リカバリー志向でいこう !  

精神科医師のブログ。
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安曇総合病院・再構築マスタープラン(案)

2012年04月23日 | Weblog

安曇総合病院では宮澤県議や中川院長が主張するように地域医療再生基金を原資の一部としてリニアックを導入しICUを新設するのかどうかという議論は未だ決着がついておらず、どのような病院にしていくのかという大方針が決まらないためいつまでたっても再構築が先に進めない状況が続いている。
何のためにこれまで再構築検討委員会をつくり1年以上かけて議論してきたのだろうかと思う。
前回の全体の委員会で院長がリニアック導入の方針を強行しようとして反対意見がでて紛糾した時に、新たなワーキンググループをつくりそこで検討するみたいな話も出た。
リニアックの案が通るまでいつまでもグズグズとこういうことを続けるのだろうか。

病院の将来を、だれがどのように決めるのかということがまったくもって不透明だ。
そもそも臨床をほぼしていない院長とは違い、職員は日々の日常の臨床業務、直接ケアに忙しく、再構築といわれてもリアリティが持てない人がほとんどである。
正面からディスカッションすることなく秘密裏にすすめられてきたため、残念ながら、まだ全職員的な議論にもなっているとは言いがたく地域の方の関心も薄い。
このような個人的なブログで個人的な意見を述べるのが精一杯だ。

院長の提唱する「安曇野ホスピタリティ」というBuzzWordのもと、理念やビジョンのあやふやなまま(いや、本気で大学病院や佐久総合病院のような大病院をめざしているのだろ。)迷走をつづけ、医療周辺産業であるコンサルタントに勧められるままにバランスドスコアカードや原価計算、医師貢献度手当(産みだした診療報酬や、サマリーや診断書の期限内提出数、会議への出席、学会発表、院長裁量!?などで比例して医師に手当て入る成果主義を取り入れた仕組み・・。院長に対する貢献度?)、サービスを超える瞬間プロジェクト、目標マネジメントみたいなことに付き合わされてもモチベーションは下がる一方なのではないか。(少なくとも自分のモチベーションは下がる。院長のヒアリングで毎回言っていることではあるが・・。)

もう少し、まじめに普通に丁寧に患者さんと向かい合おうよと思う。

聞くところによると院長としては2,3人の人でこっそり作ったマスタープランをいくつかあげて一部の職員で投票してきめるというようなつもりのようだ。
しかし、せっかくなら、みんなでワイワイと夢を語りながらマスタープランをつくり形にしていきたいものだ。

この様な状況ではあるが、ひろく職員や地域住民の議論のたたき台としビジョンを示すために、私も一つのマスタープラン(案)を作成してみた。
この案は、これまでこのブログでも述べてきたような内容をまとめたものであるが現状の延長線上に、それほど無理なくステップアップできる内容であると思う。
ご意見をたまわりたい。

先日、私も所属する再構築検討委員会地域医療部会でこの再構築のマスタープラン(案)が検討された。
委員会ではこの案に対して、各部署の委員からさまざまな意見があがった。

再構築マスタープラン(案)の概要

「ささえる医療」を再構築の中心コンセプトとする。高齢者を中心とした安曇病院周辺の質の高い一般医療を担い、精神医療、整形外科ではより広域の医療を担う。将来的にDPC病院を降りる可能性も見据え、在宅医療支援病棟(+緩和ケア)と回復期リハ病棟、整形外科病棟、一般病棟、精神病棟と目的を絞った5つの病棟へと再編し、さらに自前の老人保健施設を併設したケアミックス型とする。病棟の新築をまたず、できるところから始める。安曇野赤十字病院や市立大町総合病院、地域の医療福祉機関も含めネットワークを組む。弱者を守る医療文化を形成し、事業者を超えた地域医療再編の一つのモデルとして全国に発信する。

安曇野市北部、大北地域の医療体制について

人口が少なく松本医療圏に隣接した大北医療圏で3次救急医療、高度手術やがん放射線治療などの高度急性期医療までの自己完結を目指すのは現実的ではない。急性期医療においては松本医療圏の基幹病院、特に隣接する安曇野赤十字病院との連携を強化することで対応する。

市立大町総合病院の医師不足、経営難
→医師不足で6~7割程度まで病床稼働率の低下。4月から内科の入院を48床のみに診療制限。その影響が他の病院に出始めている。

市立大町総合病院、医師不足から再度診療制限へ

JA長野厚生連安曇総合病院の病棟再建、再構築
老朽化した病棟を早急に建て替える必要性があるが、政治的な思惑が交差しいつまでたっても再構築の大方針がきまらず長引くことで院内のモチベーションの低下が懸念されている。

なぜ、安曇総合病院への放射線治療機器という話しに?


