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「進撃の巨人 1~34」諫山創 

2021年06月18日 | コミックス

驚きに満ちた物語

 

 

* * * * * * * * * * * *

この度、ついに「進撃の巨人」が最終回を迎え、話題になったところです。

私は、以前単行本を読んで、そのあまりのおぞましさと、人物の判別の難しさ(?)で、
途中で挫折して、そのままになっていました。

けれど先頃、いよいよ最終話が近いと話題になり始めた頃から、
アニメの方を始めから見直してみました。
Amazonプライムビデオにて、シーズン1~4まで会員無料で見ることができます。
アニメの方はまだ完結までに至っていないのですが、
その後、もう一度本を第1巻から読み直し、読んでいなかった部分を買い足して、
そして先日発売された最終巻も読み、
今、呆然としつつその世界観に浸っているところです。

これだけ人気があるのも納得の、スバラシイ物語でした。
読めば読むだけ奥深く、緻密に組み立てられたストーリーには驚嘆させられます。

本作は、ざっと読み飛ばすという読み方は不向きで、
たかが漫画だなどと侮らず、じっくりと読み込むことが必要のようです。
アニメを見て、その後コミックでおさらい、というのがベストではないかと私は思う。

 

本作中で、思わず口に出して「えっ?!」と言ってしまうような、
衝撃的シーンがいくつもあるのですが、
それを紹介することにしましょう。

<かなりのネタバレ注意>です。

 

食われた!

主人公の少年エレンが、まだ物語がはじまってまもなくのところで、
あっさり巨人に食べられてしまいます。
うそ~、そんなあ・・・、と思いますよね。
ところが、なんと彼は「巨人」になって蘇る。

ただ巨人と闘うという話ではなく、
多くの謎を秘めた不思議な物語であることに気づくところです。

 

裏切り者

研究のために捕らえていた巨人が何者かに殺されてしまう。
どう考えても内部の者の仕業。
なんとそれは、エレンと訓練兵団で同期の信頼していた仲間だった。
それも3人!

なんて、シビアな物語なんだ! 
しかしそれにしても、彼らは壁の外から来たらしい。
一体壁の外とはどういう世界???

 

壁の中身は

壁のほころびからのぞいていたのはなんと、超巨大な巨人の顔!! 
恐い~!! 
どうやらこの壁はこの巨人が立ち並んでできているらしい。
だとしたら、これを作ったのは敵? 味方?

 

兄弟?

調査兵団を苦しめる、巨大な猿のような「獣の巨人」。
その正体はジーク。

ジークは実は、エレンの父が壁の外にいたときに結婚していた相手との息子。
壁内で再婚した相手との子供がエレン。
つまり、ジークとエレンは異母兄弟。
ええ~っ!!
ドラマチック!!

 

悲劇の女たち

物語が始まってすぐに、エレンの母は巨人に食べられてしまいます。
それを目の前で見た少年エレンが、
「巨人を駆逐してやる!」と胸に誓う、大事なシーン。
しかし後にわかるのですが、エレンの母を食ったのは、ジークの母、
つまりエレンの父の前妻だった・・・。
ひい~っ!

 

「進撃の巨人」

ずっとこの題名の意味がどうもピンとこない、と思っていたわけです。
それが、なんと22巻目にいたって、この題名の意味がわかる。
そりゃ、この題名しかないよね、と誰もが納得するわけですが。
それにしても、ここまで引っ張るなんて。

 

究極の選択

重要人物2人が瀕死状態にあるとき、命をつなぐ手段があります。
しかしそれを使えるのは1人に対してのみ。
果たしてどちらを生かすべきなのか?!

究極の選択を迫られる調査兵団。
うわー、これはキビシイ。
こんな決断を迫られるとは・・・。

漫画だからと侮るなかれ。
本当に1人は亡くなってしまいます・・・。

 

別の話?

ストーリーに一区切りが付いたというあたりで、
物語は別の話?と思ってしまうほどの転換を見せます。
それまでは、エレンたちの住む壁の中が舞台だったのが、
いきなり、マーレの国の話が始まります。
エレンはどうなった?という疑問を置き去りに、
マーレに住むエルディア人の少年ファルコと少女ガビの話が始まる。

エルディア人は「悪魔の民」とされ、差別されて
ユダヤ人のゲットーのように塀で囲まれた町に押し込められて生活しています。
ここで育った子どもたちは、パラディ島に住む「悪魔の民」を殲滅する戦いに加わり、
手柄を立てて「名誉マーレ人」の地位を得ることを夢としているのです。
どちらも同じ民族であるのに・・・。

戦争とは、憎しみの連鎖とは・・・、深く考えさせられる展開。
これまでとは逆方向からの視点で見ることによって、
たとえば、ライナーの苦悩などがより強く思い起こされるわけです。

と、ほとんどエレンのことも忘れかけた頃に、いきなり登場した! 
しかも巨人になった!!
どひゃ~!!!

 

オニャンコポン?

本作の中で唯一アフリカ系と思われる人物。
彼はポジティブで誠実で、皆の信頼を集めるのですが、
ハンジが彼をこう呼んだ。
「オニャンコポン」。
何かの冗談かと思いました。
しかし、本当にこれが彼の名前。
それはないでしょ、諫山センセー。
しかし、今となっては他のどんな名前も思いつかない。
忘れられないこの名前・・・。

 

ミカサのその後

最終話。
絵でしか描かれておらず、それもごく小さいカットなのですが、
ミカサに寄り添っているのはなんと、あの・・・。
ですよね?

え~っ!!!
(ここの部分は、連載の最終回にはなくて、単行本に加筆されたものだそうです)

 

話は尽きない・・・。
最後の最後まで意外性に満ちていて、全く飽きない。
すべてのストーリーとエピソードが始めから計算されていたことがわかります。
最後まで読み終えて第一話に戻ると、驚きます。

長く楽しませていただいた諫山先生と、編集の方に感謝!!

 

「進撃の巨人 1~34」諫山創 講談社週刊少年マガジンコミックス

満足度★★★★★★(←?)