よむよま

よむ・よまない、それから。

お久しぶりの平成中村座

2022-10-19 18:55:53 | 見る
お久しぶりの平成中村座
コロナでできなくなって、3年ぶり、浅草寺の境内に建てられた平成中村座。
やっぱり普通の劇場よりワクワクする場所だね。仮設であることがマイナスでない芝居小屋。
 昨日10月18日昼の部を観てきました。
一番目が「双蝶々曲輪日記」の角力場、大関(江戸時代は横綱がないので、最高位)の濡髪が、素人上がりの若者・放駒に負けてやった後で、「オトナの事情があるんだよ、キミもオトナになれよ」とある取り引きを持ちかけて、放駒が反発する場面。放駒は「そんな取り引きを持ち出すのなら、なぜオレを土俵の砂に叩きつけておいて言わないんだ!負けてやったかわりに言うことを聞けなんて、オレはそんな汚い人間じゃない!」と猛然と食ってかかる。
私は勘九郎の放駒を見たときに(あれも平成中村座だったね、濡髪が当時の橋之助かな)初めて、この場面てこういう意味合いだったのか!と理解できたのだ。この若者の言うとおりだ!と思い、場面自体も盛り上がったし、納得していい気持ちで見終わった。だから、放駒の基準はこのときの勘ちゃんなのだ。
今回、初役で放駒をやっているのは中村虎之介(扇雀さんの息子)、元気溌剌でとてもいい。声を張るとキンキン声になっちゃうのが弱点かな、でも、たぶんお父さんに似てるのね。おもしろいなと思ったのは、勘ちゃんの放駒は「まっすぐ!」だったのに比べて、虎之介くんのはコミカルな雰囲気があるの。あれは上方みだと思うんだけど、でも、虎之介くんて東京育ちでしょう?血ですか?
そして、今回、濡髪をやっているのは、なんと、勘九郎!
勘ちゃんが濡髪!いやー、感慨がありますよ。
ちゃんと大きくて立派でした。ただ、後半、放駒が反発するのでだんだん腹が立ってくると、ちょっと悪役っぽくなる。悪役、敵役というのでもないと思うのよね、この役って。大きくのしかかる力を見せつつも、憎まれ役に見えないような何か?が必要なのかな。
ちょっとしか出ない、遊女の七之助がきれいなの。中村座は小さいから、その華やかさが覆い尽くす感じになる。

二番目は「極付幡随長兵衛」
幡随院長兵衛という町奴(侠客)と、身分を楯に暴れまわる旗本奴の水野十郎左衛門の対立から、水野が長兵衛を謀略で殺すまで。
一幕目の芝居小屋で、水野の家来が暴れるのを長兵衛がおさめる場面、一階の客席から長兵衛役の獅童が登場し、二階の客席には水野役の勘九郎が登場します。私の席は二階だったので、両方が見られました。
長兵衛の獅童がカッコいいの!あの獅童が、こんなに貫禄あるカッコいい男ができるようになるとは!
恨みを買った長兵衛は、水野から仕返しがあることを覚悟している。そこに、水野から酒宴のご招待が来る。当然、これは罠。行けば殺されるだろう。
というところで、手下の者たち、弟分、家族、みんなが止める場面。
獅童の息子・陽喜クンが息子役をやっているのだが、お芝居が上手だわ!
豆粒みたいにちっちゃくて、かわいいのに!
けっこう長いセリフもあり、いろんな段取りもあり、よく覚えたねえと思うし、ちゃんと情感があるの。泣けました。
屋敷に呼び寄せた水野は、まっとうにやり合うのではなく、風呂を勧めて、風呂場で武器を持たない相手を大槍で殺すという、悪いやつ。
長兵衛はカッコイイけど、このお芝居っていい気分のものじゃないよね、でも、よく出るんですよね。

 舞台はよかったのですが、空席がちょっとちらほら。私は、平成中村座で空席があるのを初めて見た。やっぱり一旦途切れてしまうと、客足は戻らないのかな。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

「burst!~ 危険なふたり~」再演

2022-10-11 23:29:09 | 慎吾
「burst!~ 危険なふたり~」再演

観て来ました!
こんなに笑う作品だったっけ?私は、狂気のイメージしか残ってなかった。
二つの部屋にいる一人ずつの二人、草彅剛と香取慎吾。作・演出 三谷幸喜。
初演は前のパルコ劇場。今回は日本青年館なので、前より大きい。その分、散漫になりそうなものだけど、全然!
えらいテンポのよさ、二人とも強い演技をしてるけど、無理に作って見せてる感じはない。
おもしろかった!
しかし、こんなに笑ったっけ?

 栃木県の一軒家に住んでいる青木(しんご)に電話をかけてくる東京の警視庁(所属じゃないんだって)の爆弾処理の専門家・根上(つよし)。
テロリストの勘違いでお宅に爆弾が仕掛けられました!という設定で、別々の場所にいる二人は、電話(せりふ)だけでやりとりしながら、時限爆弾を解除しようとして、悪戦苦闘する。
 この作品の肝は、休憩なしなのに2幕ものになっていて、暗転の間に着替えた二人が、2幕が始まると、役が入れ替わっていること。何の説明もなく、意味ありげな思わせぶりな演技もないまま、1幕の話の続きをやっていく。
この構成の恐ろしいところは、さっきの配役のほうがよかったな、あるいは、こっちの役のほうが合ってるね、さらには、こっちの彼のほうが演技がうまいんじゃない?という感想が浮かぶ(かもしれない)ところだ。三谷さんも、こんなことはこの二人だからできたと言っているが、普通の(彼らのような特殊な関係性でない)俳優同士だったらどんな感情が二人の胸の内に沸いてしまうことか。恐ろしい。

