映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

Away

2021年06月17日 | 映画(あ行)

RPG的美しき冒険世界

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ラトビアの新進クリエーター(当時25歳)ギンツ・ジルバロディスが、
たった一人で3年半をかけて完成したというアニメです。

飛行機事故でとある島に不時着した少年が、小鳥と共に町を目指してオートバイを駆るロードムービー。
セリフなし、当然字幕もナシ。
けれど主人公の絶望や不安、孤独、そして希望がストレートに私たちの胸に飛び込んできます。

パラシュートで降り立ち、気を失った主人公が始めに見るのが正体不明の黒い巨大な影。
おおーっと。進撃の巨人か?
と一瞬思うのですが、それとは少し違う。
が、見るからに何かまがまがしい、恐怖の根源のようなもの。
その正体は最後まで明かされないのですが。
主人公は絶えずその巨大な影に追われることになります。

そんな彼が、かわいらしい黄色い小鳥と道連れになったり、
バイクやその他の道具を手に入れたり、
そう、RPGのゲームをしている感覚に近いのです。
だから、なんだかワクワク、ドキドキ感もタップリ。

輪郭線のない絵も個性的でステキです。
この手法は「ロング・ウェイ・ノース」などにもあって、最近時々見かけますね。
そして何よりその映像が美しい!!

中でも「鏡の湖」の映像がもう、うっとりしてしまいます。
不思議さと広大さ・・・。
これは劇場の大画面で見たかった・・・。

それと、深い谷にかかる橋のシーン。
3Dアニメじゃないのに、その高度感がハンパなくて、
高所恐怖症気味の私はすくみ上がりそうでした。

小鳥さんも、無表情だしセリフもないのに、なんてかわいらしいこと!

でも、小鳥は主人公に付いてきたのに、途中で白い鳥と友だちになって行ってしまう。
そして本当に一人になってしまった主人公の落胆とかさみしさ・・・。
セリフもないのにそういう感情がぐいぐい伝わりますね。
人の感情というのは本当に、それぞれの国や民族性、文化にかかわらず
根源的には同一のものだということがよくわかります。

魅了されました!

 

シネマ映画.comにて

「Away」

2019年/ラトビア/81分

監督・制作・編集・音楽:ギンツ・ジルバロディス

 

冒険度★★★★☆

満足度★★★★★