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湯平温泉(大分県)の山城屋旅館は、連日外国人客で満室!/観光地奈良の勝ち残り戦略(127)

2019年06月12日 | 観光地奈良の勝ち残り戦略
本年(2019年)6月3日(月)~5日(水)、九州を訪ねた。初日は湯平(ゆのひら)温泉の「山城屋」(大分県由布市湯布院町)で1泊。この旅館は、ご主人の二宮謙児さん(もと大分県信用組合勤務)のご著書『山奥の小さな旅館が連日外国人客で満室になる理由』(あさ出版)で知られる人気の旅館で、この本は韓国語にも翻訳されている。


小倉~大分は特急ソニック(JR九州)。音速(ソニック)とまでは行かないが、とても早い

二宮謙児さんは本年7月19日(金)13時30分から、橿原市役所分庁舎(ミグランス)で開催を予定している「第12回観光力創造塾」(南都銀行と県の共催)の基調講演の講師としてお迎えする予定である。一足先に人気の秘密をお聞きしようと訪ねたものでご主人と、奥さんで女将の博美さん(お母さんが大女将)にお話を伺った。


大分から湯平までは在来線(ゆふ高原線)


関西(JR西日本)では、あまり見ない色だ

奈良からの経路は、新大阪(新幹線)→小倉(在来線特急)→大分(在来線)→湯平。所要時間は約6時間だ。湯平駅へはご主人が車で迎えに来てくださった。


私が泊めていただいた部屋

湯平温泉を訪ねるのは2回目だ。前回は15年ほど前で、『由布院の小さな奇跡』(新潮新書)などで話題になっていた由布院温泉で1泊したが、あまりに俗化していて落胆し、帰りに(気分直しに)湯平駅で途中下車して(日帰りで)訪ねたのである。ひなびた湯治場で、とてもいいレトロな雰囲気だった。


露天風呂(大)。お風呂は4つあり、すべて貸し切りで利用できる


露天風呂(小)。湯平温泉は鎌倉時代に始まるという

大分からJR普通列車で50分、逆方向の由布院からだと20分。さらに湯平駅からは車で約10分。路線バスが廃止されたので、今は各旅館が送迎している。私はご主人に迎えに来てもらった。



湯平はかつての湯治場の雰囲気を残しているが、ピーク時60軒の旅館が今はわずか21軒だという。湯平温泉郷は、15年前よりも寂れていたが、昭和レトロなシーンは、やはり好感が持てる。


湯平温泉は「男はつらいよ(30)花も嵐も寅次郎」(1982年12月)の舞台となった

版元のHPから『山奥の小さな旅館が連日外国人客で満室になる理由』の目次などを紹介すると、



第1章 顧客満足度全国三位の「古くて小さな旅館」
(「ふるさと」の復活をめざして;外国からのお客さまをいかにもてなすか;お客さまの八割が外国人;外国人旅行者はここが違う)



ラウンジ。ここでお客さん同士がコミュニケーションできる

第2章 最高のおもてなしは「安心感」
(おもてなしは空港に到着したときから;外国人宿泊客に対応した環境をつくる;親密なコミュニケーションで「安心」を考える)



豪華な夕食。ここにまだ追加のお皿が来た。これで1泊2食15,000円だった!

第3章 山城屋は完全週休2日制、盆・暮れ・正月も休み
(「開店休業の日々」から連日満室状態へ;旅館でもできる「ワークライフ・バランス」;旅館業は生涯現役)



大分県が誇る「おおいた豊後牛」


このようなさりげない一品がとても美味しい。メニューは大女将が考案されるそうだ

第4章 稼働率100%の鍵はネットの活用
(なぜ山城屋は稼働率100%なのか;SNSを使ってお客さまを増やす;近隣の観光地を「動画」で案内する;ポスター、パンフレットのつくり方・使い方;地域社会全体で変えていく;「適正利益」を最大限に追求する)



あつあつの焼きナスが美味(これでも大海老の塩焼きなど、何皿か撮り忘れている)



著者等紹介
二宮謙児[ニノミヤケンジ]
1961年大分県生まれ。県立大分商業高校卒業後、大分県信用組合勤務。現在、有限会社山城屋代表。2003年、地域活性化会議「石畳浪漫プロジェクト」を提唱し、湯平温泉の空き店舗対策、街並み景観統一整備事業に取り組む。04年、町おこしイベント「湯平温泉ボンネットバス」を企画し、由布院~湯平間の復活運行を行う。07年には町おこしイベント「ツール・ド・湯平サイクリング大会」を企画、実行委員長として韓国、台湾と自転車大会を通じた国際交流を行う。



ラウンジで遅くまで飲んだ(ご主人はビール、奥さんはコーヒー、私は焼酎)


韓国人に好評のキムチ風カブラの漬け物、これはいい!