大北医療圏で急性期医療をやらないというわけではなく、2次救急の受け入れなどは今よりもう少し頑張る。しかし高度なインターベンションに関しては集約化のな流れには逆らえないため無理はしない。(やるとすれば地理的には松本医療圏の基幹病院からより遠い市立大町総合病院がベターなのだが厳しいか・・。)
しかしいつまでもゴタゴタしていると医療崩壊は一気に進み今のレベルの医療ですら維持できなくなる可能性もある。


内科・外科を中心とした急性期一般病棟(45+HCU5)

内科、外科を中心に多目的に使う混合病棟とする。HCUを設置し、術後の患者や救急外来からの緊急入院を受ける。内科は総合診療方式とし、一つのグループとしてチームで診療をおこなう。この病棟で研修医教育も中心となっておこなう。急性期治療後、集中的なリハビリやケアが必要な患者は、回復期リハ病棟や在宅医療支援病棟へ速やかに転棟する。


内科でも医師間でコミュニケーションをとってチームで診療をおこないクリニカルパスを使うようにしてほしい。


整形外科を中心とした一般病棟(45)

当院の得意分野である整形外科の術後や入院に対応した病棟として特に脊椎や膝関節の手術などでも質の高い医療を提供する。長期のリハの適応となる患者に関しては回復期リハ病棟に転棟する。


整形外科ではクリニカルパスが活用されている。回復期リハもあれば病床数はもっと少なくても良いかも。

リハビリテーションに特化した回復期リハビリテーション病棟(45)

脳卒中、脊髄損傷、頭部外傷、大腿骨頚部骨折、肺炎、外科手術後などの廃用症候群、それに準じる病態など集中的なリハビリの適応となる患者にチームアプローチで原則1日9単位のリハを行う。発症から2ヶ月以内に入棟、疾患群にもよるが最大90日(大腿骨頚部骨折、廃用症候群)~180日(重度の脳卒中)とする。ADLの向上と自宅復帰率がアウトカムになる。松本地区の急性期病院から適応となる地域の患者を積極的に受ける。リハビリテーションセンター鹿教湯三才山病院からもノウハウを得て質の高い回復期リハ病棟を目指す。

安曇総合病院でも一時期、回復期リハ病棟を運営していたことがあったが、都合の良いバッファとして使われ、リハのゴールを迎えた方でも施設に行くまで規定の期間めいいっぱい入院するなどで、本当にリハビリが必要な地元の方が入院できず遠方のリハ病院に行くというようなことがあった。そういうことがないような運営が必要。
経鼻頚管がついて転院してくるなど、かなり早期から重度の人が転院してきての長期のリハニーズはある。


最後の強がり
回復期リハ病棟の使命

高齢者・がん終末期の方と家族の生活を支える在宅医療支援病棟(40+緩和ケアユニット10)


在宅医療支援を要する方は入退院を繰り返すものと考え、それに対応した仕組みを提供する。長寿医療研究センターが提唱する在宅医療支援病棟のコンセプトを取り入れる。当院でも力を入れている訪問看護と訪問診療をバックアップし、地域の二人主治医制を推進する。

・登録した方に対して訪問看護や訪問診療と連携し、急性期疾患、リハビリ、看取りやレスパイトも含めた、福祉施設では対応困難なあらゆるニーズに対して入院医療で関わる。 
・入院適応や大方針の決定(胃ろうの適応、看取りなど)には原則、登録した在宅主治医がおこなう。(丸投げはさせない代わりに一緒にみていくスタンス。)
・入院主治医は疾患や病態ごとで変わりうるが、プライマリナースを固定し、退院支援を連携の中心となって行う。担当者は一度は自宅に訪問することを原則とする。退院時などには在宅主治医も加わり時間を決め構造化した尾道方式でのカンファレンスを行う。

