玉川上水みどりといきもの会議

玉川上水の自然を生物多様性の観点でとらえ、そのよりよいあり方を模索し、発信します

講義録2 生き物のつながり 1.訪花昆虫 <訪花昆虫の2つのタイプ>

2016-04-25 02:03:35 | 生きもの調べ
生き物のつながり 1.訪花昆虫 (2016.4.23、武蔵野美術大学)

 今日と明日はこれから玉川上水で調べてみたいと思っていることを話します。今日は訪花昆虫、つまり花に蜜を吸いにきて、体に花粉をつけ、別の花に移動して授粉する昆虫の話をします。訪花昆虫が花を訪れるように、動物と植物がつながりあうことを「リンク」と呼ぶことにします。紹介する話題は、いずれも私が麻布大学で学生とともにおこなった卒業研究です。私は新里先生や韓先生のような昆虫の専門家ではありませんが、昆虫は好きなほうで、子供の頃は採集や飼育に夢中になった昆虫少年でした。

<訪花昆虫の2つのタイプ>
 昆虫を魅きつける花を虫媒花といいます。さまざまな花があり、さまざまな訪花昆虫がいますが、これには大きくいって2つのタイプがあります。
 ひとつは花の形が特殊で、細長い筒状だったり距という花の一部が細長く突出したりして、その奥に蜜があるため、それでも吸蜜が可能なチョウやハチしか利用できないものです。キク科やクサギ、


特殊化した花から吸蜜できるチョウのストローのような口(左)、ハチの花を開ける口(中)に対し、皿のような花からして吸蜜できないハエのスタンプのような口(右)(「昆虫と花」、F.G.バルト、1997より)


距をもつ花:ツリフネソウ、ムラサキケマン ムラサキケマンの距は内部が見えるように切開

 
ツリフネソウに来たマルハナバチの1種

 これに対して皿状の花は「誰でも」吸蜜ができるので、口が特殊化していないハエやアブでも訪問します。キツネノボタンやコナスビなどはその例です。


皿状の花:ヘビイチゴ、ミツバツチグリ、キツネノボタン

 訪問者を限定すれば受粉の確率が下がるように思えるのに、なぜ特定の昆虫だけを魅きつけるのでしょう。「誰でもどうぞ」型の花の場合、その花粉をつけた昆虫が次に同じ種の花に行ってくれる保証がありません。そうなると蜜も花粉も無駄になります。これに対して「特定客限定」の場合、その昆虫が同じ花に訪問する可能性が大きいことがわかっています。結果的にはそのほうがよいということもあるのでしょう。花と昆虫の組み合わせは非常に複雑で簡単な答えはありません。ひとつの花が大群落を形成していれば、どちらでもよいかもしれませんし、花を作るのにコストがかからなければ皿型でも不利にはならないかもしれません。いずれにしてもこういう違いがあるということです。
 私はこれを高級バーと一杯飲み屋にたとえましたが、グルメ向けの高級フランス料理レストランとファストフード店にたとえた人もいます。


特殊化した花は高級バー(左)に、皿型の花は一杯飲み屋(右)にたとえられるかもしれない。
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