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道々の枝折

好奇心の趣くままに、見たこと・聞いたこと・思ったこと・為たこと、そして考えたこと・・・

思い込み

2019年09月05日 | 自然観察
固定観念・先入観・思い込み、どれをとっても人間の判断を狂わせる元凶だ。大方は無知ゆえの誤認だろうが、知識はあっても考え方が硬直していれば、間違いを正すのは難しい。
 
長い間植物の栽培や観察に熱中してきたが、知らぬ間に間違った考えにとらわれていたことに気づいた。
 
これまでの私には、植木鉢に対して牢固とした思い込みがあった。これまでは一貫して、多孔質の焼物、駄温鉢が植物の根の発育に最も適しているとして、疑うことを知らなかった。通気性・吸湿性があることは、植物の生理に最も適っていると信じ、この鉢に勝るものはないとまで思っていた。人にも迷うことなく推奨してきた。ところが数年前から、駄温鉢にも欠点があることがわかってきた。

駄温鉢の最大の欠陥は、比重が大きく(=重い)、熱容量が大きい(=蓄熱性大)ということにある。
 炎暑の夏、直射日光に当たった駄温鉢に触れると、相当に熱くなっている。多孔質の毛細管現象による冷却効果を期待していたが、以前実験の結果は効果がなかった。駄温鉢は日本の夏には適さないと結論するに至った。

一方、価格の安いプラスチック鉢は、比重が小さく蓄熱量も小さい。素材そのものに断熱性が有り、直射日光に長い時間当たってもさほど熱くはならない。
 
しかも潅水した水は、通気の好い駄温鉢の方が早く蒸散し、水切れを起こし易い。プラスチック鉢は通気性も通水性もないから水切れは起こりにくい。

最も心配なのは根の呼吸の問題で、プラスチックという素材に通気性がまったく無いことから、根腐れの不安は大きかった。しかし鉢内の培養土の通気は、鉢の素材で決まるものではない。培養土そのものに通気性があることを忘れてはいけない。通気は培養土によって保証されている。根腐れの心配は、鉢底に鉢底石を敷く鉢植えの常識で解決されている。

また冬の寒冷に対しては、プラスチック鉢は断熱性と気密性の両面で、焼物鉢よりはるかに卓れた保温性能と凍結防止性能をもっている。
鉢表面からの水分の蒸散が無いことは、冷却を防ぐうえに培養土の水もちを良くし、太平洋岸地域に共通する冬の鉢内環境を和らげる。

つまりプラスチック鉢は、伝統的な駄温鉢すなわち焼物鉢に較べ、植物の生育の上ではまったく遜色なく、むしろ、夏の酷熱と冬の寒冷から植物を護る機能がより優れた園芸資材と言える。先入観が災いして、プラスチック鉢の効用を、低廉な価格だけにしか認めて来なかったのが悔やまれる。

栽培者が高山や寒冷地の植物を栽培して失敗するのは、夏よりも寧ろ冬が多い。これらの植物は案外夏の暑さには強いものだが、冬場に根の凍結で枯らしてしまうことが多い。

これら寒冷地の植物にとって、雪の積もらない栽培地は、自生地より遥かに過酷な生育環境だ。春まで土の凍結しない暖かな(植物にとって)氷雪の下にある方が、どれほど快適であろう。だから氷河期をも生き延びることができた。

冬の寒風に曝れる鉢内の温度は、節分前後の最も寒い時期の露地では、暖地でも0度Cを下回ることが再々あり、強風の夜に鉢内が凍結することはよく経験する。その結果、植物の根は壊死し枯れる。寒冷地の植物は低温に強いという思い込みが失敗を招いて来た。

植物栽培から知る固定観念・先入観・思い込みの弊害、我ながら呆れるばかりだ。日常生活ではどれほどこれと同様な誤りを曳きずっていることか?身が縮む思いがする・・・。







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