道々の枝折

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宗教

2022年12月01日 | 人文考察
人類は、現世の苦悩を宗教(信仰)に帰依することで、緩和ないし解消を図ってきた。その切実な願いに誠実に対応し、民衆の救済を目指した宗教者(開祖)たちの足跡は尊い。

だが宗教の本態は、強烈な自我をもったある個人(教祖)と、自我を喪失した多数の人々(信徒)とがつくりあげる、依存と被依存の特殊な人間関係で構築された集団が始まりである。世界宗教といえども、初期のこの基本構造は変わらない。

開祖のようなカリスマ性をもたない後継者たちは、教義を深めるよりも、教団組織の拡張と、経済基盤の確立安定に傾く。
時代を経るに従い時の権力に迎合し、手厚い保護を受け、教勢の拡大に邁進する。
平安・鎌倉時代の日本仏教がそれであり、中世キリスト教の歴史にも、それは読み取れる。

目下問題になっている旧統一教会(現世界平和統一家庭連合)などは、元々宗教的理念の乏しい団体だったようだ。したがって、本来の宗教団体でさえ陥る諸々の弊害は、この新興宗教団体にはより顕著に露われている。

朝鮮戦争(1950〜1953)が終わった1953年,文鮮明という北朝鮮生まれの機を見るに敏な男が、戦後の大韓民国で、社会の混乱と国土の荒廃に苦しむ韓国民衆を救済すると称して、信者を集め教団をつくったのが始まりである。
米国の援助で民主国家の道を歩み始めた大韓民国(韓国)は、中国の支援を受ける朝鮮人民共和国(北朝鮮)と、イデオロギーの対立により38度戦で対峙することになった。

共産軍との戦争により、人民救済の名目に反共が加わる。1955年に確立した日本の自民党政権に迎合し、時の自民党領袖岸信介氏と信条と利害が一致し意気投合した。ふたりは緊密な関係を築き、岸邸の一部に統一教会の事務所を置くまでになった。
北朝鮮の共産主義に直接対抗する韓国の政治風土を後ろ盾にした文鮮明は、「国際勝共連合」という反共組織をつくり上げ岸氏に取り入り、自民党中枢と極めて緊密な関係をつくりあげていく。

その後は、自民党の独裁政治を支えるため、教団保護と会員の選挙応援のバーター取引で、日本国内に確固たる教勢を築き上げて来た。
信者に献身と自己犠牲を強いる洗脳によって、教団への依存を深めさせたり、多額の寄付や献金、特定の高額物品購入の勧誘は、明らかに布教活動を逸脱し、社会問題になっていたが、安倍政権はこれを無視し続けたまま、選挙活動で教団の支援を仰いで来た。

安倍晋三氏射殺事件で、教団の国や自治体への浸透が明らかになり、目下岸田政権は、統一教会対策に集中して取り組む姿勢を見せている。
今後この教団をどう扱うのか、政権与党の対応の仕方を、私たちは注視していなければいけない。信仰一般に潜む献身と呼ぶ自我喪失自己犠牲を考えると、決してお座なりな対策で終わらせてはならないと思う。

旧統一教会とどっぷり癒着していた国会議員は、次の選挙では教団の無償人員派遣サービスを期待出来なくなるだろう。最長の安部政権の下で失われた、自民党の自浄機能が復活するかどうか、投票者は厳しく見極めなくてはならない。

歴史に鑑みると、民衆の苦悩が大きい時代には、宗教家を輩出している。人々が幸福な社会は、宗教への依存度が希薄になるようだ。現代はどちらかというと人々が幸福の時代に当たっている。民衆が宗教を求めていないのに、布教の名の下に組織の影響力の巨大化を図るのは、紛う方なき政治組織と見るべきだろう。



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