平成中村座十一月第一部
先週、「唐茄子屋」の第二部を見て、昨日第一部を見てきた。
一本目は「寿曽我対面」
曽我兄弟の仇討ち!「鎌倉殿の13人」に出てきたときは驚いたね!実在したのか!?鎌倉殿は、歌舞伎の中のキャラクターなんだと思ってた人がどんどん出てくるので、ほんと、驚きます。
「曽我対面」は数ある(舞踊作品まで入れたら山ほどある)曽我ものの中でも一番普通の曽我もの。なので、舞台上は紅白の梅の枝がバーッと下がり、後ろのふすまは全部金色だし、どう見てもおめでたいお正月の演目。なんであんな(わりと陰惨な)仇討ち話がおめでたい演目になったんだろう?江戸時代の人たち、そんなに曽我が好きだったの?
今回は若手ばかりの配役なので、一番貫禄の工藤祐経が橋之助、なかなかいいです。五郎が福之助、十郎が歌之助と兄弟でやっているのですが、ちょっと力みがあるかしら。若手ばかりの中に、最後に兄弟の家来役で勘九郎が大事な刀を捧げて駆け込んでくると、なんか、目の覚める感じがありました。
二本目は七之助の舞踊「舞妓(しらびょうし)の花宴」
江戸時代の中村座初演の演目なんだそうですが、白拍子(といっても振袖姿)がいくつかの段に分かれた踊りを衣装・小道具を替えながら踊って見せる。
初めて見たんですが、娘道成寺にそっくり。わりとゆっくりしたクドキ的なのから始まって最後は振鼓で賑やかに終わるし。七之助も踊りがうまくなったなぁ、以前はすきまができちゃってたけど、などと思いながら見ました。
三本目が勘九郎「魚屋宗五郎」
旗本の殿様の側室になっていた妹が不義密通をしてお手討ちになったと聞かされた宗五郎が、真相は罪のない妹がお家横領の悪だくみを知ってしまったために陥れられたと知って、禁酒の誓いを破って酒を飲んで旗本に暴れこむというあらすじ。禁酒していたのは、宗五郎が酒を飲むと暴れるからなのだ。
見せ場は、真相を聞かされ、憤って、一杯だけと飲み始めた宗五郎が、止める女房や若い衆、老父を、ごまかしたり、払いのけたり、取っ組み合ったり、しまいに大騒動になりつつ、止まらず飲んで、次第に酔っ払っていくようす。
酔いが強く大きくなっていくのを見せながら、3人とのやりとり、掛け合い、酒樽の取り合いのおもしろさを見せる。やることの段取りはきっちり決まっている。なにしろ歌舞伎の役者って、いかにこの場面のここのところを見せるか、練りに練って作り上げてきてるから、いまの時代だと、もう全部きっちり出来上がっている。踊りの振付ではないけど、はずせない動きの段取りがある。
以前に初役の勘ちゃんを見てる。そのときは硬かったよね。段取りに必死だったと思う。今回とてもよかったです。余裕だねというところまではいってないけど、観客が余裕をもって見られる空気になってる。
大人になったねえ!