本書もいろいろな高校で薦められいる参考書で、実際に、当教室でも持っている生徒が結構います。著者の並外れた英語力を感じさせる良い本なのですが、使い方が非常に難しい。
英語の参考書をどう使うのか…。
『ターゲット』 や 『DUO』 あるいは極めつけは 『キクタン』 のような単語集なら、何の問題もありません。徹底して効率を優先した暗記専用の本ですから、片っ端からページをめくって覚えるという社会科の勉強に似ているかもしれません。
ところが同じ英語の参考書でも、それが “文法書” となれば、今度は逆に、数学的な理屈を納得させるためには、じっくりゆっくりわかるところから繰り返し読んで、問題などを慎重に解きながら、読み進める必要があります。
英語という科目のおもしろさと同時に、難しさは、社会科的なのか数学的なのか、その微妙なところにあります。どちらかだけでも集中的に努力すれば、確かに相当程度マスターできるわけですが、そのかわりどちらかが中途半端だと、決してパーフェクトにはならないという感じでしょうか。
一冊の参考書が、読み流すだけで、英語の全体像を生徒につかませようとするのか、または、繰り返し読ませて文法を極めさせようとするのか、暗記してセンスを磨くためのものなのか…。センターレベルか超難関レベルか、さらにその上か、などなど、筆者や学習者のねらいもさまざまです。
いつも申し上げるように、万人に最適な参考書はない!ということの典型だと感じさせるのが本書です。
構成から見ても、本書は“文法書” という分類になると思うのですが、文法事典とまではいかず、書名には、『総合英語』 とあります。つまり、総合的に…、文法の初歩の初歩から載っているのですが、非常に高度なイディオム、口語表現まで、“発展学習” として暗記専用の付録のように付いており、どこに重点をおいているのか分かりません。しかも、どちらもそれが本書の “売り” なのですから。
いずれの項目でも、まず分かりやすい “基本例文” を太字で挙げています。とても易しい文を“あえて”選んでいます。一番最初、第1章『主語と述語動詞』 に登場する二つの英文は
(1)My mother is a very good cook.
(2)The old man died last week.
このレベルから始めてくれています。
私も一流大学を目指す受験生のクラスでさえ、“あえて” “わざと” 中学生レベルの英文だけを使って説明することが多いので、本書が文法に限定した参考書なら、むしろ大歓迎で何の問題もありません。
ところが、本書はこの基本例文を暗唱するよう勧めています。はっきり言って、高校生がこれを暗唱する必要はまったくありません。仮に文法が苦手な大学受験生が暗唱するとしても、その後にある “活用例文” のところでしょう。
(1)He lay on the grass.
(2)Tom and I are good friends.
(3)What happened last week? など…
(1)は入試で定番の、lieーlay-lain (lay-laid-laid または lie-lied -lied) などの活用を叩き込む。(2)はトイックやトフルでも頻出、大学入試の誤文訂正でも中心の、SVの関係に “I are” と言わせて注目させる。(3)は疑問詞が主語になる場合のつながりを意識させる意図ですね。これなら英語が苦手な生徒に対する、著者の英文選びのセンスがものすごく光っています。
そういうところだけに的を絞った一冊でしたら、本当にすばらしい参考書になったと思います。
筆者の山口俊治先生は、『山口英文法講義の実況中継 (上・下)』 を読めば分かるように、文法解説の名人と言っても良いですし、本書にもところどころで、その片鱗が見て取れます。
しかし本書を受験生が自分一人で、短い時間内に偏差値を上げるという目的で使うとすれば、あまり効果は期待できないでしょう。やはり高1あたりから、じっくり使うための内容です。
学校の先生などの指導の元で、授業と平行して使うか、一番良いのは、これから英語の先生や塾講師になろうという人が自分の英語知識を再確認または総整理するという利用法ではないでしょうか。
短時間で偏差値を上げるというのが目的で、同じ著者の参考書を選びたい生徒なら、まだ、実況中継の方が良いだろうと考えます。
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個人的に、ああいう「単色」「重い」「読む気がしない」みたいな感じの、あの文法書独特の雰囲気が好きで、全く嫌気がさしません。
まぁ、それにしても、文法書は調べるものなので、読み尽くすというのは無駄が多いでしょうね。
そういえば、前の記事に桐原学校専用教材の話があった気がしたのですが、ウチの学校のグラマー教材は桐原でしたよ。forestも貰ったのですが、個人的に漫画的なところがあいませんでした。
辞書でも、文法書でも合う、合わないというのは世間の評判とは関係なくあります。例えばジーニアスはあれほど名声を得ていますが、個人的には三省堂の方がずっと好き。
コンプリートも嫌いではないので、付箋を貼って、読み通しました。フォレストは良い本ですが、僕もあんまり…(笑)。