リカバリー志向でいこう !  

精神科医師のブログ。
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職員全体集会

2012年04月26日 | Weblog
このブログの地域医療再生関係の話題は人気のようで、あちこちからわりと反響もある。
病院職員や関係者にもこのブログは読まれているらしい。

本日勤務などで参加できなかった職員もいるので、今後も問題にならない範囲で経過のレポートを行なっていこうと思う。



さて先日、突然院長から全職員の自宅にこんなハガキが届いた。
「昨年度は若干の黒字となりました。これも皆様方の努力のおかげと感謝します。今年は病院再構築のマスタープランを作る必要があります。全職員一致して新たな病院に向けて歩み始めたいと思います。本年度もよろしくお願いします。
追記 職員全体集会のお知らせ。」

当院では誕生日や年末など院長(「サービスを越える瞬間プロジェクト」)からときどきこの様なハガキが届く。
こういう気遣いはうれしいね。?(^_^)



そして本日、職員全体集会が開催された。
例年、決算がでて新人職員が入るこの時期に院長×1や副院長×2、院長補佐×3、診療部長、事務長、看護部長などの幹部がスピーチを行って気勢をあげる集会だ。
ざっと計算して、250(参加者)×1500(平均時給)×1.5(時間)=約55万円のコスト。

「再構築に向けて元気の出る話が聞けるかな?」とワクワクしながら出席。(途中で救急外来によばれ中座したが)

年度初めでもあり、ハガキの効果もあってか参加者は多めであった。
しかし医局からの参加者はいつも少なく、例年、皆が元気になるようなスピーチをする副院長の二人は出張などで欠席であった。
(それを狙ったのかな?)

院長は期待を裏切ることなく、いつものように最初から経営の数字の話ばかりで、元気になる話、勇気づけられる話、取り組みの話はほとんどなかった。
収支や患者数、単科数を全体、科別に紹介していたが、数字で何を語らせたいのかもよくわからなかった。
こういう数字の詳細は事務管理部門が把握していればいいことであるし、話すとしても事務長が話すことのように思うが・・。
昨年度の収支であるが、主力の内科や整形の医師が抜けていた昨年の夏前の時期には入院患者も減って赤字になっており、一人医師がかけるだけで回らなくなる危うい綱渡りの経営だと思った。
事業利益ベースでは赤字で、最後の最後で特別利益、特別損益、補助金などで帳尻をあわせて若干の黒字になったとのことだが・・。
職員が増えて給与費の伸び率が高いが、それをカバーする収益が確保できていない影響が多いと分析されていた。

個人的には病院の規模の割に、患者に関わる時間を潰してのさまざまな会議(同じメンツばかりが出ている。)とか委員会とか原価計算とかBSCとかにコストをかけすぎていると思う。臨床がおろそかになり職員のモチベーションを上げられていないから収益も上がらないのではと思う?



「精神科病棟は入院平均単価が少ない」とかなり恣意的なグラフで示し精神科部門スタッフのモチベーションを下げる院長。

精神科病棟は身体合併症の患者さんも多く、またさまざまなレクリエーションやグループワークも行っているなど相当頑張っていると思うのだが、一般病棟以上の事をやっても構造的な問題で診療報酬が低くなる。
総合病院精神科病棟の診療報酬を上げるように厚労省や中医協などにも訴えていかなくてはいけない課題でもあるのだが。ここでこの様な形でだすというのは、精神科病床の削減を意図しているのだろうか?



そして、本日の目玉、今年度の目標と方針が発表された。

「病院再構築マスタープランの策定」・・・これは昨年と同じ。(;´Д`)

言い換えれば「どんな医療をするのか。しないのか。どこへ向かうか決める。」
それこそ院長たちの仕事だと思うのだが・・。


あとは「看護師の確保」「初期・後期研修医の確保」、「黒字収支1億円以上」
方針としてはBSCの推進、QC活動の推進、5Sの推進、勤務環境改善、禁煙活動の推進・・・。

たしかに収支安定化は大切なのであるが、「どんな医療をやるのか」というような話は最期までほとんどなかった。

院長補佐①の話は救急や医療安全の話だったそうだが、私が救急外来に呼ばれて中座したので内容不明。

院長補佐②は、がん診療部会の中間報告、クリニカルパスの話など。
「病棟建て替えのために40億が必要でそのためには新しい部門で患者獲得をする必要がある。放射線治療装置を補助金を得て導入するしかない。独自の試算では2年は赤字になるがその後は収益を生む。職員の協力があれば導入可能。」とさらっと述べていた。

コンサルタントの試算とも違うし、スタッフ確保の目処もたっていないし・・・。そもそも誰がやるんだろう?


診療部長は先日のノロウィルスの騒動の総括。
事務長は何故か農協や厚生連の歴史や病院理念の話。
「愛する人に対するように患者さんに向かい合いましょう」と抽象的な話であった。
看護部長は接遇や省エネや禁煙、院内保育所、ボランティアの話。
「タバコはやめ、服装に気をつけ挨拶しましょう」(^_^;)。大事なことなのだけど、なんだかなぁ。

全体的に抽象的、あるいは微細すぎる内容で現実的なビジョンが見えず個人的には残念な内容であった。
全職員にハガキで案内までしたのだから、本日何か発表があると期待してきた職員も多かったはずだが・・・。
昨年の全体集会で以降、再構築検討委員会などでの検討してきた各部会の案はこの場で公表されないのか?
(何故かがん診療部会のもののみコッソリ公表)
地域医療部会の再構築マスタープラン案も発表させてくれればよいのに。
職場全体集会は毎年、経営情報と病院のリーダーたちの考えを明らかにして士気を鼓舞し、広く議論をする場ではなかったのか?

数字と枝葉末節なことばかりで何だかはぐらかされたような気分である。
医師は自分の頭の中をスタッフや患者さんに対して常にオープンするのがよいと最近は思っているが、あいまいな医師の診たてと、治療方針を聞いた患者さんやスタッフの気分はこの様なものであろうか。




しかたがないのでシーンとしている会場の空気を最大限読んで
「マスタープラン(案)はどのような議論をされてきたのか?いつ発表するのか?どう決めるのか」
ということを質問したら、
「マスタープランはまだできていない。5月7日に公表して、それから議論して決める。決め方に考えがあるがここでは公表しない。最終的には職場運営委員会で決める。また全体集会を開くこともありうる。」
とのことらしい。

連休明けの5月7日は臨床業務で忙しいことが予想されるのであるが、どうして職員をたくさん集めたこの場で経営陣の考えを明らかにして議論しないのだろう?

最後に労働組合長が「再構築に真剣にならなかったらどんどん進んでしまうが、赤字はみなさんの肩にふりかかってくるのですよ。」と言っていたが・・・。

「この病院の将来は大丈夫だろうか?」と職員の多くが感じたのではないか。

まずは情報公開をきちんとして、病院の将来像に関して皆で議論できる場をつくってもらいたいものだと感じた。