記憶喪失というのは、時々、テレビドラマや小説で取り上げられますが、みなさんのまわりにそういう方がおられるでしょうか。生徒の中には、単語をいつまでも覚えず、ついつい 『おいおい記憶喪失か?!』 なんて叱っちゃいますが、本物の記憶喪失は想像を絶しています。
本書は事故で記憶喪失になってしまった18歳の若者と、その母親の手記です。現実とドラマではかなり違うようです。
バイクで交通事故に遭った筆者が、一命は取りとめたものの、記憶喪失になってしまいます。意識はしっかりとして、会話もぎこちなくできるのですが、友人、恋人、自分の名前、家族すら忘れてしまいます。
それどころか、もっと生理的な、食べること、寝ること、トイレに行くというようなことすら、理解できなくなってしまい、まるで人生をゼロからやり直すかの様子です。そこから家族と本人の想像を絶する苦闘が始まります。本人よりもむしろ母親の手記に心打たれました。(分量としては少ないのですが)
事故などで、体に障害が残ってしまうのも痛々しいのですが、記憶を奪われてしまうというのも同様に残酷です。自分の愛する子どもが自分を他人のような目で見たら、いったいどう感じるのでしょうか。
いかにして記憶を取り戻すのか、記憶喪失と戦いながらも、何とか大学に復学をはたし、最後は立派に染物職人として自立するという、12年間を描き、前向きなエンディングではあるのですが、本当にこんなことがあるのかという驚きの一冊でした。
本人、家族の言葉、姿を通して人間の成長の過程が改めて確かめられます。私が読んだのは単行本で、2001年に出され、現在は文庫本になっておりますが、私はその後の筆者の様子も知りたいですし、母親の手記をまとめたものが、いつか出版されて欲しいとも思います。
子供が読んでも大人が読んでも興味を引かれる内容だと思います。そして、やはりどこまでも、人間というのは社会的な動物であり、社会や家族によって、生かしてもらっているんだな、とか、人間は記憶によって生きているんだなということを痛感しました。
http://tokkun.net/jump.htm
ぼくらはみんな生きている―18歳ですべての記憶を失くした青年の手記幻冬舎このアイテムの詳細を見る |
『僕らはみんな生きている』 坪倉優介
幻冬社:229P:520円(文庫)
P.S. 記憶喪失にあこがれることはありませんか? 人は誰でも、忘れてしまいたい記憶もたくさんあるでしょうが、記憶を選別することはできませんね。そういう記憶を持って生きていくのもまた人間らしいんですね。
■■ お読みいただきありがとうございました。ブログランキングです。よろしければ、1 クリックしていただけると大変ありがたいです ■■
愛知県はまだ暑いでしょう。東京は昨日今日すっかり秋の気配です。娘さん、朝ごはんしっかり食べてますか(笑)。
うちの息子、娘は食べすぎです(笑)。
読みたい本です。