薦めるタイミングによっては、最悪の結果を招きかねません。
今井先生の著作はすみません、知りませんでした。アマゾンでチェックしましたが扱っていませんでした。
入手できればコメントしたいんですけどね…。