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精神科医師のブログ。
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ノロウィルスの集団感染

2012年04月20日 | Weblog
安曇総合病院内でノロウィルスを原因とする食中毒が発端と考えられる集団感染が発生した。

長野県からプレスリリースが出され、ニュースや新聞でも報道された。
「病院は自主的に消毒した」ってなんだ!?
ところで何故、院長名ではなく長野厚生連の理事長の名前で公表されているのだろうか?
確かに今回の件でも院長の動きはよくわからなかったが・・。

4月10日夜に病院に残って仕事をしていたら精神科病棟の離れた部屋にいる複数の患者さんが同時多発的に吐き気や下痢、腹痛を訴え診察した。
どういうことかと思っていたら、翌日にはさらに数人が同様の症状があり、他の病棟でも散発的に同様の症状の人がいたことで給食からの感染が疑われた。
幸いにも今年のノロウィルスは1日程度の嘔吐、下痢、発熱の有症状期間で軽快していったので感染者も重症化することなかった。

保健福祉事務所も入った調査の結果、患者や調理師の複数の人の便からノロウィルスが検出された。
ノロウイルスに感染した調理師が、ウイルスが手についたまま調理し、食品が汚染され、その食品を食べた人が感染したということのようだ。
本年4月のホテルニューオータニの宴会場での食中毒の事例と同様である。
この事態で院内は対策会議が開かれたり、紙皿になったり、新規入院やお見舞いや、感染者の移動の制限をお願いしたり管理職が謝ってまわるなど大変であった。
今週や来週に予定されていた病院のお花見や、病棟や医局の新人歓迎会などは自粛され延期となった。

救急外来などでも胃腸炎は散発的に流行していたが、油断もあったのだろう。
ノロウィルスはいわゆるお腹の風邪の一種でもあるが、100個程度のウィルスでも感染し、吐物が乾いて空気中を漂ったものを吸い込んでも感染するなど感染力が強いのが特徴である。まるで空気感染だ。恐ろしい。
ノロウィルスはアルコール消毒では不活性化されないので吐物は次亜塩素酸をつかって処理しなくてはならない。
以前いた病院で老人保健施設でノロウィルスが大流行したときは片っ端から点滴し、汚染物は密閉して処理するなど収束するまで大変だった記憶がある。
全然のろくないウィルスだ。むしろ呪いのノロウィルスである。

ときどき救急外来でもノロの検査をして欲しいという方が来ていたがこれまでは自費診療であり、特に希望のある場合にのみ集団内に流行した時にのみ一部に検査をしていた。
今年の4月から3歳以下の小児と65歳以上の高齢者、悪性腫瘍や免疫抑制剤を使用しているなど免疫低下者に関してのみ便中ノロウィルス迅速検査が保険適応となった。
ノロだからとわかったからといって特別な治療があるわけではないが・・。補液や脱水予防、整腸剤投与、五苓散の投与くらい・・。あとは感染が広がらないように注意することくらいか。

ノロウイルスに関するQ&A


今回はICT(Infection Control Team)の専任看護師が活躍したが、感染対策を徹底しプレコーションなど感染予防の知識を広めなくてはいけない。
私も病原体のインフェクシャスドクターにならないように気を付けなくては。

高齢者介護施設における感染対策マニュアル