道々の枝折

好奇心の趣くままに、見たこと・聞いたこと・思ったこと・為たこと、そして考えたこと・・・

PM2.5

2013年02月09日 | 随想
聞き慣れない言葉が、連日テレビで
連呼され新聞紙面に躍っている。人々の耳をそば立たせ不安を煽っているが、何も新しい物質が突如中国に出現したというものではない。PM2.5・・・。粒径2.5μm以下の微粒子状物質だそうだ。

中国の首都北京ではこの大気汚染粒子の濃度が異常に高く、市民の健康被害が深刻だという。粒径が微少なため有害物質が肺胞にまで入り込み、人体に深刻な被害をもたらすらしい。発生源は市内外の工場の排煙や自動車の排気とほぼ特定されている。北京に限らず中国の工業都市では、程度の差こそあれ大気汚染が問題になっているようだ。

このPM2.5を含む汚染大気は、比較的濃度の高いまま日本の上空に飛来することがシミュレーションによって明らかにされている。シミュレーション映像を見なくても、黄砂が毎春飛来しているのだから、より粒径の細かいPM2.5が列島まで飛んでくるであろうことは私たち素人にもわかる。現下のシミュレーション報道は、為にするセンセーションのようにみえる。福島原発事故直後の放射性物質拡散のシミュレーション映像の発信源は、欧州の気象機関のものだったが、ほとんど放映されなかったこと較べると奇異に感ずる。

中国由来と疑われる大気汚染物質が日本へ飛来していることは、今に始まったことではない。粒子による分類データも以前からあった筈だ。英語にすると耳新しく、新種の有害物質の出現のように聞こえ人々の注意を惹く。そして騒ぎは過剰に広がり、売場の2.5対応マスクが無くなる。

問題なのは、この粒径の大小よりも汚染物質の化学的な性質、生体組織への作用だろう。こちらの情報のほうが拡散予測よりもずっと重要ではないか。粒子の大小を問わず汚染物質は水に溶ける。雨や雪、露、霧になって地上に降り注ぐのだから、あらゆる生物は最終的にその影響を免れない。PM2.5用マスクが確保できたから安心というものではないし、外出を避けていれば健康被害を受けないというものでもない。

これまでは、触らぬ神に祟りなしとばかり、大気汚染物質の飛来について、日本政府から中国政府に改善方を申し入れたことがない。中国当局も、日本国内の大気汚染物質に、自国由来の物質があることを認めたことはない。したがって議論に成らず、防除対策について二国間で協議がもたれたことはなかった。

昼間でも自動車のヘッドライトをつけないと走行できないほど酷い北京市内の高濃度大気汚染が、インターネットで世界に公開され続けられている以上、今後は中国政府も排出に対して何らかの手を打つだろう。これまでどおり日本への影響を無視し続けることは出来ないと思うが、現在の不穏な両国関係からすると、中国政府が大気汚染の移動を素直に認めるとは思えない。

当ブログでは、汚染大気の硫黄酸化物を吸収したと思われる雨や露に触れたアサガオの花の惨状を、2008年8月に「酸性雨?」、同年9月に「続酸性雨」、2年後の2010年8月に「酸性雨?とアサガオ」と、3回にわたって画像付で投稿したことがある。この間に政権政党の交代があったが、どちらの政権も、地球温暖化と較べると大気汚染にはあまり積極的に取り組まなかった。当時は中国の大気汚染の日本への影響についてさほど重大視されていなかったように思う。PM2.5という言葉も使われたことはなかったと記憶してしている。

しかし、この微粒子状物質は、濃度の差こそあれ、今と同様日本へ飛来していたと見るのが妥当だろう。当時の環境省は大気汚染について国民に警告を発していない。報道機関も沈黙していた。

中国の大気汚染問題は、日中関係が悪化するはるか以前から日本では予見されていた。何らかの対策に手をつけることもできたはずだ。当事国双方が協議して解決を図っておくべき懸案であり課題であったと思う。経済的利益を最優先にしてきたツケは、残念ながら日中双方の国民に回ってきている。


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