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精神科医師のブログ。
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精神神経学会in札幌

2012年06月03日 | Weblog
5月24日~26日、札幌で開催された精神神経学会学術総会に参加してきました。



早割45で購入した松本~札幌のFDA(フジドリームエアライラインズ)で北海道入りしました。
真昼間の時間帯の移動で時間を有効に使えない殿様ダイヤですが、安曇野からセントレアや羽田までいくのも3時間以上かかるので仕方ありません。
同じ飛行機には県内の顔見知りの精神科医の先生もけっこういました(^_^;)
エンブラル社製の小型ジェットで小ささを感じさせない快適な機内でした。
搭乗するまでの荷物検査などが少々面倒くさいですが飛行時間自体は1時間半弱程度で新千歳空港まであっという間でした。



今回の学会は大会長の専門でもある依存症のセッションがとても多かったです。
それとの発達障害のセッション・・・。
それらと比べて気分障害や統合失調症などのセッションは少なめでした。



老年期精神障害(認知症など)の終末期医療のシンポジウムにも出てきました。

様々な学会などで、こういったことはテーマになっています。
わりと話しつくされたテーマではありますが、今回は、なかなかいいシンポジストを集めており興味深い話を聞くことができました。
しかし精神科医としてどうするのかという議論がほしかったな・・・。

認知症終末期のケア(特に胃ろうの適応について)は、

・認知症終末期では本人の意思決定が困難。
・家族は認知症がどのような病気か理解せずに混乱した中で治療選択が迫られる。


という難しさがあります。

そして家族の意思は本人の意思ではない(推定させる一つの根拠に過ぎない。)ということもあります。
丁寧に調査をしたところ認知症高齢者、一般高齢者の80%以上は、終末期の胃ろうを否定しており差がなく、認知症高齢者も「感じる脳」はあり、その意思は尊重されるべきであるという発表もありました。

認知症になる前、あるいは初期にAdvanced directive, care planningが推進され一般的になれば、本人、家族、治療者を守ることになるのでしょうが・・。

認知症は「Progressive lethal disease」であり、死への過程の一つとしての肺炎や尿路感染あります。
私も「認知症になった時点で、3倍くらい老化が早く進むようなイメージ」とお伝えすることもあります。
こういことを家族とも共有出来ればいいのでしょうね。

認知症ケアは初期中期はスピリチュアルペイン、末期は身体的苦痛の緩和が大切となります。
精神科では進行する混乱期のあとの看取りまでの継続的なケアができない場合もあるのではないでしょうか。
精神科医は看取りは慣れておらず、胃ろうをつくる場合が(他の科の医師より)多いというデータも示されていました。

胃ろうの積極的な適応は脳卒中の亜急性期や脊損、ALSなどであり、さまざまなエビデンスでも認知症終末期での経腸栄養は肺炎の予防や本人の苦痛除去の高価はなく、Risk/benefitはRiskに傾くデータが多く認知症終末期には胃ろうは適応にはならないということのようです。

さまざまな学会がガイドラインを出すようになりました。
しかしこれらのガイドラインが法的に医療者を守ってくれるものではないそうです。
ガイドラインはどうであれ、「自発的に摂食できないものの経管を差し控え、中止したら殺人罪?」というのは、法律にはそうなってしまう危険性はあります。
一例一例で丁寧に関わると同時に、社会全体でもっと議論していく必要があるでしょうね。


その他にも、さまざまなシンポジウムやセッション、教育講演などで目移りしましたが、依存症、発達障害、老年期精神障害の終末期、統合失調症の早期介入、総合病院精神科、うつ病などのセッションに参加させていただきトレンドをつかむことができました。
認知症終末期での胃ろうの適応をどうするかという議論もありました。
総合病院精神科は構造的に経営も大変でどこも厳しい状況ですが、公立病院の単科の病院を廃止して総合病院に病棟をつくるなどの流れもあるようです。

一般演題で「発達障害を背景に持つ依存症の3症例」という演題で発表をさせていただきました。
依存症と自殺予防でご活躍の松本俊彦先生が座長をしてくださり大変勉強になりました。



夜の部などでは全国から集まった同業者や知り合いの先生とも交流して様々な情報交換することが出来ました。

 

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