 ノリノリ、かつ、自然体な感じで芝居はどんどん進み、青木(入れ替わったので、つよし)が狂気的になって終わる。私は初演のラストのイメージがそこだったのだが、今回はそこはそんなに強烈な感じでもなかった。

 今回、開演前のアナウンスが、出演してない稲垣吾郎なのだ。開演15分前に「稲垣吾郎のスペシャルトークライブにようこそ」なんて言っちゃって、いろんなご注意とかをまじえながらおしゃべりするアナウンスが流れる。一旦終わったあと、開演5分前にまた始まって、「今日はありがとう!では、規制退場をお願いします」なんて言っちゃって、もう終わろうとする(笑)。「その前に、草彅剛と香取慎吾がどうしてもミニコントをやりたいというので、見てやってください。どれくらいやるの?1時間40分!ずいぶん長いね!」なんて言っちゃって、開演となる。大ウケで拍手喝采。
 三谷さんの舞台では、開演前のアナウンスで笑いを取ることが多い。たいていは三谷さん自身がやってたり、出演してないのに八嶋智人さんがやったこともあったと思う。
 芝居が終わったあと、アフタートークとして、二人で裏話などおしゃべりして(今日はセリフのミスがいくつかあったようす)、劇中歌を歌って、終了。

 慎吾くんがなぜか金髪にしてるんですよ。前半、パジャマ(ド・ピンク!)姿でいるときはまったく気にならなかったのが、後半入れ替わって警視庁(所属ではないそうですが)の人になると白シャツ・サスペンダーの衣装で、豊かな上半身(うまい言い方!)にわりと細くて長い下半身なので、アメリカドラマに出てくる警部みたいなのですよ!でも、根上大五郎って役名なのよ!話してる相手は栃木の青木だし!なんで金髪にしたの?

 感想:二人とも、うまい俳優になったなぁと思いました。おもしろかった!
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

「グレート・ギャツビー」無事完走!

2022-10-09 21:40:14 | 宝塚
「グレート・ギャツビー」無事完走!

「グレート・ギャツビー」本拠地での大劇場公演はコロナの中止期間があって、結局10日間程度しか公演できなかったが、東京公演は9月10日の初日から今日10月9日の千秋楽まで無事に全日程完走できました!よかった!
3人の退団者も無事に送り出すことができて、月城さんもほっとしてたし、組長さんは泣いてた。この状況でトップだったり組長だったりするのって、ほんとうに大変だと思う。

 私は東京公演は複数回、大劇場と東京の千秋楽配信は両方、見ることができた。原作から受け取る印象やメッセージとはかなり違うものに仕上がっているのだが、それでも、小池先生の言った「宝塚版としてはこれでいいと考えています」というのは、納得できました。徹底してただ一人の女への愛の物語として作っていて、一本ものの大作にするためのボリュームを作り、ギャツビーが生きてきた裏社会の場面も見せ場にし、ゴルフの対決シーンの落としどころとか、さすがですね。(ここの設定はどうなのよと思うところもあるけどね)
 そして、その世界を、月組の全員が練り上げて、熟成していってた。大千秋楽のカーテンコールの最後で、月城さんが「大劇場では中止期間があったので舞台で練り上げることができなくて、東京は大丈夫だろうかと心配した」と言ってたけど、高い密度で、隙間なくできてた。単純な二枚目と単純な悪役がわかりやすく登場するわけでもなく、号泣しました感動しましたと終わる物語でもない難しい作品を、エンターテイメントとして見せることができていた。見事な舞台成果だと思う。
 月城ギャツビーは、回を追うごとに狂気みが増していて、思い込みが強すぎて現実を見ようとしない、手に入らないものに手を伸ばし続ける男なのに、スーツ祭りの姿の良さ、美しさと、繊細な演技、さらに増してきてる歌の力で、見る者を圧倒してくる。
月城さんは歌がうまくなってるよね。以前は、標準的にちゃんと歌えますレベルだったと思うんだけど、いまは「歌うまい!」レベルになってる。前回のショーを見て、以前よりダンスうまくなってると思ったから(ダンスが苦手と言われてたけど)、やっぱりトップになると、ポジションにあぐらかいてるってことはないんだなぁ。トップになったからにはもっとがんばらねば!となるんだろう。
 歌のパワーがすごくて、この男アブナイ人でしょとしか思えないにもかかわらず、聞いてると強烈な説得力があって、納得させられてしまう。ソロもデュエットもいいんだけど、私は特に「神の眼」シーンが好き。ミュージカルらしい大人数の場面で、ラスト、全員の大コーラスを圧して響く月城さんの声で、ギャツビーの強い思いがこちらの胸に直接届くのです。

 以前の初演・再演は見てないけど、この舞台は確かに名作となったと思うし、月城かなとの代表作(の一つ)になったのではないか。月城さんもカーテンコールで「こんなに離れがたいと思う役は初めてです。私にとって宝物になりました」と言ってた。
数年前に主演した、原作者であるスコット・フィッツジェラルドの物語「THE LAST PARTY」も月城さんの代表作(の一つ)ではないかと思っているのだが、原作者の役と、作品の主役と、両方をこういう形で演じたなんて、非常に稀有な経験なのでは?しかも、相手が海乃さんという同じコンビで。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする