よむよま

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「三人吉三」二月大歌舞伎

2023-02-14 23:07:13 | 見る
歌舞伎座の第一部「三人吉三巴白浪」を見てきました。
お嬢吉三を七之助、お坊吉三を愛之助、和尚吉三を松緑の配役。

 このお芝居は主役は悪者たち(盗み、たかり、人殺しも平気)で、それぞれ因果が絡み合ってる物語で、だいたい舞台面が暗いんですよ、にもかかわらず最後の幕とか、演出は派手。亡くなった勘三郎がやったコクーン歌舞伎の、客席まで埋め尽くそうかという勢いでドバーッと降り落とす雪ほどではないけど、古典的な演出でも降る雪の中、大立ち回りで派手に終わります。悪者が追い詰められていって、生首やら登場したあげくなのに、客席は拍手喝采です。だって、気分がノリノリになるんだもん。

 設定と人物関係はものすごくややこしいです、歌舞伎あるあるのお家騒動からのびっくり展開。だいたいは、大事な家宝の刀が盗まれて、それを買い戻そうとした百両が盗まれて、それぞれの人物が、実はわたくしはと名乗れば済むのに、みんなが同じものをめぐって右往左往することになります。
 そして三人の吉三が出会う大川端の場が有名です。きれいな振袖の上品なお嬢様かと思ったら盗っ人のお嬢吉三が川を見込んで言う七五調のセリフ、「月もおぼろに白魚の」と始まる長ぜりふが最初の見せ場。途中で、御厄払いましょう、厄落とし!と言って通る声が聞こえてきて、「ほんに今夜は節分か」となる。このあとがスゴイのね、「落ちた夜鷹は厄落とし」と言うんだけど、直前に、行き会った若い夜鷹が懐に持っていた金を奪ったときに彼女を川に突き落としてるわけ。自分が突き落としておいて、厄落としだって言っちゃうの。そういう、悪~い感じがウケたんでしょうね。
 七之助のお嬢は華やかだし、男に戻ったり女になったりが上手で、客席が湧いてた。ただ、やっぱり声を張るとちょっと声に余裕がないのよね。
 お坊は二枚目で、お嬢と恋人同士になっていくんだけど、愛之助はその雰囲気があって、最後に追い詰められていく場面が切なくてよかった。
 和尚の松緑は、セリフ回しのいつもの癖が、この役では気にならなくて、じっくり見られた。ちょっと見直しました。意外にも、二代目の松緑(お祖父さん)に風貌が似てた。
 和尚の妹、夜鷹のおとせ(壱太郎)や実の兄妹と知らずに恋仲になる十三郎(巳之助)ほかの配役もそれぞれきっちりやっていて、いい舞台でした。

 大川端の場の最後の引っ込みのところが好きなんですよね、私。義兄弟の契りを結んだ三人の吉三が並んで、ゆっくり上手へ向かって歩いていくところで幕が引かれてくる、お決まりの演出だと思うけど、なかなか、いいね!という感じがなかったり。難しいのかしら?お坊・和尚・お嬢の順で並んで上手に向かって(真横を向いて)一歩、一歩とゆっくり歩き始めて、幕が引かれてくるの。
今回はとっても「いいね!」でした。
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