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奈良県指定文化財に関する調査結果2019、奈良まほろばソムリエの会が公表!

2019年06月21日 | 奈良にこだわる
昨日(6/20)、奈良県庁の文化教育記者クラブと地域振興部を訪ねた。目的は、県指定文化財に関する調査結果の記者発表と、これらの保存に関する要望書の提出である。担当したのは、NPO法人「奈良まほろばソムリエの会」の保存継承グループ(担当理事:久門たつおさん)である。
※トップ写真は県地域振興部長の山下保典氏。豊田理事長から要望書を手渡した

早速今朝(6/21付)の奈良新聞が「県指定文化財 耐震・防火対策に課題 奈良まほろばソムリエの会調査 獣害、シロアリ被害も」の見出しで、写真入りで報じている。以下、ニュースリリースの一部を抜粋する。


向かって右奥から、豊田敏雄理事長、久門たつお理事、小倉つき子さん、中川崇さん

奈良県指定文化財、耐震診断や火災通報態勢などに課題
~2年間で社寺など125カ所、152件を災害対策調査~

平素から当会の活動にご理解をいただきありがとうございます。当会のグループの1つ、保存継承グループが進めていました奈良県指定文化財を対象とした「災害対策等現況調査」の結果がまとまりましたので、お知らせいたします。調査の概要は下記の通り(別紙は①~④、別に調査票収録CD)です。ご報道いただければ幸いです。なお、当会は調査結果を基にまとめた要望書を奈良県地域振興部に本日提出いたします。

【趣旨】有形文化財は常に大地震、火災などによる損壊・逸失のリスクをかかえています。奈良県内の文化財を後世に引き継いでいくため地震、防火、獣害の各対策はどのような状況にあるのかを県指定の建造物、彫刻にしぼって調査しました。対象社寺が国宝・重文も所蔵の場合は併せて行いました。
【期間】 2017月7月~2019年4月
【対象】 県指定文化財557件のうち、建造物は118件(191棟)、彫刻は104件の計222件(2019年4月1日現在)。今回、建造物88件(120棟)、彫刻64件の計152件(実施率は建造物、彫刻合計で68.5%)の調査を行いました。(対策が比較的充実している世界遺産登録社寺分、彫刻では立体でない能面などの34件は対象から除外。協力を得られなかった社寺などの分は36件でした。)
【調査項目】 地震対策、防火対策、獣害・シロアリ等の対策の3項目
【調 査 先】 県内39市町村のうち、対象の建造物、彫刻がある30市町村(12市10町8村)の社寺など125カ所で実施。内訳は寺院関係71カ所、神社29カ所、住宅など25カ所。
【実施手法】 保存継承Gメンバーが通算43日、125カ所で延べ507人(実人数16人)が参加。原則として1カ月2組各3~5人で訪問し、住職、宮司らから聞き取り調査と撮影。メンバーで評議後、担当者が調査票を作成しました。




写真も見せてもらった。これは「目を覆いたくなるような惨状」と言っていい。茅葺の屋根にアライグマが大きな穴を空けていたり、社殿の柱の下部がシロアリに食われて今にも倒れそうだったり、長年開扉していなかった仏像の背面が白カビに覆われていたり…。こんなことも報告されていた(ニュースリリースの別紙)。

○拝殿に上がらせてもらう際、メンバーが賽銭箱の後側がこじ開けられ、賽銭が盗まれていることを発見。関係者が警察に通報(県中部の神社)
○調査で訪問したら、境内の無住寺で盗難があったことが判明(県東部の神社)
○調査先から「住宅の横を流れる川が豪雨になると危険を感じるぐらい増水する。何とかならないか」と相談される(県南部の古民家)
○調査先から「隣接の作業場から土ほこりが飛散し、本堂にも入ってきて困っている」と相談される(県北部のお寺)




会見後、上記をもとに作成した「奈良県指定有形文化財の保存に関する要望書」を県地域振興部長の山下保典氏に手渡した。要望書のポイントは4点だ。抜粋すると、

(1)県指定建造物を対象とする耐震診断の実施を
大地震になると建造物、彫刻とも損壊の可能性があり、所有者としてどの程度の補強が必要かを判断するため、耐震診断の実施を求める声がありました。県文化財保護条例第15条(管理又は修理の補助)の趣旨に沿って、県指定建造物を優先して実施していただく一方、県指定彫刻を安置する非指定建造物についてもご検討をお願いします。

(2)過疎地域で管理が行き届かない仏像などの収蔵・展示施設の設置を
過疎地域などの住職、宮司不在の社寺では近年、地元での管理が行き届かず、仏像などの盗難事案も発生、危機的な状況にあります。また、個々の社寺・地区での収蔵庫建設は困難な情勢です。県の主導で指定・非指定の仏像などの防災・防犯の役目を果たす収蔵・展示施設を、県文化財保護条例第16条(管理又は修理に関する勧告)の趣旨に沿って、例えば県東部と県南部に設置するご検討をお願いします。

(3)消防機関への通報直結推進と住民参加の文化財防火デー行事を
防火機器の整備は着実に進んでいます。しかし、火災発生時の消防への通報は気付いた人が行う旧来の人任せが大半で、過疎地域では人任せも厳しい状況です。一方、社寺の中には消防機関への通報が直結されているところもあります。迅速な初期消火のため、このシステムが推進されるよう要望します。

(4)獣害などの対策強化を
県指定の建造物に対してシロアリ、アライグマなどの動物による被害は調査先の約6割で発生し、所有者・管理者を悩ませています。所有者らの対応が基本となっていますが、貴県としても獣害・シロアリ被害等への対処法、予防法について関係冊子の作成・配付、県での相談窓口の充実を要望します。




県指定文化財がこのような危機的な状況にあるのは、人口減少により檀家や氏子の数が減り、資金面での支援が受けられず、十分なメンテナンスができないということが第1の要因である。県指定文化財には一定の補助が県から受けられるが、全額ではない。その自己負担分の資金が調達できないのである。

2016年には、市町村指定の文化財の調査結果を発表したことがあった(詳細は、こちら)。これもヒドイものだったが、今回の方がインパクトがあった。県地域振興部さんには、早急な対応をお願いしたい。
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