出版社内容情報
大分県・湯平温泉にある小さな老舗旅館『山城屋』は、「稼働率100%」「顧客満足度全国第3位(トリップアドバイザー調べ・日本の旅館部門2017)」「従業員の完全週休2日、盆暮れ正月休み」など、ホテル旅館業界では驚異の経営を実現している。その理由と経営ノウハウを初公開する。



ラウンジの片隅にとなりのトトロ。椅子があるので、記念写真を撮る人が多いそうだ

同館は典型的な家族旅館で(東京・谷中の「澤の屋」を参考にしたとか)、役割分担がよくできている。接客は女将(英語が堪能で、韓国語と中国語も話せる)、ITを駆使した広告や予約システムなどはご主人、食事メニューは大女将が考案。後継者のお嬢さんは、由布院のお土産物屋さんでアルバイトをしながら、接客の修業中だ。この日も満室で、私以外は全員が韓国人だった。女将さんがジャスチャーを交え、巧みな英語と韓国語でコミュニケーションをとる。


翌朝(6/4)、早朝から温泉街を歩いた。小雨が降っていたが、とても良い雰囲気だ



山城屋さんのHPによると、
「しぐるるや ひとの情けに 涙ぐむ」種田山頭火(1882~1940)
この句は、昭和5年放浪の俳人「種田山頭火」(1882~1940)がこの地湯平を訪れた際に詠まれた句として余りにも有名です。その日河原で洗濯し、干してあった法衣が時折の雨に濡れているのも気づかず読書にふけっていた山頭火。



宿の娘(先代の妹テル)がそっととり込んでくれたことにいたく感激し、 「今夜は飲まなかった。財政難もあるけれど、飲まないで寝られるほど気分がよかったのである。それでも良く寝た。くり返して言うが、ここは湯もよく宿もよかった。よい昼でありよい夜であった。」(行乞記より) と日記に記しています。当館はこの旅人へのもてなしの気持ちを今も忘れずに守っていきたいと思っています。






同館のロビーで、韓国人の家族連れ(若いご夫婦とお母さん)と話をした(たどたどしい英語で)。「この旅館はとても良かった。今日もわざわざ由布院駅まで送っていただく。ここは韓国ではSNSなどでとても有名だ。日本でも有名ですか?」「はい、湯平温泉と言えば山城屋さん、と名が通っています。今度ご主人をセミナーの講師にお迎えします」とお答えした。


素朴で美味しい朝ごはん。地元の味噌を使った味噌汁は絶品!

食事は海の幸(良い魚市場があるそうだ)、山の幸をふんだんに使い、素朴だがとてもおいしい。特に刺身と味噌汁には感動した。月曜日の宿泊というのに満室で、私以外はすべて韓国人だった。なお同旅館は本年7月、全国ネットのテレビ番組「日本のチカラ」で紹介される予定で、6月3日(月)には大分放送のクルーが来ていた(私も撮影に協力)。また7月3日(水)8:00~9:54にはTBS系の「ビビット」でも取り上げられるという。


食事する部屋の一角に、神棚(同家の神棚)と仏壇(ご主人の実家のもの)が並んでいた

食事する広間が2つあり、そのうち1つの部屋には神棚と仏壇が並んでいた。普段はパーテーションで仕切られているそうだが、欧米人などが珍しがるので、その場合はパーテーションを外して見てもらうのだとか。



私は翌日(6/4)「黒川温泉(熊本県)でもう1泊します」と申し上げると、ご主人は「明日は休館日(完全週休2日)なので、お送りしましょう。私たちも永らく行っていないので」とおっしゃった。これは有難い。旅館のミニバンに7人(由布院に向かう韓国人客3人、ご主人・奥さん・娘さんと私)が乗り込んだ。韓国人客は由布院駅で下車、私たちはやまなみハイウェイを経由して黒川温泉に向かった。


厨房ならぬ台所、向かって左が大女将。外国人客がよく写真を撮っていくのだそうだ

やまなみハイウェイでは、歩道専用としては日本一の高さを誇る「九重(ここのえ)“夢”大吊橋」、(大分県玖珠郡九重町)日本最大の地熱発電所「九州電力 八丁原地熱発電所」(同町)、大自然の中に蒸気が吹き上がる「小松地獄」(同町)を一緒に見学した。すべて初めて訪ねる所ばかりで、とても興味深かった。


九重“夢”大吊橋。この写真は公式サイトから拝借した

吊り橋は観光用で、「よくこんな所に橋を架けたものだ」と驚くほどの高さと長さを誇る。公式サイトには、



平成18年(2006)10月30日にオープンした、「九重“夢”大吊橋」。長さ390m、高さ173m、幅1.5mのこの橋は、歩道専用として『日本一の高さ』を誇る吊橋です。



すぐ目前に、「日本の滝百選」にも選ばれた、「震動の滝・雄滝」や「雌滝」を望み、足下に筑後川の源流域を流れる鳴子川渓谷の原生林が広がり、 四季折々に織りなす大自然の変化は訪れる人々を魅了してやみません。また遠くに、三俣山や涌蓋山など雄大な「くじゅう連山」が横たわり、360度の大パノラマは、まさに「天空の散歩道」にふさわしい、文句なしの絶景です。



吊り橋からの絶景


地熱発電所では、ガイドさんが案内してくれた



「小松地獄」について、九重町観光協会の公式サイトには、
八丁原地熱発電所のすぐ近くに小松地獄がある。大自然の中に吹き上がる蒸気や噴出する熱泥の様子を見学できる。散策道から出ると危険。岩肌にこびり付いた噴出物の色合いはまさに地獄の様相を呈しています。周辺は約20分で一回りできます。









ご主人も女将さんも、前日は夜遅く(午後11時頃)まで私の話に付き合って下さり、また翌日はやまなみハイウェイ沿道の観光から黒川温泉までお付き合いいただいた。これは本当に素晴らしいおもてなしで、山城屋さんの人気の秘訣がよく理解できた。

ご主人、女将さん、そしてお嬢さん、ありがとうございました。ご主人、7月19日(金)の「観光力創造塾」は、どうぞよろしくお願いいたします!
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