よむよま

よむ・よまない、それから。

平成中村座十一月第一部

2022-11-15 21:25:36 | 見る
平成中村座十一月第一部

先週、「唐茄子屋」の第二部を見て、昨日第一部を見てきた。
 一本目は「寿曽我対面」
曽我兄弟の仇討ち!「鎌倉殿の13人」に出てきたときは驚いたね!実在したのか!?鎌倉殿は、歌舞伎の中のキャラクターなんだと思ってた人がどんどん出てくるので、ほんと、驚きます。
 「曽我対面」は数ある(舞踊作品まで入れたら山ほどある)曽我ものの中でも一番普通の曽我もの。なので、舞台上は紅白の梅の枝がバーッと下がり、後ろのふすまは全部金色だし、どう見てもおめでたいお正月の演目。なんであんな(わりと陰惨な)仇討ち話がおめでたい演目になったんだろう?江戸時代の人たち、そんなに曽我が好きだったの?
 今回は若手ばかりの配役なので、一番貫禄の工藤祐経が橋之助、なかなかいいです。五郎が福之助、十郎が歌之助と兄弟でやっているのですが、ちょっと力みがあるかしら。若手ばかりの中に、最後に兄弟の家来役で勘九郎が大事な刀を捧げて駆け込んでくると、なんか、目の覚める感じがありました。

 二本目は七之助の舞踊「舞妓(しらびょうし)の花宴」
江戸時代の中村座初演の演目なんだそうですが、白拍子(といっても振袖姿)がいくつかの段に分かれた踊りを衣装・小道具を替えながら踊って見せる。
初めて見たんですが、娘道成寺にそっくり。わりとゆっくりしたクドキ的なのから始まって最後は振鼓で賑やかに終わるし。七之助も踊りがうまくなったなぁ、以前はすきまができちゃってたけど、などと思いながら見ました。

 三本目が勘九郎「魚屋宗五郎」
旗本の殿様の側室になっていた妹が不義密通をしてお手討ちになったと聞かされた宗五郎が、真相は罪のない妹がお家横領の悪だくみを知ってしまったために陥れられたと知って、禁酒の誓いを破って酒を飲んで旗本に暴れこむというあらすじ。禁酒していたのは、宗五郎が酒を飲むと暴れるからなのだ。
 見せ場は、真相を聞かされ、憤って、一杯だけと飲み始めた宗五郎が、止める女房や若い衆、老父を、ごまかしたり、払いのけたり、取っ組み合ったり、しまいに大騒動になりつつ、止まらず飲んで、次第に酔っ払っていくようす。
 酔いが強く大きくなっていくのを見せながら、3人とのやりとり、掛け合い、酒樽の取り合いのおもしろさを見せる。やることの段取りはきっちり決まっている。なにしろ歌舞伎の役者って、いかにこの場面のここのところを見せるか、練りに練って作り上げてきてるから、いまの時代だと、もう全部きっちり出来上がっている。踊りの振付ではないけど、はずせない動きの段取りがある。
 以前に初役の勘ちゃんを見てる。そのときは硬かったよね。段取りに必死だったと思う。今回とてもよかったです。余裕だねというところまではいってないけど、観客が余裕をもって見られる空気になってる。
 大人になったねえ!
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再開平成中村座十一月

2022-11-08 21:31:30 | 見る
再開平成中村座十一月

 今回の浅草寺の平成中村座は二カ月連続公演で、十一月は3日に初日が開いたのだが、体調不良者が出て4日~6日まで中止になり、7日から再開。その第二部を観ました。
 宮藤官九郎の新作「唐茄子屋」
不思議国之若旦那という副題がついていて、落語のダメ若旦那の話と「不思議の国のアリス」のコラボ。ということだったけど、アリスよりは完全に落語ネタでしたね。クドカンさんは落語が好きなのね。「いだてん」もそうだったし。
 勘九郎のダメ若旦那は吉原の太夫(七之助)に入れ上げて勘当される。めんどう見てくれるはずと思った太夫に拒絶された若旦那は、叔父さん(これがなんと、荒川良々!すばらしい!)に唐茄子(かぼちゃ)売りを命じられる。
 天秤棒を担いだ振り売りに出かけた若旦那が、親切な大工(橋之助)に助けられて何とかかぼちゃを売り、哀れな長屋の母子(七之助と長三郎)に出会い、なんだかんだあって、最後は勘当が許されてハッピーエンドになる。その間に、吉原田んぼで会った蛙(坂東亀蔵)に連れられて不思議の国に行ったりなんだかんだ。
 長屋の子の長三郎くんが元気で上手で、お芝居できるようになったねえと思っていて、不思議の国では「ミニ若旦那」として勘太郎くんが出るはずだったのが、あら?ちっちゃいな?と思って見てたの。そしたら、勘太郎くん休演で長三郎くんが代役で二役務めていたんだって!弟くん、がんばったねえ!(ということは、体調不良って勘太郎くんだったのかしら)
 大工が大変な役で、登場から長いセリフを早口でポンポン言わなきゃいけない。あとの場では、若旦那と二人で「啖呵を切る」場面があって、すごい量の江戸弁のセリフを、噛まず滞らず間違えず早いテンポで立て板に水で言いきらなくちゃいけない!十月はこの役を獅童がやっていたんだそうですが、橋之助くんもカッコよくやりきってて、勘ちゃんも負けずにやって、すごいの!
  大河ドラマで人気の彌十郎さんが、二人に啖呵を切られまくる因業な大家のじいさんをやってた。軽く楽しめる、落語歌舞伎でした。
 下ネタシーンで、長三郎くんを「おまえには早い」とお父さんが引っ込めるお遊びも。ホリゾントを開けて、後ろの外を見せる演出もありました。客席降りもありました。振り売りに行く勘ちゃんの若旦那が、こっちの道から行けと言われ、口をきかなければ大丈夫だからと客席通路に降りて歩いたの、口を押えて。やりたかったんだね。

二本目は舞踊「乗合船恵方萬歳」
 振り売りの商人やさまざまな町人が、隅田川の渡し場で船が出るのを待ちながら、踊りを見せる趣向の演目。萬歳となっているのは、お正月に家々をまわる三河万歳のコンビがいるから。萬歳を扇雀さん、才造を勘ちゃんがやっています。宝塚でいうところのフィナーレみたいな踊りですね。お芝居を見たあと、ちょうどいい感じで追い出されるという。
 
 浅草寺の境内は、桜の木が紅葉していて、秋深し。
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