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新元号選定の経緯と中西進氏の思い/奈良新聞「明風清音」第20回

2019年06月25日 | 明風清音(奈良新聞)
新元号「令和」が万葉集の詞書きから取られたことから、万葉集がブームになっている。今朝(6/25付)の新聞を開くと、毎日新聞奈良版「やまと人模様」では井上さやかさん(県立万葉文化館指導研究員)が登場し、来館者が倍近くに増え「常連の方に加えて、若い人や小中高校生を連れた家族連れの新しい層が来てくださっている」「万葉集には古事記や日本書紀には書かれないような個人の感情が出てくる。現代の私たちにも通じる感情ではないか」「言葉は難しいけど、ああ分かると親しみを感じてもらえたら」と語っている。
※トップ写真は、奈良まほろばソムリエの会の「万葉講座」準備説明会の様子(6/9)

奈良新聞(6/25付)社会面でも「気鋭研究者が熱血指導 万葉文化館講座『万葉集をよむ』充実の内容で人気上昇中 4月の元号発表後、定員の倍以上が訪れ」の見出しで、同館の無料講座「万葉集をよむ」を取り上げ《「難しい」との声にも「その先に面白さがある」と熱血指導。急増する“ビギナー”に万葉集の魅力を伝えようと奮闘する》と紹介している。確かにあの講座は難しいが、レベルを下げずに継続するという。

NPO法人「奈良まほろばソムリエの会」も、7月以降、7人の講師陣により万葉集に関する講座を東京と奈良で計13回程度開催する予定だし、秋以降にはウォーキングツアーも計画している。そんな状況のなかで、奈良新聞の連載「明風清音」(6/19付)では「万葉集と令和の時代」のタイトルで、新元号発表以降の報道を紹介した。では最後に「明風清音」の全文を紹介する。

新元号「令和」が、万葉集の大伴旅人宅で行われた宴の歌を束ねる序文「梅の花の序」(巻五)の「初春令月、気淑風和」から取られたことから、奈良まほろばソムリエの会には、万葉集に関する講演の依頼をたくさんいただいている。秋には当会メンバーを東京に派遣して、全5回の講座を開く予定だ。新元号については本紙も4月1日の号外をはじめ様々に報じてきたが、同時代の記録としてここにまとめて紹介しておく。

4月2日付1面トップの見出しは《新元号「令和」出典は万葉集、国書初》。「元号に関する懇談会」有識者の発言が紹介されていて、林真理子氏は「令和が一番人気があったと思う。初めて国書から選ばれた。万葉集ブームが起こるのではないか」と、今のブームを言い当てている。記事中では、すでに《考案者は中西進氏か》と報じられている。

同日社会面には、奈良県立万葉文化館の記者会見の模様が紹介され、稲村和子館長の「これを機に多くの人に万葉集に親しんでもらいたい」というコメントを掲載している。なお5月11日付社会面には、同館に《4月の1ヵ月間に2万234人が訪れ、前年同期(1万2099人)の1・8倍》とある。中西進氏が同館名誉館長であることも、数字に影響しているだろう。

4月5日付社会面では、奈良大学文学部教授・上野誠氏の《新元号「令和」に寄せて》を掲載している。教授は梅花の宴で詠まれた歌の中から、よく知られる旅人の「我が園に梅の花散るひさかたの天(あめ)より雪の流れ来るかも」(巻五-八二二)を引き《(長屋王の変の翌年という)困難な時代を生きればこそ、歓びの時は、よき一日をみんなで楽しもうではないか、というのがこの宴に集まった人びとが共有していた思想である》とした。

5月11日付社会面では《中西氏事実上、考案認める》と報じ、中西氏が月刊『文藝春秋』6月号に寄せた《令和とは「うるわしき大和」のことです》という一文を紹介している。

文春の記事で中西氏は《『万葉集』という国書を典拠とすることにこだわったのは、非常に良かったと思います。元号制定は社会現象であり、お祝いなのです》《元号を大切にするのは、日本人のおしゃれ心です。実質的な意義は乏しくても、特色のある名前を付けたいと思うのは人間の好奇心があるから》。

《「梅の花の序」には中国の古典の影響があり、純粋に国書を典拠としたとは言えないと批判した人がいました。まるで国書か漢籍かと論争が始まりそうな気配でした。しかし私から言わせると、オリンピックや世界選手権でもないのに、どうして国書vs.漢籍と競い合わなければならないのでしょうか。誰がどう見ても、日本は中国から大きな文化的影響を受けてきた国です》。

《「令和」は、「麗しき平和をもつ日本」という意味です。麗しく品格を持ち、価値をおのずから万国に認められる日本になってほしい》《価値観が定まらず、行く先が分からない日本で、多くの人は不安感にとらわれています。その中で、麗しく生きる万葉集の精神性、そして旅人の品格のある生き方が「令和」という元号から伝わるよう願っています》。

令和は「麗しき大和」、大和は奈良県の別名でもある。令和の時代、県民は品格のある生き方を心がけたいものである。


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