tetsudaブログ「どっぷり!奈良漬」

コロナも落ちつき、これからが観光シーズン、ぜひ奈良に足をお運びください!

オーバーツーリズムか閑古鳥か/観光地奈良の勝ち残り戦略(128)

2019年06月26日 | 観光地奈良の勝ち残り戦略


こんな記事が新聞やテレビで報じられた。奈良新聞は1面トップだった(6/18付)。「奈良のシカ 深刻なビニールごみ誤飲 レジ袋など規制へ 奈良市、条例化検討」。リード文には、

国の天然記念物「奈良のシカ」が、消化できないビニールごみを大量に食べて命を落とすケースがあることから、奈良市が奈良公園や周辺の店舗でレジ袋の使用を制限するなど、条例化を含めて検討に乗り出すことが17日、分かった。ビニールごみの誤飲には、増え続ける観光客の認識不足もあるとみられ、外国人への啓発を含め市が実効性ある手立てを打ち出せるか、注目される。

奈良公園、東大寺参道から大仏殿、東向商店街などは、いつも国内外からの観光客でごった返している。地元民によると「奈良公園の鹿の糞は、もともと硬くてコロコロしていた。しかし最近の糞は、べっとりした軟便になっている」。映像作家の保山(ほざん)耕一さんから、こんな話も聞いた(6/16)。「春日大社の砂ずりの藤、今年は最悪でした。参拝客が写真映えをねらって花を顔まで引っ張るため、花がボロボロになっていました」。

これは「オーバーツーリズム」、つまり「観光地が耐えられる以上の観光客が押し寄せる状態(過剰な混雑)」(ジャパン・ワールド・リンクのサイト)であり、それが観光公害を引き起こしているのである。放置ゴミが激増し、ついに2017年に「河川でのバーベキュー禁止」に踏み切った天川村の事例もこれに当たる。

しかし一方で、観光客が少なくて閑古鳥が鳴いている地域(アンダーツーリズム)は、県南部などで枚挙に暇(いとま)がない。天川村も、夏場のキャンプの時期やみたらい渓谷が色づく紅葉シーズン以外は閑散としている。だからキャンプ客を今まで以上に誘致しようとしたのだろうが、それが裏目に出てしまった。

「では、奈良公園などに来る観光客を南部に誘致すれば良いだろう」という人もいるが、そうは問屋が卸さない。以前、当ブログでも指摘したように、奈良公園などに来る内外の観光客は、京都や大阪に来る「ついで」に立ち寄っているのである。奈良は日帰りで済ましたいのだから、「ついでに吉野で1泊を」とはならない。

県の関係者によると「奈良公園ではなく、平城宮跡とか西ノ京に誘致しようと、レンタサイクルなどをPRしている」とのことだが、西ノ京だと、薬師寺と唐招提寺を結ぶ道が細いのに人通りも車通りも多いので、とても危険だ。近鉄利用(西ノ京駅から徒歩)を薦めるしかない。

あと可能性があるのは「ぐるっとバス」で平城宮跡に誘致することくらいか。平城宮跡は近鉄大和西大寺駅から歩けるから、道標を充実させれば誘導できる。あとは宮跡内のガイドだが、これはNPO法人「平城宮跡サポートネットワーク」さんに頑張ってもらうしかない。

冒頭に貼った動画は、JR東海の2019年春のキャンペーン「長谷寺と奈良大和四寺」のCMである。四寺とは、長谷寺、室生寺、岡寺、安倍文殊院だ。県中部・東部のお寺をこのように紹介してくれるのは、とても有り難いことである。今年は和辻哲郎著『古寺巡礼』の出版100周年の年でもある。中南部のお寺に参拝者を呼び込むことも、立派な誘客である。

インバウンドの好調により、従来から指摘されてきた観光の「南北問題」が「オーバーツーリズム」と「アンダーツーリズム」という図式で浮き彫りになった格好だ。県南部誘致への新たな観光戦略が求められている。
コメント (2)
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