よむよま

よむ・よまない、それから。

映画「海よりもまだ深く」

2016-05-31 20:49:10 | 見る
是枝裕和監督の映画「海よりもまだ深く」見ました。
主演:阿部寛 その母が樹木希林という、「歩いても歩いても」コンビ。
「歩いても」もこれもタイトルが歌謡曲から取られてるのね。

「歩いても」の母親は、長男を亡くしたという大きな事件が根底にあって、それでちょっと妄執に近い執念があった。
そこに怖いものがある母だったけど、
今度の母は穏やかであたたかい。
ダメ息子もきつい娘も、元嫁も、孫たちも、みんなを受け入れてる。
近所の、音楽評論家だった先生(橋爪功)にちょいとばかり気がある?
慣れないクラシックなんか聞いちゃって、ほほえましい。

アベちゃんの役は、しょうもない、情けない、金も運もない、いいとこ全然ない男。
ずいぶん前に小説で賞を取ったことがある、島尾敏雄賞。
純文学で私小説ということか。
でも、それっきり。
妻に離婚され、子どもに会いたさに養育費を捻出すべく、いまは探偵事務所に勤めてる。
金がなくて、年金暮らしの母親のふところを狙ったり、調査をネタに裏で取引したり。
アベちゃんは体が大きい分、シケたセコい中年男がよりなさけなく見える。
(一ヶ所、物陰でよりかかってタバコ吸ってるシーン、うっかりカッコよくなっちゃってた)

探偵事務所の後輩が池松壮亮で、なぜかこのしょうもないオジサンを慕ってるの。
一体なんでなんだろう?
いい感じだった。

離婚した妻が真木よう子、息子が吉澤太陽クン。
是枝ものの特徴というか、子役がいいのよね、この吉澤くんもとってもよかった。
探偵事務所の所長がリリー・フランキー(この人、なんでいつもいい仕事が来るの?ユースケ・サンタマリアと並ぶ謎だ)
アベちゃんのしっかり者の姉が小林聡美。

みんな、なりたかった大人になれたわけじゃなく、「こんなはずじゃなかった」人生を生きてる。
あちこち笑いどころあり、おもしろかったし、日常物語だけどリズムがよくて、
あたたかい気持ちで映画館を出てくる。
コメント
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