登録者は原則として安曇病院周辺の住人に限る。大町病院や穂高病院でも同様のコンセプトの病棟をつくるようにはたらきかけ在宅医療を推進していく。データを集積し、厚労省や中医協にも制度化を働きかけていく。病棟再建の際には在宅支援科(訪問診療、看護、居宅)の拠点も病棟に連続する場所に設置する。平均在院日数は2週間程度を目指す。退院時カンファはネットを使った遠隔会議も考慮。


ハードのみの議論ではなくネットワークをつくっていく仕組みとしてよい。
医療的に安定しても、なかなか自宅や施設に移れないケースがいつでも入院できるという安心があれば退院できるのではないか。本当に2週間でまわせるのか?収益性はどうか?医療療養型もあってもいいが、そこに入れば上がりという風になってしまう。
どうしても退院できない人はでるが、それに特化した病棟というのはなしで頑張って運営するほうがいいのではないか。
高齢者で意識がなくベッド上、胃ろう、呼吸器という状態にまでさせないような文化をつくるためにもこの様な病棟が必要。
全体を見た病棟をマネジメントは誰がするのか?精神科の医師も関わって欲しい。やる気のあるスタッフを集め根気強くやることが必要。
いい環境の土地なので広域で緩和ケア病棟のニーズはあるかもしれない。

「地域での生活を支え抜くケア」第1回北アルプス地域ケアシンポジウム


広域の精神医療センターとしての精神科病棟(90)

90床の精神科病床(開放45床、閉鎖45床(うち老年期15床))を多目的に利用。mECTやクロザピンによる治療も積極的におこなう。アルコール依存症の入院プログラム治療、身体合併症者、思春期、BPSDの激しい認知症などの入院は広域から受ける。長野厚生連立の「こころのケアセンター」として人材育成を担う。院内外へのコンサルテーション・リエゾン。メンタルヘルス、アウトリーチと相談支援体制、就労支援、地域づくり支援を強化する。


認知症や精神障害者は精神科病棟でというのではなく、身体合併症もあるのだから病院全体、地域全体でみていくような雰囲気にしていきたい。


コア・コンピタンスである総合病院精神科病床。
認知症の地域ケアと総合病院の精神科病床


健康管理増進、地域疾病管理、老人保健施設

富士見高原病院などからノウハウを得て本来の老人保健施設を運営する。健康管理、増進を推進し糖尿病やCKD、心房細動などに代表される慢性疾患の地域疾病管理をベストプラクティスを共有し、Webツールなども活用しアウトカムを設定した上で多職種・多職域で行う。地域循環連携パス、お薬手帳から発展したパーソナルヘルスレコードなどに発展させていく。
職員や地域住民も利用できるジムや温水プールの設置も考慮する。がんの外来化学療法や相談事業を推進する。


地域循環型の医療連携

近隣の老健も特養化し本来の機能が果たせていない。老健があれば病床は少なく出来る。余裕の出た人員で老健を作れる。
プールは是非欲しい。市民や職員にも有料で開放したい。
ハードウェアよりもネットワークを作って地域全体でみていく仕組みであり現実的。
地域でネットワークを作ってベストプラクティスを共有する仕組みはいろんな慢性疾患で応用ができる。
ICTの活用というのもひとつの重要なテーマ。
それぞれの病棟が特色を持って競い合いつつもコミュニケーションをとり、患者さんにとって一番良い場所で治療できるような風通しのよい雰囲気にしていきたい。
外科手術など急性期医療が集約化されていく流れは今後もつづくだろう。急性期医療のほうが上というような雰囲気はまだあり、あれもこれもやっていないと外科の医師などが来ないという院長の意見もわからないわけではない。しかし地域のニーズご実情を考えると、たまたま専門的急性期医療をやれる医師が集まった時期には、それもできるような体制にしつつ、基本的には質の高い生活期医療を丁寧にやっていくしかないのではないか。
地域医療部会としてのマスタープランとして、院内外に問いかけていくことに決まった。
これも一つのたたき台にして財務上の試算も行い、より具体的なマスタープランを作っていきたい。

近々、院長からもマスタープランが出るらしい。
いろんな意見が院内外で広く議論されることを期待したい。


まちの病院がなくなる!?
安曇総合病院・再構築に関してのまとめ、その1
安曇総合病院・再構築に関してのまとめ、その2
大北地域の医療再編と安曇総合病院の再構築私案
目指すべきは大町病院と安曇病院の連携、協業、そして統合。

病院のリストラ